スーラを彷彿とさせるような、細かい描写。
陽光があふれるアルプス高原の、平和で豊かな真昼の風景です。
爽やかで、明るい画面は、画家の目を通してみた、美しい自然の魅力を、余すことなく私たちに伝えています。
ジョバンニ・セガンティーニの絵画における、透明感と、ひたむきなまでの丁寧な描写は、やはり「イタリア」という国への切なる思いあってこそという気が致します。
北アルプスにほど近い、トレンティノ地方のアルコに生まれた彼は、当時この地が、オーストリアに帰属するものであった(後にイタリアに返還されましたが)為、イタリアを思い続けながらも、生涯「イタリア人」としての市民権を得ることが出来ないという、不遇を受けました。しかし、その思慕にも似た感情こそが、彼の視線をより澄んだ、優しいものにしていったと思うのは、少しうがちすぎた見方であるのでしょうか。
時間が、その場所だけゆっくりと流れていく、そんなことを感じさせる、穏やかな風景です。