学生時代に、クラブの後輩がなんとも奇妙なジャケットのLPを持ってやってきた。「春の祭典買ったんですよ。聴かせてください。」
そうだった、「こんな音楽が有るんだけど聴いてみるかい?」と彼に聴かせたのが、ブーレーズ指揮クリーブランド管の春の祭典。最初はびっくりしたような顔で聴いてたけど、しばらくして又聴きにやってきた。その内に自分でも買ってみたいと思ったのであろう。バーンスタインの炸裂する演奏を聴いて至極満足そうであった。
当時の学生で、まともなオーディオセットを持っているのはごく少数であった。だからレコードを買ってきては、みんな僕の部屋に置いて帰る。聴きたくなったらコーヒーを目当てにやってくるのだ。そうやって沢山のレコードが僕の部屋に下宿していた。
バーンスタイン指揮のこの演奏、ティルソン・トーマス盤と並んで僕のお気に入りだった。ただイスラエル・フィルとの新盤を買ってしまったこともあり、このレコードとは長い間ご無沙汰していた。しかし昨年どうしても聴きたくなり、廉価盤で再発されていたCDを購入した。1958年録音の火の鳥組曲とカップリングされた徳用盤だ。聴いてみるとどうにもしっくりこない。ジャケットが、なんの変哲もない、廉価盤シリーズにありがちなデザインだったからだ。この演奏は、30年前に聴いたLPのジャケットと対になって記憶されてるみたいだ。だからオリジナルジャケットで再発されたら買い直すつもりでいた。
CDの簡便さに慣れてしまい、もうLPを新たに購入することは無いと思っていた。以前通っていた中古レコード店も、LPの取り扱いを止めてしまったようだ。ところが止めたのではなく中古LP専門店を開いていたのだった。どんなものかと覗いてみたところ、懐かしいこのレコードを見つけた。盤の状態も良く、ジャケットはラップされたままで保存状態は抜群。直ちに購入した。なんと30年以上も経っての再会であった。
ジャケットは、アンリ・ルソーの夢を彷彿とさせる図柄に、ストラヴィンスキーがにょっきり顔を出した奇抜なデザイン。やっぱりこのジャケットじゃないと聴いた気がしない。
(2007.01.24)