第3話〜 奇妙な光景
(2003/09/11)

 昨日上京した折り、仕事が早めに終わったので、へんりーの仕事場に立寄ったときのこと。
「今日エスカレータに乗ったら、急に前の人がいなくなってしまったのでびっくりしたよ」と僕。
「そんなことしてたら、どつかれますよ!」とへんりー。
どつくなんて関西弁をへんりーが使うはずはないのだが、僕の頭の中ではそう翻訳されてしまった(笑)

 どうも東京ではエスカレータの右側は、歩いて上る人のために空けておくのが作法らしい。なんか変だなと思いながら、空港へ向かう道筋観察してみると、怒ったような顔をした連中がエスカレータの右側を駆け抜けて行く。隣接する広々とした階段は空いてるのに。「あんな狭いところを無理して歩くことは無いのになぁ」 エスカレータを歩いて上ったって、短縮できるのはわずか数秒。ほんとに急いでいるのなら階段を駆け上がったほうが速い。なにより、そんな馬鹿な行為を容認するために、歩かない人はエスカレータに乗るために待たなければならない。そんな理不尽なことって有るんだろうか?

 僕の住む広島でも、エスカレータを歩く人間がいないわけではない。かと言って、前に立つ人を押しのけてまで進むような不埒な行為は見たことが無い。「そがぁいに急ぐんなら階段を上がれ!この馬鹿たれが!!!」と一喝されるのがオチだからだ。

 そんなことを考えながら、この奇妙な光景を観察してみると、その所作はいかにもぶざまに見える。立ち居振舞いの優雅さなど、どこかに置き忘れてるみたいだ。わずか数秒の時間を惜しんで、なにか大事なものを無くしてはいないだろうか。


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