「岡山21世紀戦略会議提言」と「グロ−バル水島報告」の批判的検討
1.はじめに
2000年3月岡山県当局は、21世紀の岡山県の展望を指し示す2つの文章を発表しました。
その1つは、岡山21世紀戦略会議(高橋克明座長・岡山県立大学学長)提言「人・モノ・情報が行き交う快適生活県おかやま」の実現をめざして(平成12年3月22日)・・・・以下「21世紀戦略」と略す・・・・という提言書であり、もう1つが中国産業活性化センタ−(多田公煕会長)による倉敷地域振興計画調査報告書(グロ−バル水島の活用調査・平成12年3月)・・・・以下「グロ−バル水島」と略す・・・・です。
私がこの2つの発表を少し検討したところ、その内容は県民生活に極めて犠牲をしいる深刻な内容となっていると評価せざるを得ませんでした。
もちろん、この2つの発表を全面的に私一人で分析できる能力は無いことをあらかじめおことわりするとともに、以下に私の検討内容を提示し、広く各分野のみなさんが検討を開始する端緒となることを願っています。
2.「21世紀戦略」と「グロ−バル水島」の関係について
当初、私は水島コンビナ−トの今後の展望について疑問を持っていたために「グロ−バル水島」の分析検討をおこないました。
その結果、「グロ−バル水島」は水島コンビナ−トの将来展望というよりは、岡山県政が産業構造転換をはかる方針をどの様に推進するのかを示した報告書であることがわかりました。
それで、県全体の21世紀政策との関係抜きに「グロ−バル水島」だけを検討しても不十分きわまりないものとなると考え、「21世紀戦略」とあわせて検討せざるをえなくなったものです。
さて、岡山県は「グロ−バル水島」の位置づけについて「平成9年に産業活性化ビジョンを策定し、このビジョンに定める10項目の1つとしてグロ−バル水島の活用を位置づけています。本調査はこのビジョンに基づき素材生産を中心に先端的な事業展開がおこなわれている水島工業地帯の持つ技術・技能・ノウハウ・人材等の多様で優れた資源を積極的に活用することによって、倉敷地域はもとより、岡山県下全域において、新たな事業展開などを支援することを目的とした方策、仕組みを提案するものであります。」と述べています。
そうした提案の基本となる県の21世紀政策方針が「21世紀戦略」で、その巻頭の提言にあたってでは「変革の時代における岡山県の発展基盤の形成等について・・・・21世紀の岡山県創造の具体的戦略を検討する・・・・」として、この会議を発意して諮問した知事本人が「すべての会議に知事も出席」してまとめられたものであるとされています。
従って、21世紀戦略は知事の県政政策そのものであることは明らかです。
また、私が分析調査を進める過程では、ある関係者より「知事は岡山県が中国地方の雄県になるための方策として岡山情報ハイウェ−での情報産業化による基盤はつくったけれども、モノづくりとその流通拠点整備では、玉島にコンテナ埠頭をつくることで流通拠点形成の基盤としつつも、水島コンビナ−トとの関連はどうするのか、水島コンビナ−トそのものの展望はどうなるのか、産業振興はどうするのかということでグロ−バル水島をまとめることとなった経緯がある」と示唆をいただきました。
また、別の方からは「水島コンビナ−トの今後の展望がじり貧であるがどうするのかということや国際競争力を復活させるためのコンビナ−ト・ルネッサンス等は、それは国が考えることで、それとは県中枢部がかかわることとなり、一般にはなかなか具体的な先の方針は見えてこないこととなる。従って行政を実際に進める立場から水島コンビナ−トを位置づけるならば、県下の中小企業振興を水島の技術とどうにかして結びつけて振興をはかる方法はないのかと考えて対処するということが中心課題となるわけで、中国産業活性化センタ−の報告のうちで、少しでもやれるものから着手することとならざるをえないであろう。しかし県の新規事業費は県全体で来年度10億円程度しかないから実際はほとんどなにもできないのではないか。グロ−バル水島の報告について読むと、水島コンビナ−ト企業からは、ギブ(与える)だけではないかという不満も聞こえるようであるが、コンビナ−トに協力してもらわないと岡山県の製造業などの振興がはかれないことは明らかで、水島サロンはそのための拠点としてもともと位置づけていたのであろう。」というお話しもお聞きしました。
