フルスクラッチで原型ができるまで

基本編その1


はじめに
 あるロボットの胴パーツの原型です。
これをポリパテのカタマリからいきなり削り出そうと考えると、
複雑な形状にどうしたらいいか、どこから作ればいいか迷います。
しかし、下から順に、
1段目、2段目、ダクトのある3段目、そして中央のコックピットブロックと、
部分部分を見ると単純な形状です。
そこで、単純な部分を順番に作っていくのが私の製作手順です。
この製作法の利点は、簡単に精度の高いパーツができることですが、
時間がかかってしまうという最悪の弱点もあります。
製作手順
0 準備
   製作開始の前にこれから作ろうとする物の設定画、イラストなどを、
製作する大きさに合わせてコピーし、
適当な大きさのカードケースに挟んでおきます。
(写真はB7ですが、B5やA4くらいがいいです。)
また、製作しようとする物にすでにプラモデルがあるのなら、
組んでおくべきだと思います。
参考になる部分は参考になるし、
かっこ悪い部分は反面教師としてとても役に立ちます。
1 胴のパテ盛り
 胴の1段目を作るためにパテを盛ります。
一回のパテ盛りで写真のようにはならないので、
パテが硬化しては盛るという作業を繰り返して形を出します。

 パテを盛ったその日に削り出しの作業を行うと、
溶剤が揮発することで後々ヒケてしまうので、数日かけ完全硬化させます。
デザインナイフで、ある程度形を出しておくのはかまいません。
2 胴の削り出し
 パテが完全硬化したら、
デザインナイフで出っ張った部分を落とし、
いよいよ削り出す作業を始めます。
 机の上に120番の布ヤスリを敷き、最初に底の面を平らに削ります。
底の面がきれいに平らになったら、残りの面を、
道具のページで紹介した大ヤスリでガシガシ削って形を出し、
小ヤスリで面やエッジをきれいに調整し、
400番、600番の耐水ペーパーで仕上げます。

 パーツの大きさは、後になって小さすぎた場合より、
大きすぎた場合のほうが修整が簡単なので、
気持ち大きめに作る感じがいいでしょう。

 形を出す上でのコツとしては、形の歪みがわかりやすいように、
上下の面を正確に平行にすることです。
底の面を平らにしたら、平行な線を引き上の面を削ります。
頑丈なノギスにパーツを挟んで動かすと平行になっているかわかります。
正確に平行でないと挟んだパーツをスルスル動かせません。
抵抗のある部分を削って調整します。
この方法を使えば好きな厚さのポリパテ板も作れます。
ノギスは高価でもガッチリしたものがいいです。(5千円弱)
3 気泡埋め
 胴の1段目の形が出せましたが、
パーツ表面にはポリパテ特有の気泡がいっぱいあります。
全体が完成して気泡を埋めてもいいのですが、
気になるのでここで埋めています。
 表面に出ている気泡は氷山の一角なので、
パテで埋める前にデザインナイフで気泡の穴をえぐって広げておきます。
表面には出てはいないが直下にある気泡も同様に処理します。
普通の刃では欠けやすいので、
私は刃先の丈夫なアートナイフプロの曲線刃で広げています。

 なお、パテで気泡を埋めたり、パテを盛ったりする前には、
歯ブラシを使ってパーツを水で洗っておきます。

 ポリパテで気泡を埋めるのには彫刻刀の平刃を使っています。
刃先にパテを付けて気泡にすり込むようにして埋めます。
大きな気泡はパテがヒケてしまうので、
写真のように余分に盛っておきます。

