このページは労働衛生管理のポイントをまとめたものです。皆様の労働安全衛生活動の助けになれば幸いです。
作業環境管理、作業管理および健康管理の3管理を指します。
これは、労働衛生管理の基本となるもので、これに労働衛生教育と労働衛生管理体制を加え、5管理とすることもあります。
作業環境中の有害要因の状態を把握して、できるかぎり良好な状態で管理していくことです。作業環境中の有害因子の状態を把握するには、作業環境測定が行われます。
環境を汚染させないような作業方法や、有害要因の暴露や作業負荷を軽減するような作業方法を定めて、それが適切に実施させるように管理することで、改善が行われるまでの間の一時的な措置として保護具を使用させることなども含まれます。
労働者個人個人の健康の状態を健康診断により直接チェックし、健康の異常を早期に発見したり、その進行や憎悪を防止したり、さらには、元の健康状態に回復するための医学的及び労務管理的な措置をすることでです。最近では、労働者の高齢化に伴って健康を保持増進して労働適応能力を向上することまで含めた健康管理も要求されるようになってきています。
なお、労働衛生管理の中で労働衛生3管理はその中核をなすものですが、作業者が労働衛生3管理についての正しい理解をすることが大切であり、この理解を深めることを目的として労働衛生教育が行われることとなります。また総合的に労働衛生対策を効果的に進めるためには、産業医や衛生管理者等の労働衛生専門スタッフが有機的に結びついて連携を取っていくとともに、安全管理さらには生産管理と一体となって行われる必要があり、そのためには労働衛生管理体制を基盤とした総括管理があります。
労働安全衛生法第65条第1項に基づき実施される作業環境測定の対象は下表の粉じん、有機溶剤などの10の作業場については法定回数測定し、記録を法定年保存しなければなりません。またそのうち5作業場については、作業環境測定士または作業環境測定機関にて測定することになっています。
(1)作業環境測定の方法
作業環境測定は、労働者の働いている環境の状態を的確に把握し、その結果に基づいて設備改善等の措置を講じるために行うもので、その結果は作業場の実態を的確に表していなければなりません。したがって作業環境測定は、客観性があり、かつ、十分な精度が要求されることとなります。そこで、労働安全衛生法では、作業環境測定を、厚生労働大臣が定める作業環境測定基準に従って行うこととしています。
作業環境測定基準には、作業環境測定を行うべき対象ごとに次のような内容が定められています。
@単位作業場所の設定方法
A測定点の設定方法
B測定時刻および測定時間の選定方法
C測定に用いる機器の種類
なお、作業環境測定を適切に実施するためには、事前の調査が非常に重要です。測定点の設定についても、それを正しく行うためには、作業場の状況、労働者の行動範囲、測定対象物質の性質などを熟知しておく必要があります。
(2)作業環境測定結果の評価と事後措置
作業環境測定結果の評価は、作業環境評価基準に従って、作業環境の状態を第1管理区分、第2管理区分および第3管理区分の3つに区分することによって行います。この作業環境評価基準は、作業場における作業環境管理の良否を判断するための基準を示したもので、作業環境測定を行わなければならない作業場のうち、粉じん、特定化学物質、石綿、鉛、および有機溶剤に係るものに適用されます。
作業環境測定結果の評価および各管理区分における作業場の状態と講ずべき措置の内容は下記のとおりです。
図 作業環境測定のフローシート
補足説明
・A測定とは作業場の全般的な環境状態を把握する測定です。1測定点は10分以上また1単位作業場所は少なくても6m以内の等間隔で(方眼紙のように)5点以上、1時間以上測定します。
・B測定とは作業者位置による最高濃度を知るための測定です。測定時間は10分間です。作業環境測定士の判断で実施します。
表 管理区分と管理区分に応じて講ずべき措置
管理区分 | 状 況 | 対 策 |
第1管理区分 | 95%以上の場所で管理濃度を超えない | 現在の管理の継続的維持に努める |
第2管理区分 | 気中の平均値が管理濃度を超えない | 施設、設備、作業工程または作業法の点検 を行い、その結果に基づき、作業環境を改善 するために必要な措置を講ずるよう努める |
第3管理区分 | 気中の平均値が管理濃度を超える | @施設、設備、作業工程または作業法の点検 を行い、その結果に基づき、作業環境を改善 するために必要な措置を講ずる A有効な保護具の使用 B(産業医が必要と認める場合には)健康診断 の実施その他労働者の健康の保持を図るため 必要な措置を講ずる |
