はにかんだような優しい表情、豊かな髪が印象的なこの可憐な少女は、ルノワールの良き理解者であった銀行家ルイ・カーン・ダンヴェルスの末娘イレーヌです。
画家としての修行を始めたばかりのころ、師のグレールに「君は自分を楽しませるだけのために絵を描いているようだね」と問われ「もちろんです。もし絵が楽しくなかったら、絶対に描いていません」と即答したというエピソードが物語るとおり、彼の絵には、明るく透明で生き生きとした人物が華麗な色彩で描かれております。
彼自身も社交的な人物であったようで、モネ、シスレー、ピサロ、セザンヌなどとも交友があり、彼らから多くの刺激を受けながら、彼独自の美しく楽しい世界を作り出していきました。
「生涯、悲しげな絵を描かなかった唯一の大芸術家」の描いた少女は、100年以上経った今でも本当に幸せそうに微笑み続け、私たちを魅了しています。