「落ち穂拾い」は、ご存じの通り、薄暮の中、小腰を屈め落ち穂を拾う農婦の慎ましい姿を描いた作品でございます。
一九世紀の半ば、パリの南東方の村に居を構え、主に風景画をものした一派は、その村の名を取ってバルビゾン(Barbizon)派と呼ばれました。(ミレーの他にはコロー・テオドール=ルソーなどがこれに当たります)
ミレーは農民の友としてその生活…忘れ去られてしまうような日常…を描きました。、落ち着いた控えめな色彩と丁寧で柔らかな筆致は、貧しく過酷であっただろう労働を、宗教的な尊ささえ感じられる詩情豊かな作品に仕上げております。
声高ではないけれど、すっとこころに入ってくるような暖かさを感じるのは、自身がフランス・グレヴィル近郊の貧しい農村の生まれであったミレーの、その風景に対する愛しさが込められているからなのかもしれません。