誘導三眠蚕
(1997/04/26作成)


 通常の蚕は4回の脱皮(4眠蚕)を経て、糸を吐き繭を作るが、飼料に特殊なホルモン剤を添加することで3回の脱皮(3眠蚕)で繭を作らせることができる。こうして得られた糸は、しなやかで細い特徴をもつ。
 この飼育法は、現在島根県日原町の蚕無菌生産研究センターで試験的に行われている。筆者は実際現地に赴いて、同センターの板垣主任研究員にお話を伺ってきた。こうして作られた糸は、現在生産が注文に追いつかず、結果として通常の糸の3倍の価格で取り引きされているという。糸が細いという特徴から、繊度むらがなく、薄ものに向いた高品質の生糸ができる。反物に占める絹のコストは、反物全体の価格に対してさほど大きいものではなく、より高品質の反物が得られるならば、糸のコストは問題にならないともいう。
 実際に繭を見ると、通常の4眠蚕の繭より一回り小さく、黄色い色をしている。色については、糸に引く課程で表面のタンパク質が除去され白糸が得られる。
 この技術は、現在この日原町蚕無菌生産研究センターのみで行われている新しい技術で、生産量もまだ実験段階の域を出ず、サンプル出荷の価格で将来性を判断することは難しいが、低迷を続ける日本の絹生産に、一筋の光明を見いだすことのできる技術ではないかと筆者は考えている。


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