作業場の種類 (安全衛生法施行令第21条) |
関連規則 | 測定項目 | 測定回数 | 記録の 保存年 |
|
○1 | 土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場 | 粉じん則 26条 |
空気中の粉じん濃度、 遊離珪酸含有率 |
6月以内ごと に1回 |
7 |
2 | 暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場 | 安衛則 607条 |
気温、湿度、ふく射熱 | 半月以内ごとに1回 | 3 |
3 | 著しい騒音を発する屋内作業場 | 安衛則 607条 |
等価騒音レベル | 6月以内ごとに1回 | 3 |
4 | 坑内作業場 (1)炭酸ガスの停滞場所 |
安衛則 592条 603条 612条 |
空気中の炭酸ガス濃度 | 1月以内ごとに1回 | 3 |
(2)通気設備のある坑内 | 通気量 | 半月以内ごとに1回 | 3 | ||
(3)28℃を超える場所 | 気温 | 半月以内ごとに1回 | 3 | ||
5 | 中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの | 事務所則 7条 |
空気中の一酸化炭素および二酸化炭素の含有率、室温および外気温、相対湿度 | 2月以内ごとに1回 | 3 |
6 | 放射線業務を行う作業場 (1)放射線業務を行う管理区域 |
電離則 54条 55条 |
外部放射線による線量当量率 | 1月以内ごとに1回 | 5 |
○(2)放射性物質取扱室 (3)坑内核原料物質掘採場所 |
空気中の放射線物質の濃度 | 1月以内ごとに1回 | 5 | ||
○7 | 第1類もしくは第2類の特定化学物質を製造し、または取り扱う屋内作業場 | 特化則 36条 |
空気中の第1類物質または第2類物質の濃度 | 6月以内ごとに1回 | 3 特別管理物質については30年間 |
石綿等を取扱い、または試験研究のために製造する屋内作業場 | 石綿則 36条 |
空気中の石綿の濃度 | 6月以内ごとに1回 | 40 | |
○8 | 一定の鉛業務を行う屋内作業場 | 鉛則 52条 |
空気中の鉛濃度 | 1月以内ごとに1回 | 3 |
9 | 酸素欠乏場所において作業を行う場合の当該作業場 | 酸欠則 3条 |
空気中の酸素濃度 (硫化水素濃度) |
その日の作業開始前 | 3 |
○10 | 有機溶剤を製造し、または取り扱う屋内作業場 | 有機則 28条 |
空気中の有機溶剤濃度 | 6月以内ごとに1回 | 3 |
作業場の種類の欄に○印(青色部分)を付した作業場は指定作業場であり、測定は作業環境測定士または作業環境測定機関が行わなければならない。
また、※印を付した作業場の測定には、酸素欠乏危険作業主任者に行わせること。
(注)1.施設、設備、作業工程または作業方法を変更した場合には、沈滞なく測定する。
2.室温および相対湿度については、1年間基準を満たし、かつ、今後1年間もその状況が継続すると見込まれる場合は、春または秋、夏および冬の年3回。
3.放射線装置を固定して使用する場合において使用の方法および遮蔽物の位置が一定しているとき、または3.7ギガベクレル以下の放射性物質を装備している機器を使用しているときは6月以内ごとに1回。
(昭和63年労働省告示第79号)
A測定のみを実施した場合の評価
A測定 | ||
第1評価値<管理濃度 | 第2評価値≦管理濃度≦第1評価値 | 管理濃度<第2評価値 |
第1管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 |
A測定およびB測定を実施した場合の評価
A測定 | ||||
第1評価値<管理濃度 | 第2評価値≦管理濃度 ≦第1評価値 |
管理濃度<第2評価値 | ||
B測定 | B測定値<管理濃度 | 第1管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 |
管理濃度≦B測定値 ≦管理濃度×1.5 |
第2管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 | |
管理濃度×1.5 <B測定値 |
第3管理区分 | 第3管理区分 | 第3管理区分 |
