満場の喝采を一身に受け、それを抱きとめるかのように、大きく広げられた腕。前屈させた足のつま先まで伝わる、筋肉の緊張感。
この作品を、際だたせているのは、何といってもその構図だと考えます。
桟敷席から、俯瞰で−ちょうどクレーン撮影のカメラショットのように−描かれた彼女の姿。下方から照らし出す光は、顎から鎖骨までの優美な曲線に、けぶる様な陰影を与え、衣装の、羽のような軽やかさを強調しています。
観客に応えるプリマの誇りに満ちた愛らしい表情は、ともすれば、呼吸音や、高まった鼓動まで感じさせるような気がいたします。
これ以前でも、これ以降でも為し得ない、凝縮された一番輝かしい瞬間を、画家の瞳は実に的確に捉えています。