「ラス‐メニーナス(女官たち)」(マドリード プラド美術館蔵 )
この絵画はスペインの画家ベラスケス【Diego Velazquez】(1599−1660)によって描かれたものでございます。
画家のアトリエに、あどけないマルガリータ王女が、女官や、道化たちを引き連れて入っておいでの折の、ほほえましい情景をとらえたように見えます。
この絵画は、実はその構成により二重三重ともいわれる空間を作りだしていると言われております。キャンバスに向かう画家は、ベラスケス本人の姿。彼の描くモデルの姿は、黒縁の鏡の中に半身像となって映っているフェリペ国王夫妻でございますが、この国王夫妻の立っている位置は、丁度私たち自身の位置にあたります。また、絵の中の人物の視線は、鑑賞者である私たちと視線を交わすようなかたちに描かれており、じっと見ているうちに、合わせ鏡を覗いた時のように、見ているのが自分なのか、見られているのが自分なのか曖昧になってくるような効果をもたらしております。
画家の描き出したかったものは、本当は何だったのでしょうか? 振り返ると後ろに、絵筆を握ったベラスケスが「どうです?」とばかりに、笑って立っているような気がいたしますのは、わたくしだけなのでございましょうか。
個人的には、道化役の女性の…道化でありながら…媚びることのない凛とした表情が好きな作品でございます。