蒲原
歌川広重

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東海道五拾三次之内『蒲原夜之雪』(1833年頃)
歌川広重 (1797-1858)
多色刷り木版,紙 25.7×38.1cm

新潟県に蒲原(かんばら)という地域があります。雪深い土地で、蒲原(越後)平野には遠くに国上山、弥彦山。そう、まるで広重が描いたこの絵の様な風景だそうです。

歌川広重の描いた浮世絵の傑作『蒲原夜之雪』には大きな謎があります。この絵で描かれた静岡県の蒲原という土地は、温暖で雪はめったに降らないとのこと。ましてこれほど積もることなど・・・
もしかして広重の描いた蒲原は、静岡ではなくて新潟の地では?広重はこの連作に、どうしても雪の風景を入れたかったのだと想像したくもなります。

もうひとつ、この『蒲原』を見てふと感じたこと。
それは16世紀フランドルの画家、大ブリューゲルの『雪中の狩人』に大変よく似ているということです。遠くに見える雪山、手前から家々を見下ろす構図、なにより画面左上から鋭く切り取ったような斜めのライン。まさか広重がブリューゲルの作品を見たわけではないでしょうが、同じ雪の風景を描いた東西を代表する作品に、このような類似点があることはちょっとした驚きでした。
いや、もしかして広重は長崎まで足を延ばし、オランダ商人からブリューゲルの複製画でも見せられたのでは?
う〜む、謎はいよいよ深まります。

天国の広重は「そんな詮索は野暮だよ」と笑ってるかもしれませんけれど。

WEB美術館館長
Summy

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