不発弾処理時の弾着地不法侵入事件
1960年代後半(55年以上前の)

 106mm無反動砲の不発弾処理時に、もう少しで地域住民の命を奪ったのかも。
 砲弾の真鍮を拾いお金に換える住民が、演習場の近くに待機して弾着地に不法に侵入した。
 実弾射撃で発生した不発弾に爆薬を抱かせて処理(砲弾を爆発させる)するため、私は警戒監視を命じられたが、その目の前で事件が発生した。

 ある演習場において106mm無反動砲の実弾射撃が実施された。
 12.7mmスポットライフル(標定銃)の弾着を見て、射距離と方向を修正し、実弾の射撃となる。
 数十発の砲弾が弾着地の標的を打ち砕いた。
 標的は距離1,000mから700mの間に数的が設置し、的はベニヤ板2枚(192cm×192cm)である。
 朝から始まり昼過ぎに終了した。砲弾は弾着した時の状況等により不発弾となる。
 実弾射撃した部隊は、不発弾が発生した場合は処分(爆発)しなければならない。
 標的が決まると観測係は、砲隊鏡(射弾の観測等に使用する潜望鏡の双眼鏡、倍率は12倍(?))で弾着(着弾)観測する。
 観測係は、「4的命中右下・・・」「不発弾4的右上5ミル」と呼称する。
 記録係は復唱しながら記録紙に記入する。
 そうしながら、実弾射撃が終了し、不発弾が出ているので、急遽処理班が招集された。
 佐々田2曹・・・そして私(1等陸士)は操縦手で監視員、任務が付与され、弾着地に向かいジープに飛び乗った。
 本部から無線が流れる。
「警戒員・・・こちら本部・・・射撃終了・・・射撃終了」
「1番終了、了解」
「2番了解」   ・・・と各警戒員から報告が入る。
 そして本部から
「警戒員はその体制で警戒。不発弾を処理する」
 私は、警戒員兼操縦手。警戒員としての装備は何もない。無線機も双眼鏡も・・・。
 弾着地の指定されたところにジープを止めると、処理班は弾着地に入った。
 私と弾着地の柵の間は、凹地で小川が流れている。そして距離は150mから200m。
 処理班が作業しながら右から左手に、東から西に向かって作業している。
 不発弾のところに表示し爆薬(TNT)を抱かせたり、穴の中に導火線と信管そして爆薬をセットしながら左手に移動する。
 砲隊鏡の観測係から無線が飛んでいるので、処理班は位置が特定できているので順調に作業し、最後の不発弾にたどり着いた。
 そして、一番左手の不発弾ところから導火線に点火しながら、右手に移動し次々点火している時に、人影の動きを見た。
「危ない、人がいる・・・爆発するぞ・・・」
 私は、大声で叫んだが、侵入者にも処理班にも声が届いていない。
 侵入者は、処理班を追いかけるように進んでいく。
 侵入者は数名が我先にと砲弾についた真鍮や落ちている物を拾うため走り回っている。
 彼らは真鍮や特殊な金属を拾いお金に換えるため必死である。
 私が叫んでも150~200m離れているので、聞こえやしない、処理班も不発弾を処理するため、必死で導火線に点火している。
 侵入者が最も西側の不発弾を通過し、東に移動しているときに最も西で爆発音がした。
 侵入者が逃げるように東に移動すると、2回目の爆発が彼らの後ろで起こった。
 そして逃げる・・・その後ろで3回目の爆発。
 侵入者は必死で逃げる。4回目の・・・5回目・・・次々と爆発する。
 私は、必死でわめく・・・。
 処理班は導火線の長さを、歩いて逃げるだけの秒時をもとに決めている。
 安全な時間を計算しているが、侵入者のことは頭に入っていない。
 すべての爆発が終わったとき、侵入者も無事に逃げ延びていた。
 処理班が私のいるジープの所に帰ってきて、私の話を聞いて驚いている。
 本部の位置に帰ったとき、砲隊鏡を見ていた係から報告を受けていたのか、隊長が駆けつけてきた。
 そして全員の無事を確認してほっとしていた。
 事故の原因究明が行われた。
 警戒員のすぐそばに、侵入者が射撃の終了を待っていた。
 侵入者は、「射撃終了」無線を聞いて、勝手に警戒線を突破し演習場に入った。
 警戒員もそれを阻止せず、報告をしなかった。本部も
「不発弾を処理する、続いて警戒監視せよ」  
 と、無線を流さなかったのか。
 射撃終了の無線の通話が問題であった。
「射撃終了」を
「不発弾を処理する。不発弾を処理する。」
 続いて
「演習場内に入らせるな・・・警戒せよ」
 また、警戒員も
「侵入者が、○○から警戒線を突破して入った・・・」
 の通報をしていない。
 また、不発弾処理班に無線機を携行させなかった。
 また、1士の私も経験不足で、無線機の携行を進言しなかった。
 突然の命令で理解できず、警笛も所持していなかったし、そのような指示もなかった。
 いろいろな問題点があったが、それらに対する危機意識が欠落していた。
 1士は階級は下から2番目だが、弾薬過程を終了していたが・・・。
 色々と反省点もあったが・・・ここではこれ位にしておきます。

 数十年前の事が思い出される。

 現場百回とか・・・ 各人が家を出るときのように
   火は消したか…  電気は消したか・・・  鍵は・・・ 免許証は・・・ 財布は・・・
   時計・・・       携帯電話・・・  
 確認が必要だ・・・・。