一面に張り敷かれた金箔を豪奢な飾りではなく、限りない奥行きと感じさせるほど、おおらかに躍動感溢れる筆致、墨色も黒々と鮮やかに引かれた鬼神の姿。
本山建仁寺に伝わる風神雷神図、二曲一双の屏風絵です。
天衣を躍らせ足を踏みしめる雷神、風袋を翻し空を駆ける風神。
目をみはり、歯を剥き出した表情は、おそろしくもあり、ユーモラスでもあり、その災禍によって地を脅かし、その導く…雨であり、陽であり、或いは季の移ろいそのものであり…によって地に豊穣をもたらす、神という遠くて近い存在そのものさえ表しているような気がします。
様式の一つの頂点を示す著名なこの作品は、款記、印章ともに備わらずとも俵屋宗達の真筆であることは疑いない。
……のでありますが、はて。肝心の宗達については江戸時代初期に活躍した絵師ということのみ、生没年さえ伝わっておりません。
ただ、仮名草子によると「扇は都の俵屋」という表記があり、一説では俵屋という屋号をもつ京都で評判の扇屋の上層町衆であったとも言います。
という説を聞くと、はあ、なるほど。あの構図を扇形の紙面に配したら、なんと収まりのいいことかと、納得のいくようないかないようなこじつけをしてみたくもなるのでありました。