へたうま見聞録:「W杯徒然(5):青い閃光ニッポン」      
      その6:「W杯徒然(5):青い閃光ニッポン」
     


 「ニッポン ニッポン」の声が渦巻く。初戦の対ベルギー戦。いよいよ地元開催のW杯のピッチに立った日本。アメリカ大会アジア予選のドーハの悲劇、初出場のフランス大会は、中山がW杯初ゴールを決めたものの、3戦全敗で一次リーグを敗退した。
 それが、鈴木が、稲本が、シュートを決める。もしかすると勝てるかもと思ったら、稲本幻のシュートの後に、同点にされてしまった。それでも日本にとって、始めての「勝ち点1」だった。

 対ロシア戦も、ベルギー戦で自信をつけた選手たちの活躍があった。稲本のゴールが決まり1点を先行する。途中から中山が投入されたとき、「これは勝つな」と確信した。日本は、W杯で始めての勝利を見事におさめた。

 対チュニジア戦は、引き分けても決勝トーナメントに進出できる。それが開催国として最低のノルマとは知らなかったが。
 お昼の試合で、当然仕事で見られないと思っていた。ところが当日に、仕事の都合のつく人は会社でTV観戦してもいい、というアナウンスがあった。残念ながら私は見られなかったが、見られた人は何てうらやましい。
 日本戦の時、あちこちの喫茶店・居酒屋・電気店・職場・携帯小型テレビ・スポーツカフェ・パブリックビューと、テレビのまわりに集まって大勢の人が観戦した。特に昼間の日本戦は、昔の街頭テレビのような光景があった。何が起こるか分からない、そして二度とかえってこない瞬間を、みんなで共有していたのだ。
 試合は、相手選手に鼻を蹴られながらの、中田の捨て身の一撃が印象的。
 日本は一次リーグH組を1位で見事に通過し、トルコと対戦することになる。H組2位のベルギーが対戦するブラジルよりやりやすい、との予想だった。

 決勝トーナメント対トルコ戦。試合会場の宮城は雨にぬれ、どんよりとした雨空の下での試合となった。今回も会社でのTV観戦はあったが、チュニジア戦のような盛り上がりを感じることはなかった。当日も仕事でTV観戦できず、試合速報で結果を知った。0−1での敗北。確かに悔しいけれど、なぜか実感がない。「ああ、負けたんだな」と、どこかの出来事の様に感じてしまった。その日の夜にTV観戦した韓国=イタリア戦での、イタリア敗北の方が余程ショックだった。

 理由ははっきりしている。生中継で見ていないからだ。W杯の試合は、一瞬でも目を離すと展開についていけないことがよくあった。リプレイすら邪魔な時がある。それだけスリリングなのに、後で編集された番組になると、それがなくなってしまう。「体験」が「情報」になるのだ。あれから対トルコ戦のニュースをTVで見ても、新聞や雑誌を読んでも、未だに実感があまり沸かないのである。

 日本選手はよくやったと思う。いい目を持った選手たちがたくさんいた。中田・小野・バットマン宮本・モヒカン戸田・楢崎たち。もし指揮官が戦術を迷わなかったら、違った結果になったかも知れない。不完全燃焼のままピッチを去ったのは残念だった。死力を尽くして散って欲しかった。

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 (2002/7/21)

(C) HETAUMA HONPO 2002


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