こうした関係に鑑みて、まず「21世紀戦略」を批判的に検討し、その視点で続いて「グロ−バル水島」の批判的検討を進めることとします。
3.「21世紀戦略」の紹介
知事が全ての会議に出席してまとめられた「21世紀戦略」は「提言の背景」「時代認識」「方向」「アクション」の各章から構成されているので、それぞれの章に即して内容を紹介しつつ注目される内容について抜粋してみました。
・「提言の背景」と「時代認識」の章
提言の背景での重要部分は「地域戦略の必要性(今なぜ地域の戦略か)」にあるようです。
そこに表明されている基本哲学の内容は次の3点にあると指摘できます。
「地方分権時代の到来により、国主導でない地方の主体的な取り組みを明らかにする新たな地域戦略の策定が必要かつ不可欠となっている。」
「地域の構成員(県民・企業・各種団体・行政等)の参加によって、新しい地域のあり方を論議し、それぞれの期待される役割を明らかにするとともに、迅速に具体的な行動をとることが求められている。」
「地域戦略を実現するためには、地域間の連携(インタ−ロ−カルネットワ−ク)により首都圏に対抗できる力を養うなど、新たな仕組みを考えることが必要である。
」
以上の哲学と相互に補完しあう「時代認識」の章(なぜそうした考えが導き出されるのかを説明している部分)では、発想の転換が求められる時代として「中央集権・護送船団方式から、地方分権・市場原理重視への移行であり」「経済や社会のシステムは、右肩上がりを前提にしない」「再構築・再生などで代表される『再』の時代の到来」になっているのだと発想転換を宣言し、少子高齢化、国際化、高度情報化、やすらぎと心の豊かさの時代、という時代認識を示唆していますが、その中で特に高度情報化では「インタ−ネットをはじめとするIT革命の進展を県民生活や産業の活性化にどのように生かせるかが今後の地域発展の正否を握ることとなる」と政府の方針と軌道を一つにしています。
・「方向」の章
ここでは、キ−ワ−ドとして「人・モノ・情報が行き交う快適生活県岡山」を結論づけているので、要点を以下に抜粋してみます。
地域戦略のキ−ワ−ドは「競争とやすらぎ」であり、対外的には「地域間競争に打ち勝つ」こと、そして対内的には「やすらぎ」を実現することとしています。
地域戦略のめざす具体的な地域社会の将来像は「人・モノ・カネ・情報・文化」などが岡山を拠点として行き交うこととして、そのための4つの戦略をあげています。
注目すべきはBとCですので、該当部分のみを抜粋します。
@.情報発信力と受診感度の強化戦略
A.21世紀社会に対応できる人材育成戦略
B.活力創造戦略
「 県内の産業構造は転換期を迎えており、今後どのようなものを主産業とするかなど、目指すべき方向性を明らかにする必要がある」として「ベンチャ−への支援・・・・ノウハウの提供や開業を公的資金と民間資金とを活用して支援するシステムをつくるべき」「情報ハイウェイを活用した産業振興や企業誘致を図る」そのために「地域の振興には・・・・地域外から活力を移入することも重要である。
企業誘致に加え、有能な人材やNPOの誘致といった視点を」「企業誘致は将来的に地域に集積させようとしている産業にタ−ゲットを絞って・・・・製造業などの企業誘致だけでなく、ソフト産業(文化・知識・生活関連産業)の誘致を強化」すると方向性を示しています。
C.官民協働(パ−トナ−シップ)戦略
「県(行政)が県民のために何ができるかではなく、県民が県(地域)のために何ができるか」を期待し、行政の果たすべき役割として「創造的かつグロ−バルに活動する民間セクタ−が自由に活動できる土壌づくりやその活動を支える」「不断の行政改革を進める中で県行政が今後行うべきことと行わないことを県民に対して明らかに」し「地方公共団体間の協調・連携や市町村合併など、県民や民間企業の視点に立った広域行政をすすめる」としています。
・「アクション」の章
ここでは上記内容についての具体化が提言されていますので上記と対照されるB・Cの該当部分を抜粋します。
@.情報発信力と受信感度の強化戦略
A.21世紀社会に対応できる人材育成戦略
B.活力創造戦略
「水島地域で、福産物や廃棄物を資源として循環させるシステムの構築やリサイクル産業などの誘致を通じて、環境コンビナ−トの形成をめざす」「玉島ハ−バ−アイランドの整備」について「国際物流拠点をめざし、港湾諸手続の電子化など利用しやすい港とするための機能の充実をはかる。