ここで「管理濃度」とは、作業環境測定結果から当該単位作業場所の作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための指標として定めたものです。
また、「第1評価値」とは、単位作業場所において考え得るすべての測定点の作業時間における気中有害物質の濃度の実現値のうち、高濃度側から5%に相当する濃度の推定値、「第2評価値」とは、単位作業場所における気中有害物質の算術濃度の推定値であり、いずれもA測定値から計算で求められます。
なお、評価は測定対象物質ごとに行いますが、混合有機溶剤の場合は、管理濃度を加味した総合評価を行います。
個人暴露濃度の測定とは、個人サンプラーを襟等に取り付けて個人の暴露量を測定するものです。
サンプリング方法としては、ろ過捕集方法、固体捕集方法、液体捕集方法があるが、リアルタイムで連続的に測定できる簡易測定器も利用できるし、また空気中の拡散を利用したパッシブサンプラーも使用できる。
「ばく露濃度」とは労働者が作業中に、呼吸用保護具を使用しない状況の下で、空気中に存在するある有害物質を吸入する濃度であるので、保護具の着用作業者には対応できない欠点がある。
@生物学的ばく露モニタリング
生物学的量モニタリングともいう。
体内に侵入した化学物質または、その化学物質の代謝物を測定する。有害化学物質の侵入後の生体内存在量測定であり、生物学的ばく露指標、生物学的許容濃度などを基準に用いて実際に体内に取り込んだ内部ばく露の程度を評価する。したがって作業強度、作業時間、防毒マスク有無等を測定値に反映できる。作業管理リスクアセスメントに関する情報源となる。
A生物学的影響モニタリング
体内に侵入した化学物質によって、生成した影響物質(例えば、鉛ばく露ではδーアミノレブリン酸の増加)を測定して生体の初期影響を評価する。作業者のばく露の程度の把握とともに、生体障害に対する早期の予防を目的としている。
表 労働衛生管理における生物学的モニタリングの位置づけ
モニタリング | 環境モニタリング | 生物学的モニタリング | 健康サーベイランス (健康診断) |
|||
場 | 個人 | ばく露(量) | 影響 | |||
定義 | 作業環境測定 | 個人ばく露測定 | 内部ばく露 | 初期の生体影響 | 肉体的不調・障害 | |
試料採取 | 作業環境 | 生体内 | ||||
評価の対象 | 化学物質 | 生体影響 | ||||
行動目標 | 予防 | 医学的処置、配置転換 | ||||
評価基準 | 管理濃度 | 許容濃度 TLV |
生物学的許容濃度 生物学的ばく露指標 |
臨床的基準 | ||
労働衛生 管理 |
作業環境管理 | 作業管理 | 健康管理 | |||
モニタリング 上の問題点 |
環境中濃度の変動 (時間、場所) |
体内吸収量の変化 (作業強度、皮膚吸 収、保護具)に対応できない |
代謝の個人差、共存化学物質の影響、作業外ばく露の影響を受ける | 感受性の個人差 |
出典:(緒方正名、田口豊郁:トキシコロジーフォーラム、11,333-344,1988,を一部改変)
作業環境測定の結果、作業環境に問題があると判断された場合、リスクを削減するための対策を行う必要がある。
有害物質を取り扱う作業場における健康障害予防のための対策としては下表のようなものがある。
表 健康障害を予防するための対策
@有害物質の使用の禁止、有害性の低い物質への転換 A作業工程、作業方法の変更 B密閉化、自動化、有害工程の作業者からの隔離 C局所排気装置、プッシュプル換気装置による有害物質の拡散の防止 D全体換気による有害物質の希釈排出 E作業環境測定による環境のモニタリング F個人用保護具の使用 G定期健康診断、特殊健康診断による異常の早期発見と対策 |
このうち、@からEが作業環境管理、Fは作業管理、Gは健康管理に相当する対策である。
工学的対策としては、上表の手順のなかで@〜Eのサイクルをまわすことになる。このなかで、作業環境における有害物質のリスク削減において最も根本的な対策方法は@の有害物の使用を禁止することである。有害化学物質を使用しなければ、その作業現場において、少なくとも当該化学物質に起因する健康影響のリスクは完全に存在しなくなるので、究極的な対策といえる。しかし、現実には化学物質の使用を禁止あるいは中止することはできない場合が多い。また使用量を削減することや、より有害性の低い物質に代替することが効果的である。
