夜警
レンブラント

夜警

上の画像をクリックすると拡大画像が表示されます

「夜警」(1642)
レンブラント【Rembrandt Harmenszoon van Rijn】(1606−1666)
Rijksmuseum,Amsterdam

肖像画家として名声を勝ち得ていたレンブラントは、1642年アムステルダムの射手組合から制作依頼を受け、この絵を描きました。
前面の強い光と、闇に沈むバックに独特の劇的効果を考えた(この効果のため“夜警”と呼び慣わされておりますが、実際には昼間の警備を描いたものです)のですが、この大胆な手法は当時の人々に受け入れられませんでした。
完成した作品を目にした射手組合の18人は激怒いたしました。皆おなじ金額で制作費を払っているのにもかかわらず、まともなものは2人だけで、他は絵の奥に小さく道化風な姿態や表情で、あるいはぼかされたりして描かれており実際の姿とは全く違っていると。隊員たちの怒りは嘲弄に変わり、それが広まったためレンブラントへの制作依頼は全く来なくなりました。
そしてまた、この作品の描かれたと同じ年に愛妻サスキアをなくした彼はその痛手もあってか投機に手を出し、浪費の限りを尽くすようになり、その生活は貧困の一途をたどります。
第2の妻ヘンドリッキの生活によって1度は家庭的生活を取り戻したようにみえましたが、翌年には彼女の死を、6年後には一人息子の死を迎えることとなります。
その翌年、傷心の画家は、アムステルダムのユダヤ人街で看取るものもなく息を引き取りました。
「夜警」以降の彼の作品は、宗教に題を取った、人間のうちに潜む動物性と崇高で神聖な信仰の世界との対比を多く描いています。
オランダの至宝ともいうべき大作「夜警」は「光と影の画家」であったレンブラント自身の人生を文字通り“光”と“影”とに分けた作品といえるのかもしれません。

WEB美術館主任学芸員
へんりー

戻る