へたうま見聞録:「W杯徒然(3):やっぱりベッカム様」      
      その6:「W杯徒然(3):やっぱりベッカム様」
     


 今回のW杯で最もうれしい出来事のひとつは、イングランドチームが淡路島にずっとキャンプを張ったことではないだろうか。岡山の人間にとって何となく身近に感じる位置に、あのベッカム様がいるわけである。しかも、宿泊していたウエスティンホテルに、私は泊まったことがある。安藤忠雄の設計で、広い敷地に滝や池があちこちに配置され、いくつかある建物内の通路は分かりにくく、まるで迷路のようだった。ホテルから山側に歩いていくと海が一望でき、花や庭園も楽しめる。とてもいい環境だったのではないだろうか。

 イングランドは日本国中の歓迎を受けた。新聞やテレビにベッカムの情報が流れない日はなかった。やはり、ベッカムはかっこいい。しなやかさの中に強さを持つ伊達男。ソフトモヒカンは大流行。彼を通してW杯にはまった人は多い。

 試合では、一次リーグの対アルゼンチン戦が印象的。オーウェンへのタックルから得たPK。4年間背負ってきた重い荷物をときはなす瞬間。ボールに人生の全てを集中させた後の、爆発的な喜び。ベッカム復活の時。その後のアルゼンチンの猛攻も、11人全員で死守した。
 雨の中の決勝トーナメント対デンマーク戦も忘れ難い。ベッカムは降る雨に、地元マンチェスターを思い出したそうだ。あの試合はイングランドにとって至福の時だったように思う。観客席で、勝利を確信したイングランドサポーターが日本の子供を肩車して行進する姿は、信じられない光景だった。試合終了後、スパイクを脱ぐベッカムの姿にかすかな不安を覚えた。ベッカムは、4月の左足甲骨折から驚異的な回復力でW杯のピッチに立った。笑顔を見せて観客にこたえているが、わずかに足をひきずっている。痛いんだ。

 準々決勝対ブラジル戦は残念な結果になった。試合終了後のベッカムとロベルト・カルロスとのユニフォーム交換シーン。ベッカムの背中に十字架にかけられたキリストのタトウー。長袖シャツの下にもタトウーが。それでずっと長袖シャツ着てたんだ。納得。

 イングランド敗退の夜、私は京都行きの新幹線に乗っていた。姫路を越えたあたりで、闇夜に明石大橋のライトが浮かんでいる。「あそこを渡れば、イングランドチームのキャンプ地なんだ」。ああ、彼らはもういなくなるというのに。

W杯徒然(2)へ | W杯徒然(4)へ

 (2002/7/21)

(C) HETAUMA HONPO 2002


|「見聞録」バックナンバー|
|HOME|What's New|Mail to Me|Help Map|