半身を大きく捻り振り返る裸身の女性。
肩から腰への曲線は、なめらかさを強調するように表現され「実際よりも脊椎骨3つ分体が長い」との批判さえともなった事で有名な、アングルの「グランド・オダリスク」です。彼女の表情のなんと艶美なことか。
「オダリスク」とは「トルコ後宮」を指します。
画家の筆は、後宮に使える女性を踏みにじられ搾取されるものとしてではなく、駆け引きをも知り得て、匂い立つような色香を持った----したたかでしなやかな猫科の動物のような----優美で蠱惑的な存在として描きとっています。彼女はプライドさえ感じさせる自信に満ちた眼差しで、静かに衆人を見据えているような気がいたします。