丹精込めた季節の味
岩国ずしについて 岩国寿司の由来 周防の国 岩国は『三本の矢』の逸話で知られる毛利元就の三子息
の一人吉川元春の三男広家が関が原の戦の後、岩国に移封され統
治した藩である。十二万石の大名から三万石の大名に格下げされ
た屈辱は毛利の血を引く彼にとっていつかは天下をという気骨に
満ちていたに違いない。しかし、それは、叶わない時代であった。
しかし、三代藩主吉川広嘉の時代に五連の錦帯橋という天下に
誇れる文化遺産を築き上げ、さらに十代藩主経礼の時代、庶民の
知恵による豪快無比な五段の押し寿司が作られたことによって
それは叶えられたといっても過言ではなかろう。
さて、岩国寿司の原型は大阪の押し寿司と思われる。
今から約200年前(文化文政の頃)すしご飯を使った寿司が開発され
江戸(にぎり)、大坂(押し寿司)で普及していた。(それ以前まではあ
ゆ、鮒などを桶に漬けて発酵させた、なれ寿司が主流であった。)
岩国藩では、紙の専売制度を敷き、大坂方面への売り出しに成功して
いた。錦川上流より川舟で運ばれた和紙は大坂中ノ島へ海路で出荷さ
れていた。おいしいすしを大坂で食べた船乗りたちは岩国に帰って土産
話にしていたであろうし、錦川沿いの家々に岩国寿司が伝わっている
のもこの理由であろう。また、敷き葉に用いられる芭蕉の葉も川沿いに
見られる。蓮根の栽培もこの頃盛んになり蓮根を取り入れた氏盛料理
(大平、酢蓮根、岩国寿司)が出来上がったと推測される。
岩国寿司の特徴は四角い桶にすしごはんを敷きその上に金糸たまご、
おぼろ、しいたけ、穴子、こはだ、蓮根などをのせそれを最高五段まで
繰り返して漬け、重石をし、一度に何十人前もつくる。寿司と寿司がくっ
つかないように芭蕉の葉(錦川沿いの家)や蓮根の葉(海岸沿線の家)
を敷き(冬場は菜もので代用)具に瀬戸内の幸、山、里の幸を惜しげも
なく使い、出来栄えの豪華さから『殿様寿司』とも称され、特に祭事や祝
事の時などに各民家で作られ、来訪した多くの親戚、縁者に振舞われ
る習慣が今に続いている。
参考資料『岩国玖珂歴史物語』
(岩国ずし、大平、蓮根のさんばい)
岩国ずしの漬け方
(岩国では寿司を作るではなく、漬物のように、漬けると言います。)
まず寿司桶に芭蕉の葉を 寿司の具材(おぼろ その上に芭蕉の葉を
敷き、寿司飯を敷き詰め、 玉子、椎茸、穴子、レ 敷き、また寿司飯を
押し棒で押さえていく。 ンコン、こはだ、木の芽 のす。
等)を重ねていく。
寿司桶と寿司桶、押し棒と寿司切り庖丁 枠を抜き出来上がり 上蓋を乗せて重石を 最高五回ほど繰り返しおこない
置く (半日) 一番上に芭蕉の葉を置く
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