有害性の低い物質に転換することが出来ない場合、あるいは有害性の低い物質に転換したとしてもなお有害性が残る場合には、工法の変更や工程の改良等により、発生量を抑える方法を考える。例えば、粉塵作業では、湿式工法を採用したり、床に散水することにより、粉塵の発生や堆積粉塵の再飛散を抑えることが出来る。また、工程順序を入れ替えるなど、作業方法や工程を変更することによって、有害物の発生を低減化する方法もある。
ここまでの対策については、新たな設備投資はそれほど必要ない。しかし、これらの対策が出来ない、すなわち、どうしても作業によって有害物が発散する危険性が存在する場合には、発生源の密閉化、自動化あるいは無人化等を行うことにより、有害物が発生しても作業者が暴露されないようにする方法が考えられる。
密閉化、自動化等の対策が十分に出来ない場合には、有害物が作業現場に発生することになるが、発生した有害物が作業者の呼吸域に達する前に吸引して除去すれば、作業者が暴露されることは避けられる。そのための装置として、局所排気装置がある。
実際には、局所排気装置やプッシュプル換気装置を導入している作業場は多いが、作業性が悪くなれば作業者が使用しなくなり、ついにはフードやダクトが邪魔になり、取り外してしまうこともよくある。したがって、設置に当たっては、作業者の動線や作業内容を考慮し、作業性を損なわないようにすることがきわめて重要である。
局所排気装置やプッシュプル換気装置で有害物を十分に除去できない場合には、有害物が室内に拡散することになる。このような場合には、全体換気を設置して室内を換気し、有害物を希釈排出することで室内の有害物質を低減化する必要がある。全体換気には窓を開けて空気を入れ替えたり、温度差などの自然の推進力を利用して換気する自然換気と換気扇等を用いる機械換気とがある。
実際の環境対策としては、表のCに示す局所排気装置またはプッシュプル換気装置を設置するケースが多いと考えられるが、最終的に局所排気装置の設置を選択するにしても、基本的な考え方としては、常に@から順に考えることが重要である。
|
リスクアセスメントとは、リスクのアセスメント(評価)であり、リスクは、災害及び健康障害の発生の可能性と重大性の組み合わせとして定義される。
リスクアセスメントでは
@ 職場における危険・有害要因を特定し
A リスクを見積もり
B それを評価
C そのリスクが労働災害に至るか否かを判断
一般的な実施手順は下図のようになる。
リスクアセスメントの成果
@職場のリスクの明確化
A職場のリスクに対する認識の共有
B安全衛生対策の合理的な優先度付け
C費用対効果を考慮にいれた安全衛生対策の効果的実施
D残留リスクの扱いについての理由の明確化
コントロールバンディングとは1999年に英国のHSE(Health Service Executive:安全衛生庁)から提案されたもので、コントロールバンディングの大まかな流れは次のとおりである。
(1)化学物質の取扱量と物理的形態(揮発性・飛散性)から労働者へのばく露の程度を推定する
(2)推定ばく露濃度と化学物質の有害性からリスクのレベルを推定する
(3)推定リスクレベルから、必要な工学的対策を定める
コントロール・バンディングにおける取扱量や揮発性・飛散性、あるいは化学物質の有害性などはすべてある程度の幅(バンド)をもったランクに分けられており、どのランクに入るかによって取り扱おうとする化学物質が分類される。
この分類結果によってその化学物質による健康障害を予防するために必要な工学的対策が示されるので、リスクアセスメントに関する知識があまりなくても取るべき対策にたどり着ける特長がある。
リスクアセスメントは、ばく露限界値や作業環境濃度・ばく露濃度を扱うので、いわば定量的アセスメントとなるが、コントロール・バンディングは、定量性は求められずにランク分けするだけなので、いわば定性的アセスメントになる
コントロール・バンディングにおいては、化学物質等を取り扱う作業ごとに、「物質の有害性」「揮発性・飛散性」「取扱量」の3要素それぞれにおいてランクを付ける。
それらのランクに応じて作業の健康リスクを4段階に分類する。この分類に応じてリスク軽減のための対策が自動的に示される。
この方法は英国安全衛生庁(HSE:Health and Safety Executive)によって提案されたもの(COSHH essentials)であるが、他にドイツ連邦労働安全衛生研究所(BAuA)による改変版もある。
ドイツ版では、上記3要素に「取り扱いが短時間か否か」および換気などの「制御措置の有無と種類」を加えて、5要素で判断する。
