証書としての絵画。これが「アルノルフィニ夫妻の結婚」です。
カーペット, スリッパ, 壁の上のロザリオ, ベッドの横の小さいブラシ,シャンデリアや鏡・・・華美ではないけれども手の混んだ作りのそれらは、私たちまでその結婚に立ち会っているかのようにさえ思わせる写実性をもっています。
しかしながら、この何気なく配された品々は、実は、神への敬謙なる信仰の深さを表すシンボルとなっているのです。
キャンドルの炎は神の眼差しを、犬は忠実な慈愛の精神のシンボルとして。特筆すべきは、緻密に描かれた鏡ですが、施された10のメダルはキリストの生涯を表したものになっておりますし、また其処に伺い見える画家のサインは 「ヨハネス・デ・アイク、ここに有りき、1434」人生の厳粛な瞬間に立ち会い、その誓約の重要な証人であった事を物語っています。
初期フランドル絵画の創始者であったファン・エイクは、既に完成された技量を持って、絵画は歴史を証明する有効な手段でもある事を教えてくれているような気が致します。