大山中の沢飲酒夜間登攀(1971.12.5〜6)

 元谷常連が毎年12月第一土曜日の夜元谷小屋に集まり、ザイル祭を開催している。
 71年の今年は所属の山岳会が幹事として、リーダD氏を中心に色々と準備した。
 その中には、果実酒が10数本あるはずだ。だが、出てきた果実酒は2本程。いつのまにか量が激減していた。蒸発したのかな。
 梅雨の時期に、土日をつぶして集めた大量の梅である。
 しかし、その果実藏が間違っていた。黒の下宿である。
 今想像するのに、黒が出来上がった頃、一人で夜になると押入から出しては部屋を暗くして、味を確かめていたと思う。俺たちが苦労して集め、出来た梅酒は黒の胃袋で熟成された。
 俺たちは鵜飼いの鵜みたいなモノである。
 だから、暗黒街のボスである、現代版アル・カポネは、今になって恐ろしくなり、俺に「酒を飲みに来い、遊びに来い。」と融和策を出してきたのだな。
 話がそれた。元に戻そう。
 出雲で買い出しをして、新鮮な肉類は米子で購入した。黒氏は、大事な酒が無いにも係わらず準備が完了した、と、叫んでいる。
 大山寺に1530到着した。喫茶「キャラボク」で憧れのマドンナにお会いした途端に、黒氏から、大事なお酒の買い出しを命じられ、寒い外に追い出されてしまった。
 大山寺から重くなったザックに苦しめられながら、元谷に着いてみると、元谷には所々新雪が残っている位で、やっと付近で水が汲める程度であった。
 今夜の宴に出雲が準備したのは、鶏の水炊きである。
 津山山の会、MCC、KCC、元谷同人、峨媚同人と普段元谷に集う仲間が三々五々集まってきた。総勢40名ほどになった。
 1730 D氏の第一声にて乾杯し大いに楽しむ。
 夜遅くになって、広島山の会の高見氏、林氏、畠山氏等が小屋に上がってきたが、申し訳ないことに小屋はすでに満員状態になっていて大変申し訳ないことをしてしまった。
 高見氏らは、翌日屏風岩の登攀であり小屋の外にビバークしますといって山下ケルンの方向に消えていった。
 三鉾の間で津山の連中と飲んでいると、土間から歓声が上がった。1930突然D氏からの突然の発表である。
 小氏、市嬢の婚約発表である。長かった春がやっと来た。(72.2.11結婚である。)
 今夜の酒は全員美味しいだろう。全員のアイドル・岩壁の少女ハイジ(私にとっては、あこがれのお姉さんであり、滝谷の登攀では肩まで貸してあげた人である。「山ショルダー」で、私の肩に泥靴で踏ん張って登って行かれた。)の婚約である。
三鉾の間で津山の連中と再び飲んでいると、夜間登攀の話が持ち上がってきた。中の沢を登ろうという話である。静かに準備すると見つからないよう窓から数人づつ抜け出して、数時間後に稜線からカンテラで合図をしようという計画である。
 7名で外に出てみると月の明かりで歩きやすく、登って行くが雪も殆どなかった。中の沢の下部に付いて、烏帽子岩の方に60m程登った地点から取り付く。積雪は壁の下だけあって膝まであり、沢のスラブ状の所は氷壁になっている。
 ザイルは佐・加嬢・須氏と角・吉氏と太・小生とする。佐が全員のトップを切って2130取り付く。右上にザイルを伸ばし、加を待つ。角のグループが少し下側からから出発する。
 万を侍して小生達のグループとなり太が登り始める。1Pが終わって私がトップにたつと2P目から私と太が全員を引っ張って登る事になる。
 2Pは右上に取る。不安がなくスムースに登っていく、ザイルが一杯となり停止する。トップが終了すると今晩の登攀に備え乾電池の消耗を考えヘッドライトを消す。3Pは太がトラバースして沢の中心にでる。
 いつのまにか全員ヘッドライトの消耗を考え、登っている者だけが付けている。このライトのスイッチのON・OFが問題になっているとはこの時点では気づかなかった。
 4Pから真っ直ぐに登り黒々としたF2に向かう。小さなリッジを越えるとピッチを切る。太が4Pを登り始めたが、0130リーダーの佐古から下山の指示がくる。一番上の私が下り始め、ライトを付ける。
 取り付きに全員下ってきたのが0230であった。全員意気高く足どりも軽く下っていくと、小屋のほうから登ってくる一段があった。
 MCCの槙氏を先頭に登ってきた一団と0250出合う。
 他の人から聞くと、壁に取り付いて連中のライトの数と人数が合わず、しかも途中から下っている。問題が発生したと勘違いして登ってきたという。ここで槙氏の小言を食らう。
 0330元谷小屋に帰って夜間登攀が終わったが登った者達は何が問題なんだと息が荒かった。若いときの一時の熱意として暖かく指導し、そしてそのファイト見守っていって欲しかった。そのためか大山の仲間の大いなる発憤がない。井戸の中の蛙でしかない。
後 記
 50才を越え今になって見ると槙氏の考えが正しい。若いときの一時の熱病だったのであろう。
無事でよかった。