ILO(国際労働機関)でも、「国際化学物質管理ツールキット」として、開発途上国や中小企業でも使える手法として公表している。
下図にコントロール・バンディングのシステムを示す。
・ステップ1(化学物質の有害性)
グループA:B−E以外
グループB:弱い急性毒性
グループC:中程度の急性毒性
グループD:強い急性毒性、慢性毒性、生殖毒性等
グループE:発がん性、遺伝毒性等
グループS:眼、皮膚の刺激性/腐食性、感作性、経皮吸収性
・ステップ2(化学物質の取扱量)
少量:gまたはml
中間:kgまたはL
大量:tonまたはkL
・ステップ3(物理的形態)
<液体の場合>
低揮発性:沸点150℃以上
中揮発性:沸点50〜150℃
高揮発性:沸点50℃以下
<粉体の場合>
低飛散性:ペレット状で非繊維状の固体
中飛散性:結晶、粒状固体
高飛散性:微細、軽量パウダー
・ステップ4(リスクレベルの決定)
ステップ1〜3のクラス分けにより下図のようにリスクが決定される。
毎回の取扱量 | 低飛散性粉体 | 中飛散性粉体 | 高飛散性粉体 | ||
低揮発性液体 | 中揮発性液体 | ||||
グループA | |||||
少量 | g又はml | 1 | 1 | 1 | 1 |
中間 | kg又はL | 1 | 1 | 1 | 2 |
大量 | ton又はkL | 1 | 1 | 2 | 2 |
グループB | |||||
少量 | g又はml | 1 | 1 | 1 | 1 |
中間 | kg又はL | 1 | 2 | 2 | 2 |
大量 | ton又はkL | 1 | 2 | 3 | 3 |
グループC | |||||
少量 | g又はml | 1 | 2 | 1 | 2 |
中間 | kg又はL | 2 | 3 | 3 | 3 |
大量 | ton又はkL | 2 | 4 | 4 | 4 |
グループD | |||||
少量 | g又はml | 2 | 3 | 2 | 3 |
中間 | kg又はL | 3 | 4 | 4 | 4 |
大量 | ton又はkL | 3 | 4 | 4 | 4 |
グループE | |||||
すべて | 4 | ||||
グループS | |||||
すべて | 皮膚、眼のばく露防止のための保護具の使用 |
・リスクに応じて下表のような工学的対策が必要となる
リスク | リスク削減のための実施事項 |
1 | 全体換気 |
2 | 局所排気 |
3 | 密閉化 |
4 | 専門家による指導を受ける |
指針に示された労働安全衛生マネジメントシステムはつぎのような特徴があります。
@トップの安全衛生方針に基づき事業実施に係る管理と一体になって運用される組織的な取り組み
A計画(PLAN)−実施(DO)−評価(CHECK)−改善(ACT)のPDCAサイクル構造
B明文化・記録化により、安全衛生活動の確実で効果的な実施
C危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)及びその結果に基づく対策の実施による本質安全化の推進
具体的に労働安全衛生マネジメントシステムを実施していく観点から、指針の内容を整理すると次の図のようになります。
職場における「腰痛予防対策」8か条 |
職場における腰痛の発生は、多くの業種や作業において見られます。「労働衛生のしおり」によると、業務上疾病の大部分は負傷に起因する疾病(平成25年では5252人)であり、そのほとんどが災害性の腰痛(4388人)です。
腰痛の発生には、物を持ち上げる、腰を捻る等腰部に負担をかける動作要因、床や階段での転倒や寒冷等の作業環境要因・年齢・性別・体格・既往歴等労働者の個人的要因があり、これらが重なり合って起こります。
職場における腰痛予防対策としては、作業管理、作業環境管理、健康管理及び労働衛生教育を適切に行うことが必要でありこれらについては「職場における腰痛予防対策指針」として示されていることは既に周知のことと思います。
では、労働者個人としては、どのような注意をしていけば腰痛を防ぐことができるでしょうか?労働衛生コンサルタントから見た「腰痛予防対策8か条」としてまとめてみました。
よ |
予防が一番! 作業動作を見直そう
例えば、床から物を持ち上げる場合を考えて見ましょう。中腰になって腕を伸ばして物をつかんで持ち上げる動作は、腰への負担が非常に強く危険です。片足を少し前に出し、膝を曲げ、腰を十分に下ろして荷物をかかえ、膝を伸ばすことで持ち上げるようにしましょう。できるだけ身体を物に近づけ、膝の力を使って持ち上げましょう。また、物を棚などの高所に上げるときは、いったん胸または肩まで上げてから、棚に上げる方が安全です。ちょっとした注意や工夫で腰にかかる負担は大きく変わります。
