車輪の轟音、警笛の鋭い響き、吐き出す煙の色、分散するヘッドライトの光。――重々しい鋼鉄の塊が、風雨をついて走り来る、漲る力。
「良い絵とはクレモーナ(名器ストラディバリを生んだ北イタリアの地名)のヴァイオリンのように茶色い」というサー・ジョージ・ボーモンドの言葉に表される通り、産業革命による新しい時代が、多くの芸術家たちと作品にとって相容れぬものであった中、ターナーは例外的とも言える姿勢で、新時代の機械の美しさを称えました。
それは後世に時代の移ろいを残す行為というよりは寧ろ……対象の再現ではなく、その物質性をあらわしたもの……暴風雨や、雪崩、吹雪などの大いなるエネルギーに対する畏敬の念と同種の、強く心を捉えたものへの賛美であるように思われます。
線路に耳をつけて音を聞き、煙の匂いと風を受けて、全身で『力』を感じ取る子供にも似た、鋭敏でまっさらな感覚。鮮やかな心象風景。彼の作品を、何を描いたのか分からないと訝る知人に対して、ターナーは言います。
「それがどうしました?肝心なことはただ一つ。印象を呼び起こすことですよ」この作品を見ていて―― ふと、映画「スタンド・バイ・ミー」の一シーンを思い出しました。