緊張気味にポーズをとり、笛を吹く少年は、友人であった軍の高官が連れて来た、近衛軍鼓笛隊員ですが、一説によると顔の部分だけ、マネの息子のレオンであると言われています。そう言われてみると、大きな瞳を見開いた、あどけなさを残す表情が実に丁寧に、生き生きと描かれているように思われます。
この作品はジャポニスムの影響を受けているという点でも有名でございます。遠近感を廃し、人物の動きを効果的ながら最小限にとどめ、コントラストの強い色を平面的に用いている様は浮世絵の技法を感じさせます。
また、無地の背景に大胆な人物像という手法は、17世紀スペインの画家ベラスケスの手法と相通じるものがございます。
マネは、同じテーマを繰り返し描いたりすることはなく、多岐にわたるジャンルに取り組む画家であったといわれます。
感受性豊かな彼には、世界は描きたいものに満ちあふれていたのかもしれません。