う |
運動をして筋肉を鍛えよう腰痛体操
腰痛体操は、腰痛を予防するために行うものです。腹筋・背筋・臀筋などの筋肉を強化し、ストレッティングを通して筋肉の柔軟性を確保し、バランスのとれた良い姿勢をつくります。腰痛の治療として重要な位置を占めています。毎日行うことが大切です。ただし、正しい方法で行わないと逆に腰痛を生じることがありますので、正しい指導を受けて行いましょう。
つ |
疲れぬよう作業の合間にアクティブレスト
作業の合間に適時休息をとることによって、腰部の緊張を取り除くことは、腰痛の予防にとって大切なことです。立位の作業なら1時間に1〜2回は積極的休憩(アクティブレスト)をとりましょう。軽い運動をして、疲労の回復を図りましょう。座って行う作業でも同様です。時々立ち上がるだけでも、あるいは少し離れた場所に書類を取りに行くだけでも、筋肉の緊張をとることができます。
長時間の運転の場合にも、車両から降りて背伸びなど軽い運動をするなど、アクティブレストをとりましょう。
アクティブレストは、腰にかかる負担の軽減だけでなく、気分をリフレッシュすることができ、事故の予防にもつながります。
う |
動くときは負担をかけない保護ベルト
腰部に保護ベルトや腹帯あるいは腰痛予防用コルセットを用いることは、腰痛予防にとって非常に重要なことです。これらを用いることによって腹圧が高まり、体重を支え、その分だけ腰椎にかかる負担が軽減されるのです。
ウエイトリフティングの選手は、バーベルを持ち上げるとき、腰部を大きなベルトで締めています。トレーニングで日々鍛えていても、腰部を保護しているのです。彼らは、「鍛えること」の大切さと「保護すること」の大事さを教えてくれています。
ウエイトリフティングの選手を見習って、重たいものを持つときや、腰部に負担のかかる作業を行うときには、必ず保護ベルト(腰痛予防コルセット)を用いましょう。
た |
正しい姿勢を見直そう
例えば、座位でコンピュータに向かっている場合を考えて見ましょう。まず机の高さと椅子の高さ、ディスプレイの高さや傾きの調整が大事なことはいうまでもないことです。背もたれを利用すると、正しい姿勢が確保されるとともに、上半身の重みの一部が背もたれで受け止められている分だけ腰部の負担が軽減されます。膝の高さがお尻の高さより少し高くなるようにすると、腰部にかかる負担が軽くなります。そのためには、片足だけでも台に載せるようにすると良く、あるいは脚を組むことも良いのです。
立位でも同じことがいえます。両足を揃えて真っ直ぐ立っているよりも、片足を台に載せる方が腰部にかかる負担は軽いのです。
中腰での作業は、腰に過大な負担をかけるので避けたいものです。また、ひねり、前かがみ、後ろを向いて身体を反らすなどの不自然な姿勢や急激な動作をなるべくとらないようにしましょう。
運転するとき、腕をいっぱいに伸ばしてハンドルを握る姿勢は、恰好は良いかも知れませんが、腰には良くありません。座席をハンドルに近づけ、膝を曲げて臀部よりやや高めにして運転するようにしましょう。
い |
一度に持たない重いもの
重たいものは何回かに分けて持ち、腰にかかる負担を軽減しましょう。何事でもそうですが、無理をすると損をすることが少なくありません。また、重量物の形も重要です。持ちやすい形に、身体に引き付けやすい形にすることが大切です。持ち上げようとしたものが、思ったより重すぎた場合はもちろん、軽すぎた場合も腰痛をきたすことがあります。必要に応じて、重量を掲示することも大切です。台車などの運搬用具利用できるのであれば、積極的に用いましょう「たったこれだけのために」と邪魔くさがったために腰痛で泣くことがないように。
さ |
避けよう! 長い時間の同一姿勢
どんなに良い姿勢で作業したとしても、同じ姿勢を長時間続けると良くありません。適度に立ったり、座ったりして姿勢を変え、できれば時に大きく身体を動かしましょう。立位の作業では、片足を台に載せると良いことを先に述べましたが、交互に足を替えるようにしましょう。同様に、座位では足を組み替えると、腰への負担は軽減します。
く |
工夫して職場の環境・設備を整えよう
