1910年前後より1930年代半ばまで、パリに集う外国人の芸術家たちは、特定のグループに属すことをせず、それぞれ個性的な世界を形成しエコール・ド・パリと呼ばれました。モディリアーニはその中の一人でした。
晩年の“古典的な”時代に描かれたとされているこの絵は、南フランスの片田舎、カーニュ地方出身の少女マリー・フェレの肖像でございます。
アフリカ美術やイタリアの巨匠たち、またフォービズム、キュビズムおよびセザンヌ等の作品から着想を得た彼は、独特の様式化された表現方法で、人体を“形”としてとらえながらも、その内面まで描き出しています。組まれた手、重い衣装、瞳のない目…楕円と線で表された少女の姿は、一種の哀愁を帯びて、その内気さ、運命に対して儚げなもろさを感じさせるような気がいたします。
「神に愛されしもの−アマデオ」の名を持つ彼の目は、モデルと相対したときに、鏡が映し出すように、心が抱えているものを垣間見ることが出来たのではないかという、不思議な気持ちにとらわれました。