ピエタ
ミケランジェロ

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この写真はともこさんの撮影によるものです。

ピエタ(1499)
ミケランジェロ・ブオナルローティ
【MICHELANGELO di Lodovico Buonarroti Simoni 】(1475-1564)
バチカン サン・ピエトロ寺院

「ピエタ」とはイタリア語で「悲哀」を表す言葉です。
この「サンピエトロのピエタ」は、彼が20代で手掛けた作品(その完成度の高さ故、若き彼が彫ったものではあるまいという世間の噂話に対し、後年マリアのたすきに生涯唯一の自分のサインを彫り込んだエピソードが伝わっております)で「ミケランジェロが想像しえたもっとも美しい女性ともっとも端正な男性とを彫刻した」と評されています。

当時の枢機卿からも批判されたほどに、そのマリアの姿は余りに若い。しかしミケランジェロはこう言っています。「罪ある人間は歳をとるが、無原罪の聖母は常人のようには歳をとらないのだ」と。
宗教芸術という範疇において、その芸術的表現は「目を楽しませるもの」だけではなく「意味を伝えるもの」となりますが、卓越した彼の力量は、例えば全く異なった文化を持つ人々の目にさえ、静謐な哀しみ、彼女の慈愛と処女性を、余すことなく伝えています。
「完璧」という言葉は、こういった作品にこそ与えられるものなのだと感じるのですが、しかし、ミケランジェロは、生涯に4つのピエタ像を手がけています。

サンピエトロのピエタ 1498年(23歳)着手、1500年(25歳)完成
ドゥオーモのピエタ 1550年(75歳)着手、未完
パレストリーナのピエタ 1555年(80歳)着手、未完
ロンダニーニのピエタ 1559年(84歳)着手、未完
紛れもなく「サンピエトロのピエタ」は時代の一頂点をなすような作品であり、無論彼もそれは熟知のことであったのでしょう。

「ロンダニーニのピエタ」は死の直前まで彫り続けたものと聞きますが、未完であること本当に惜しい。
偉大な彫刻家は、一体何を、更なる何事を伝えようと鑿を揮ったのか、それを知りたい、そんな気がいたします。

WEB美術館主任学芸員
へんりー

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