WEB美術館の開設準備をしていたころ、インターネット上にある名画の数々を本社のサーバーにせっせと溜め込んでいた。この頃へんりーはインターネット接続環境が無く、僕が収集した絵画をへんりーに見せるためだ。こうでもしないと、なかなか800kmも離れた場所で共同作業を行うのは難しい。
この時期、その中から気に入った絵画をパソコンのデスクトップの壁紙にしていた。最も長くデスクトップ上に有ったのがこの作品。
当時美術にはとんと疎い僕は、モリゾが女性で有るなんてことも知らず、ただこの作品の右端にたたずむ女性がなんとも気に入ってしまったためだ。
ある日、ひろしま美術館に立ち寄ったところ、ひとつの作品の題名を見て驚いた。エドゥワール・マネ「バラ色のくつ(ベルト・モリゾー)」。
あらら、モリゾさんて女性だったのか。それにモデルもやってる。気になって調べて見ると、モリゾはマネの弟子だったらしい。おまけにマネの弟と結婚してるなんて。
それはさておき、この作品の特徴はその構図にあると思う。普通に見ると立派な風景画なのだが、どうにも右端の女性が風景画であることを拒否してるみたいだ。逆に人物画であるとするなら、もう少しモデルを真ん中に持ってくるよね。
モデルはモリゾの姉エドマとのことだが、「おねえちゃん、船が隠れるからもっと右に寄ってよ!」なんて会話が有ったのかも?
敢えて主題を遠近左右に分散させ、見る者の視点がきょろきょろと定まらないのを面白がって描いたのかも知れない、などと思ってしまうのである。