夢
アンリ・ルソー
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夢 【The Dream 】(1910)
204.5×299cm; ニューヨーク近代美術館
アンリ・ルソー【Henri Rousseau】(1844-1910)
私がまだ学生だった20数年前のこと、レコード店で不思議なジャケットのレコードを見つけました。ドビュッシーの管弦楽曲を集めた物ですが、そのデザインは厚ぼったい葉っぱの生い茂る密林の池の畔で、笛を吹き蛇をあやつる謎の女性。
ジャケットデザインに惹かれ、またドビュッシーは大好きな作曲家であったため、早速買って帰りました。
ジャケットの裏に小さく
<Henri Rousseau "La charmeuse de Serpent" Paris Louvre>
ふむふむ、ルーブル美術館に所蔵されているルソーさんの絵なんだ。題名はよく解らないけど・・・ドビュッシーと同じ時代の人なんだろうなぁ。
まだ美術にはさほどの興味のない頃のお話です。
今回取り上げるのは、アンリ・ルソーの最後の作品となった「夢」です。
最初に出会った作品と同様、密林の中で長椅子に気怠げに横たわる女性。蛇もいるぞ。象もライオンもいるぞ。空には月とも太陽とも判別しにくい白い球体。ルソーは伝統的な遠近法についてはほとんど用いていません。そのかわり彼は描写対象を画面上に交差するように配し、カンヴァス上に平面を重ねていくことで空間を表現しました。
また彼は多くの花を描いた作品を残しています。その独特の色彩感はこの絵に描かれた花にもよくあらわれています。この絵にはアポリネールがつけた詩が副題として添えられました。
安らかにまどろむヤドヴィガは甘美な夢に浸っている
彼女は心優しい蛇使いが奏でる葦笛を聴いているのだ
銀色の月の光は流れや木々の葉の上できらめき
残忍な蛇たちも妙なる蠱惑的な調べに耳を傾ける何故密林の中に長椅子に横たわった裸の女がいるのだ? などと詮索してはいけません。ルソーは
「長椅子に横たわって眠っている女性は、この森に運ばれ、魔法使いの音楽を聴いている夢を見ているのです。そのことが絵に長椅子が描かれている理由なのです」
と答えたそうです。
WEB美術館館長
Summy