 気泡を埋めたパテを、硬化してすぐ削り落とすとヒケてしまうので、
ここでも最低1日はパテの硬化を待ちます。
4 胴の1段目完成
 小ヤスリと耐水ペーパーで余分なパテを落として1段目の完成です。
写真では横の4面のすべての気泡を埋めていますが、
下の部分以外は2段目のパテを盛るので、埋める必要はありません。
5 胴のパテ盛り(2段目)
 2段目のパテを盛る前に、
1段目と2段目の境界線の目安として線を引きます。
 2段目のパテを盛った状態。
本当ならこのまま2段目のパテの完全硬化を待ちたいのですが、
そうするとガチガチに固まって、
どこが1段目か2段目かがわからなくなってしまうので、
2段目のパテを盛ったその日のうちに(パテが完全硬化する前に)、
1段目と2段目の境界線を出しておきます。
 前もって引いた線を目安に、
デザインナイフで少しずつ丁寧に切っていき境界線を出します。
ラインが歪まないように、
アートナイフプロの直線刃のような刃の長めのものを使うと良いです。
 あと、1段目に残ったパテもきれいに落とします。
 境界線を出す際に汚なくなってしまった部分や、
パテの盛る量が足りなかった部分にパテを盛って修整します。
それを終えたら、
数日かけて2段目のパテを完全硬化させます。
6 胴の削り出し(2段目)
 2段目の削り出しの途中段階。
基準線を引き、
左右対称になっているかをディバイダで確認しながら調整していきます。
 微調整して、
ほぼ目的の形に近付いたが前後の幅がありすぎるようなので、
大きすぎた場合に小さくする方法を紹介します。
小さくする方法
 前後の幅や左右の幅がありすぎた場合、
もう一度、1段目と2段目の面を削り直すのはイヤです。

 そこで、金工用のこぎりで真ん中から切って幅を調整します。
 真ん中をできるだけ真っ直ぐに切ります。
多少ずれても大丈夫ですが、
真ん中を真っ直ぐのほうが修整が楽です。
 これは悪い見本です。
下側がずれています。
 切りたての面は荒れているので、
机に敷いた布ペーパーで平らに削ります。
 平らにした後。


 パーツを大きくする場合はこの状態にスペーサーを挟み、
間をパテで埋めることになります。
 平らに削ったら、
これから本格的に削る目安の線を引き、
均等に削っているか確認しながら削ります。

 削り終えたものを瞬間接着剤で接着し、
左右の面の乱れを修正すれば幅の調整終了ですが、
ポリパテと接着剤の硬さが違うため、
この後の作業で違和感が出るのがイヤなので、
私はポリパテで接着しています。
 ツルツルの面にポリパテを塗って接着するのは無理なので、
ポリパテが食い付く部分を削っておく必要がありますが、
モーターツールを使うと簡単に削れます。
先端ビットは石材・ガラス用の軸付砥石を使います。
 縁を少しだけ残し、モーターツールで彫り込みますが、
深さは1ミリ程度でいいです。
深すぎるとパテのヒケで合わせ目が変形します。

 最後に縁の部分に、
ポリパテの逃げ用の切れ込みをビットのエッジで彫ります。
 前後とも同じように。
 まず、平らな机の上にパテが付着しないように幅広なテープを貼ります。
前後それぞれのパーツにポリパテを薄く盛り、
テープの上でムギュッと合わせます。

 合わせ目が左右にズレているかどうかは、
指で確認するしかないですが、
パテを直接触るのはよくないので、
直接触りたくない、触れない人は手袋を使うなどすれば良いでしょう。
 パテが固まってきたらデザインナイフではみ出た部分を落とし、
左右のズレがないか確認します。
修整不可能なほどズレていたら合わせ目に刃先を入れて割り、
パテを落としてやり直します。
完全硬化前ならパテをきれいに落とせます。
 左右のズレが許容範囲であったなら、
合わせ目に修正用のパテを盛って、
前後接着のパテを完全硬化させるため1日以上あけます。

 前後のパーツは、
完全硬化したならガッチリ接着しているのではがれる事はありません。


 写真ではついでに2段目の気泡も埋めています。
 前後の幅だけでなく、左右の幅もありすぎたので、
同じ方法で左右の幅を小さくして、
その後、余分なパテを落とした状態。


 その2へ続く。
応用例
ポリパテの着色
 模型誌でもよく紹介されているテクニックですが、
2段目に盛るパテを混ぜる際に色を付けると便利な場面があります。

 左の写真はあるロボットの足首パーツですが、
1段目の黄色の部分に黄色のパテを盛ってしまうと、
上側は境界線が段差になるので厚さがわかりますが、
下側の厚さがわからなくなってしまいます。
しかし、色が違えばよくわかります。
 このように2段目のパテの厚さが一目瞭然です。

 これは、ポリパテの主剤と硬化剤を混ぜるときに、
ミスターカラーのシャインレッドをほんの少し混ぜています。
入れすぎるとヒケやすくなってしまうので注意してください。

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