古典回顧調の端正で上品な画面構成、穏やかな色調。ふうわりとした優しい心地好さ。衣装などの表現には、作者のイタリアへの深い思慕を感じさせます。
裕福な家庭に生まれ、強い反発を受ける事も無く画家としての道を歩む事を許された彼・・・パリ万国博の名声にも奢ることなく、ドーミエやミレーなどの貧しい画家を援助したというエピソードにも端的に表れているような気が致しますが・・・カミーユ・コローの優しさは、善い意味で「育ちの良さ」ではないでしょうか。
人を貶めるでも、嫉妬するでもなく、ライバル視されている人間の絵でさえもにっこりと微笑んで「ああきれいだ」と心から褒め称える鷹揚さ。これが彼の絵の根底に流れる透明感の源であるように思われるのです。