重く垂れ込めた空、逆巻く波の穂は白く飛沫をたててくだけ、轟々たる波音さえ聴こえてくるような迫力ある画面。
クールベは絵画という二次元の「静」の規枠の中に、荒々しい「動」を見事に表現しました。
画家の目指したのは装飾され、理想化されたものではなく、ありのままの姿を描くことでした。時代は19世紀後半、旧い流れと新しい流れが互いにその速度をゆるめる事無く混在した時代、帝国主義と民主主義、共和制、社会主義・・・ぶつかり合い、折り重なってゆく主義主張の中で、彼が見つめようとした、写しとろうとした真実とはいったい何だったのでしょうか。伝わってくるのは、それが何であれ、彼は自分自身の選んだものに、ゆるぎない自信を持っていたという気がいたします。