はじめに
古来より絹は東洋の不思議な糸として珍重され、2500年前より陸路を通って、中国からトルコ、ローマへと輸出されてきました。このルートをシルクロードと呼びます。このころでは絹と同じ重さの金と取り引きされたこともあったようです。
ご存知のように、絹(生糸)は蚕(かいこ)という蛾の一種の幼虫より得ることが出来ます。蚕は普通卵から繭(まゆ)になるまで4回の脱皮を行い(これを眠と呼びます。)繭の中でさなぎとなり、最後に繭を食い破って成虫の蚕蛾となります。
モスラという映画をご覧になった方も多いと思いますけど、これは蚕をモデルにしたものと考えています。卵から芋虫となり、糸を吐き、蛹(さなぎ)からあの華麗なモスラへと成長するところは、蚕の一生そのままと言えます。
シルクが大好き
戦後しばらくまでは、日本は世界でも有数の養蚕国でした。和服に代表されるように絹の消費量が多く、また人件費も安かったため、労働集約的家内工業であった養蚕業に携わる人が多かったわけです。ただし工業化が進み、人件費も高騰してくると、安い中国の絹に押され、生産量は減少の一途をたどってきました。一方、絹の需要は近年の個性化、高級化指向を背景に増大し、現在日本は世界最大の絹輸入国となっています。
シルクと健康
絹は吸湿性、保温性にすぐれ、夏涼しく、冬暖かい特徴があります。絹のストッキングを愛用している女性の話によれば、夏は絹以外のストッキングを穿く気がしないとのこと。そのへんの話は京都府織物指導所による 未来から来た絹「ハイパーシルク」 に詳しく説明があります。また絹の下着を着用することで、内臓の調子がよくなったとの報告もあります。
新しい養蚕法
蚕は従来桑の葉が採れる5月から10月の間しか飼育出来ませんでしたが、人工飼料を用い、クリーンルームの中で飼育することで、一年中生糸が生産できるようになりました。ただし、桑の葉と違い、人工飼料は乾燥しやすいため、温度、湿度を一定に保った環境をつくってやる必要があります。現在国内の数箇所で実験中ですが、そういった環境を作り上げる技術として、真気技術とその応用に説明があります。
また、現在島根県日原町で、誘導三眠蚕という、ホルモン剤を飼料に混入することで、脱皮回数を一回少なくし、細い生糸を生産する技術が研究されています。