できるだけ機械化・省力化が望まれますが、現実はそうはいかない場合も多いことでしょう。しかし、例えば作業台の配置を変えるだけで、作業がスムーズになり、腰部など身体への負担が軽減するケースがあります。工夫して職場の環境・設備を整えたいものです。作業台の高さや位置を自分に合わせたり、動作に支障がないように作業空間を確保したり、作業場内の温度、湿度、照明に気を付けましょう。また、作業中の転倒事故も多発していますので作業床面の材質(凹凸の除去や滑り止めの工夫)等も考えましょう。
労働者が適切な作業の方法や予防対策を知っていれば、職場での腰痛は減少することでしょう。また、腰痛予防は「職場における環境づくり・対策」だけでなく、日常生活での姿勢(立位・座位・寝る時)に注意することや健康の保持増進に心がけることも大切です。肥満は腰痛にとって大敵です。ウオーキング、スイミング、サイクリングなどのスポーツは腰にとっても良い運動であり、気分も良くなります。十分な睡眠をとり、バランスのとれた食事をとることは疲労回復にとって大切なことです。
ストレスチェック制度 |
1.目的
・労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)
・労働者自身のストレスへの気付きを促す
・ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる
2.ポイント
・常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負荷の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが事業者の義務となり ます。 (労働者50人未満の事業者は当分の間努力義務)
・検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。
・検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。
また、申し出を理由とする不利益な取り扱いは禁止されます。
・面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じて就業上の措置を講じることが事業者の義務となります。
個人サンプリング法の概要
・従来法によるサンプリングとの比較
個人サンプリング法による測定は、従来法のA測定に相当する作業場の空気中の平均的な有害物の分布状態を把握するC測定と、従来法のB測定に相当する高濃度暴露を把握するD測定から成っています。これらの測定で行うサンプリングの方法は以下のとおりです。
【C測定】有害物を取り扱う作業を行う複数の作業者の身体にサンプラーを装着して原則全作業時間を通してサンプリング
【D測定】発散源への近接作業等、高濃度の暴露が想定される作業を行う作業者の身体にサンプラーを装着して15分間サンプリング
・個人サンプリング法の特徴
作業環境の評価は、従来法による測定結果に基づきおおむね適切にされていますが、作業環境の空気中への有害物の発散の変動が大きい場合や作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難な時などは適切な評価が得られない場合があります。
個人サンプリング法は、有害物の発散状況の変動等の適正な測定の阻害要因があっても作業者の呼吸域の空気を正確に測定することができ、リスクアセスメントと作業環境測定を一括して促進することができるのです。
当面対象となる作業
令和3年4月から個人サンプリング法による測定を選択できるのは、(1)管理濃度が低い(<0.05mg/m3)特定化学物質または鉛等を製造しまたは取り扱う作業と、(2)有機溶剤および特別有機溶剤の取扱い作業のうち塗装作業等有機溶剤等の発散源の場所が一定しないものです。
個人サンプリング法による測定の実施者および結果の評価
個人サンプリング法によるデザイン・サンプリングについては個人サンプリング法について新たに登録を受けた作業環境測定士または作業環境測定機関が行うこととされています。なお、分析の実施者の資格は従来法と同じです。
個人サンプリング法による測定結果が出たら従来法と同様に作業環境評価基準に基づき評価を行います。
この評価の方法も、C測定はA測定に準じて、D測定はB測定に準じて第1・第2・第3管理区分のいずれかに区分して行います。第1の場合は現状維持、第2の場合は改善努力、第3の場合は要改善というのも従来法と同じです。
化学物質管理規制が変わります。
特化則等による個別具体的な規制からリスクアセスメントを基盤とした自律的な管理規制に移行します。