テント生活の出来事

 風がテントをーーー

 20歳になった時だった。
 一人で、4月の上旬、犬挟峠から蒜山三山を縦走し、鏡ヶ成から烏ヶ山そして船上山に縦走する計画で入山した。
 倉吉市からバスで関金そして山口の村まで入った。そこから一人で除雪された雪の道を歩いた。峠には廃車のバスが峠の茶屋のように置かれていた。
 1泊目は下蒜山山頂の峠よりのキャラボクの地点だった。2泊目は上蒜山を下り 蛇ヶ乢にキャンプした。蒜山三山から皆ヶ山にかけては、天候も安定し、雪も比較的安定し軽快に歩けた。
 3日目は鏡ヶ成のキャンプ場の予定であったが、管理棟の一部屋が未施錠で潜りことが出来た。
 鏡ヶ成国民休暇村で食料の一部が購入できることは確認していた。
 若干の買出しにと出かけた。ホンの少しの酒と、蕎麦、漬物、お菓子類を購入した。管理棟に帰ると、恐々とした夜を迎えた。
 何時誰かが覗きに来るのか、叩き出されるのか不安な夜となった。
 翌朝、キャンプ場から新小屋峠に向かって進む。昨日までの上天気は、本日は期待できなかった。
 視界は100m程霧が出始め、風も少しあった。峠から、登山道の標識を探しながら樹林帯の中を進んでいく。登山靴が潜り始め、ワカンを着けた。
 頂上の東側が大きく崩れた斜面を右に見ながら進むと、南峰の頂上直下の岩場に出た。
 残されたステ縄を利用して南峰に立った。北峰からの下りは今日随一の難所である。一枚岩を下るのが怖かった。持参した縄(ザイルではない)にザックを結び着け、片方を道標に結び降ろしていった。
 一枚岩下のバンドは雪の壁になっていて判らなく適当に左に進み稜線の上に出た。稜線上は風が吹き荒れていた。
 しばらく歩いたブナ林の中で寝床を作ることにした。ブナの根元を踏み固め、3m四方ほど広げると、ザックからテントを取り出して、展張しようとした瞬間風が吹きテントが舞い上がり、東側の谷に飛んでいった。
 一度木に引っかかり取りに行こうとした時また風が吹き空中に飛んでいった。
 その夜は風の吹かない東側の斜面を少し下り、ブナの木の根元に簡単な雪洞を掘って寝袋とキルテングの上着、化繊の寝袋で一夜を明かした。
 それ以来、テントを張るときは広げる前に張り綱を結んで置くようにした。これが基本だろうが。