表現方法も描かれる対象も全くと言っていい程異なるのに、彼ユトリロの絵画は、ルオーの絵画と相通じる切ないような温かさを感じさせます。
優れた絵画というのは、時代も文化も言語も超えて、画家の絵に込められた想いを伝えることが出来るのでしょうか。
求めようとしても叶えられない、大切なものへの思慕。
画家の優しさも悲しさも、街の白い壁の色に凝縮しているように思われます。
酒に溺れることによって、何かを捨て去ろうとしていた、孤高の画家。
歴史に「もしも」が禁忌であるのは承知しておりますが、それでも尚、彼に尋ねてみたい気がするのです。
「あなたの絵画は、今でも沢山の人の心を和ませ続けている。あなたの絵を見て救われたように感じた人も数知れないだろう。もしも、あなたの生前にそれが分かっていたとしても、その遣り切れない淋しさは消えることはなかったのでしょうか」
と。