ピエロ
ルオー

「ピエロ」Pierrot(1936)
ジョルジュ・ルオー【Georges Rouault】(1871-1958)

美しい表情というのがあります。
若さ故の輝くような表情。赤ん坊の幼気な愛らしさ。勿論生まれ持った麗質というのもございますでしょう。

そして、やはりこの上なく美しいと感じられるのは、長い時を重ねて、人生をじっくりとかみしめてきた人間の顔、泣き笑いの包み込むように優しげな表情ではないかと思います。
ルオーの描く人々は、名も無くありふれた「ふつうの人々」です。

彼独特の力強いラインで表現された、道化師の、もの悲しいような、それでいて暖かな表情。
すうっと心にしみこんでくるような、真摯な瞳の色。
人間は哀しみと脆さを持ち合わせていて、そこから慈しみも生きていく力も生まれてくる。神はどこか遠くにいましますのではなく、ごくそばに、人間の内面にこそ宿り、心の中で見守っている…ルオーの作品は、そんなことを語りかけてくるような気がいたします。

「神無き時代」の人々の心を、類い希な「神秘」ではなく、その「日常」によって癒していった「今世紀最大かつ最後の宗教画家」。
1958年、87歳での死去に伴い、フランスは国葬を以って、彼の死を悼みました。

WEB美術館主任学芸員
へんりー

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