「疾走するアレグロ」と言ってまず思い浮かべるのは、モーツァルトの交響曲第25番ト短調。映画「アマデウス」に使われて一躍有名になった曲だ。第一楽章のたたみかけるような躍動感がなんとも素晴らしい。音楽を二つの種類に分類するとすれば、「モーツァルトとそれ以外」と断言しても言い過ぎでは無いほど、その音楽は傑出している。
それより数十年前、ベネツィアの作曲家アルビノーニは、《5声の協奏曲集 作品9》として12曲の協奏曲を残している。そのうち8曲がオーボエのための曲で、中でも2番の協奏曲が有名である。『LPジャケットギャラリー』にも書いたのだが、もう一曲8番の協奏曲も好んで聴く。この曲は名手ハインツ・ホリガーがイ・ムジチ合奏団と競演した新旧の録音が決定盤とも言える素晴らしい出来映えなのだが、最近聴いているのが一風変わった一枚。デンマークの女流リコーダー奏者ミカラ・ペトリがイ・ソリスティ・ベネティと競演した、アルビノーニの協奏曲集作品7と9の中から抜粋したオーボエのための協奏曲集だ。聞き慣れたオーボエではなくリコーダーで聴く音色がなかなか新鮮でよい。曲によって3種類のリコーダーを使い分けているのも面白い。CDの最初から聴き進んで行くと、ある楽章で耳が釘付けになった。それは作品9-8の第3楽章。早めのテンポで駆け抜けて行くアレグロでは、まるでモーツァルトの25番を聴いているような胸の高鳴りを覚える。そういえば、この二つの曲、両方ともト短調だ。
実はこのCD、父の4周忌に父のライブラリを漁っていて見つけたもの。う〜む、我が父ながらなかなかいいセンスをしてるじゃないか。