VortexBoxのパフォーマンス
(2014.06.03)私がVortexBoxを使う一番大きな理由は、そのレスポンスの良さにあります。
通常のネットワークオーディオでは、サーバーとしてNASを用い、市販のネットワークプレーヤーで再生し、そこでD/A変換されたアナログ信号をアンプに送るというのが一般的な使い方かと思います。
対してVortexBoxでは収納された音楽データをサーバー内蔵のプレーヤーソフトSqueezeLiteで再生し、PCMデータをDACに送ってD/A変換を行うという方法を取ります。もちろんVortexBoxはDLNAサーバー機能を持っていますので、通常のNASと同じ使い方をすることも可能です。まずは単独のファイルサーバーとしてのディスクパフォーマンスを計測してみます。
普段サブマシンとして使っているものに500GBのSATAドライブをセットし、VortexBox 2.3をクリーンインストールしました。
マシンのスペックは
CPU:Intel Pentium Dualcore E5200(2.5GHz)
HDD:IBM SATA 500GB 7200rpm
RAM:DDR2 2MB×2
ま、Windows7が普通に動く2世代ほど前のマシンと言って良いと思います。CrystalDiskMarkの結果はかなり良好です。
使用しているハブはギガビットなので、シーケンシャル読込の値はネットワークの帯域をほぼ使い切っていると言えます。これであればVortexBoxのディスク性能がボトルネックになるということはまず考えられません。VortexBoxをDLNAサーバーとして用い、タブレット用の汎用DMCであるAudionet Music Manager(以降AMM)を使ってみたところ、3000枚ほどのライブラリをアルバムアートを含め比較的迅速にスキャンします。再生指示を出すと一旦データをインポートしてから再生している様子が伺えます。パフォーマンス的には十分実用レベルに達していると考えられます。
Audionet Music Managerもう一つ、タブレット上で動作するAvia Media Player(以降AVIA)で試したところ、アルバム情報はまずまずの速度で取得するものの、アルバムアートの表示は緩慢です。再生指示を出したところ即座に再生が始まるため、決してレスポンスが悪いというわけでは無さそうです。
このAVIAはAV用途に適したアプリなので、VortexBoxに収納した写真を表示するのに重宝しています。スライドショーの動きも素敵ですし、収納アルバム数がさほど多くないのであればなかなかに使い勝手が良いアプリだと思います。
Avia Media Playerこの二つのアプリのパフォーマンスの差が何に起因するのか考察してみましょう。
VortexBoxのデータベースソフトLogitec Media Server(以降LMS)はアルバム情報以外にアルバムアート情報をデータベース化する機能を持っているようです。従ってクライアント側のアプリが、アルバムアートのデータベースに直接アクセスする機能があるかどうかでパフォーマンスに大きな差が生じると考えられます。又そのアルバムアート情報をクライアント上のストレージにキャッシュする機能を持っていれば、そのパフォーマンスは最高のものとなります。前回述べたOrangeSqueezeはその機能を持っていますので、圧倒的なパフォーマンスを示すことになるのです。次はVortexBox上のデータをクライアント側のパソコンで取り扱う場合を考えて見ましょう。
取り上げるのは、SONYの音楽管理ソフトMediaGoと、Windows上で動くプレーヤーとしては音質、パフォーマンスに定評のあるfoobar2000です。
双方ともVortexBoxの音楽データのあるフォルダを指定すると、自動的にタグ情報を収集して独自のデータベースを作成します。そしてVortexBoxの状態を常に監視しており変更があれば即座にデータベースの更新を行います。
上記の理由からそのパフォーマンスはサーバー性能には依存しないことがわかります。なによりこれらのソフトはDLNAクライアント機能すら使っていないのです。尚、双方ともパフォーマンス的には十分です。但し私が使っているクライアントマシンはAMDの6コアを使った比較的強力なもので、加えてSSDをキャッシュドライブとして使っていますので、それが良い方向に作用しているのかも知れません。最後にVortexBox内蔵のSqueezeLiteを用いて運用する場合を考えてみましょう。
この場合ネットワーク経由で音楽データを送信しているわけではないので、通常のPCオーディオと同じと考えられます。SqueezeLiteは通常のプレーヤーソフトとは違い操作するためのインターフェイスを持ちません。全てLMSからの指令を受けて陰で動いているのです。従ってVortexBoxで音楽を聴くと言うことは、データベースソフトであるLMSを操作するということになります。
コントロールアプリであるOrangeSqueezeは、単にLMSに再生や検索の指示を出すだけなので、そこに求められる性能はアルバム情報を高速に表示するだけとなります。この一連の動作は全てサーバー内で処理されるためレスポンスが大変良いのです。
またもう一つのアプリSqueezerでは検索結果の表示がなかなか洒落ています。右の例では"requiem"で検索し、アルバムでの検索結果を表示しています。検索時間はわずか数秒です。プレーヤーのSqueezeLiteについては機能面では申し分ありません。現在の水準で求められる基本機能は全て備えており、ハイレゾ音源再生やDSDのネイティブ再生、ギャップレス再生にも対応しています。
肝心の音質についてですが、システム的に不利になる条件が見当たりません。OSはGUIを持たないシンプルなLINUXですし、音源管理からデジタル出力までサーバー内で処理されるため余計な伝送経路を経ないことも音質的には有利に働きます。サーバーマシンのノイズ対策が十分に行われていれば、NAS+ネットワークプレーヤーと比べて良い音で鳴らすこともさほど難しくないかもしれません。★Menuに戻る