」と玉島ハ−バ−アイランドのみ具体的名称を明示しての特別扱いをするとともに、水島コンビナ−トを環境コンビナ−トにする方針を示しています。
C.官民協働(パ−トナ−シップ)戦略
これについては「民間と行政の役割分担の明確化」として「民設公借方式等の民間ノウハウの活用」のため「これまで以上に積極的な外部委託をおこない」「効率的で質の高い行政サ−ビスを提供するため、民間資金・ノウハウを活用した社会資本整備等の公共サ−ビスの提供の導入に積極的に取り組む。」としています。
また、NPO先進県をめざした支援として「民間企業・行政と並ぶ第3部門としての役割が期待され、かつ、県民の自主的社会参加の手段としても有効なNPOについては、その自主的な活動を阻害しない範囲において支援をおこなう」とも記しています。
4.「21世紀戦略」検討のまとめ
「21世紀戦略」は、政策ではなくて「戦略」という言葉がおどっている表現に端的にあらわれているように、地方分権時代を「地方自治体の(群雄割拠の)時代」とでも位置づけたのか「首都圏に対抗できる力をつくるために競争に打ち勝つ」という、妄想としか言いようのない考え方を基盤として表明しています。
そして「人・モノ・カネ・情報・文化」などが岡山を拠点として行き交う、という位置づけにみられるとおり、中国地域の拠点となる岡山県づくりの方向性を表明したものです。
県民への「燃えろ岡山」などというかってのわけのわからないスロ−ガンを投げ捨て「県(行政)が県民のために何ができるかではなく、県民が県(地域)のために何ができるか」と全体主義的なイデオロギ−を県民に提示していますが、そのことは「県のために何かできる」そういう県民が県民なのだと、(それができない県民は県民ではないと)差別意識をむきだしにしていると指摘せざるをえません。
そして、それを支えるのはIT革命と物流であり、行政手法としては、競争力のある民間活力の大胆な導入であるとしています。
しかし、なによりこの「21世紀戦略」を読んで奇異に感ずることは、岡山県政の現状評価と分析への認識が全くないままに、「時代認識」なるものと「戦略目標」が宙に浮いて示されることです。
いったい岡山県の行政はどんな姿をしているのか、特徴や優れている点や弱点などを明確に評価してこそ、新しい展望と政策のもとでの具体化がおこなえるのですが、そうしたことは全く省みられていません。
この「21世紀戦略」をまとめた現県知事にとって、リアルな現実は目をむけたくない・目をふさぎたい状況なのかと強い疑問がわいてきます。
それでは私たちはリアルな県政の現実についていくつかの指標で評価してみましょう。
政府の総務庁統計局が本年2月に発行した統計書「統計で見る県の姿」によると、例えば県の人口が全国で21位で財政力指数も21位という点からみるならば、岡山県は全国のなかの平均的な県ということが言えます。
ところが水島コンビナ−トという全国有数の産業基盤をもちながらも、県民所得は全国20位ですから、水島コンビナ−トは県民所得の向上に特別役だっていないということなのか、そうでないならば、県の産業政策などがこれまで水島コンビナ−トにばかり優先されており、一般的な県民の産業振興をはじめとする様々な所得向上政策が全国水準から大きく遅れているということになってしまいます。
県民の健康を守る衛生費は44位、生徒一人当たりの公立中学校費は43位、同じく公立高校費は46位と、県民一人一人の命はそまつなあつかいで、学校教育では子供たちはたいせつにはぐくまれていないということが明らかになります。
こうしたなかで、不登校による中学校長期欠席生徒比率は12位、警察費は6位、交通事故死亡者数2位となっており、ムダな大規模開発などによる借金財政のために毎日1億円を返済せねばならなくなっている現県知事が、現状に目をふさがざるを得ない惨憺たる県政の姿がこれだけの指摘からだけでも浮き彫りとなってきます。
「21世紀戦略」は「外とは競争・内にはやすらぎ」とスロ−ガンを掲げていますが、「首都圏に対抗できる力をつくるために競争に打ち勝つ」というきびしい外との競争の中では、その安らぎや福祉も、元気な人・元気になれる人・県政に役立てる人を対象とすることが「21世紀戦略」に明記されており、社会的弱者については「思いやりや助け合いの風土の醸成が期待される」としているのみであることが特徴として際だっています。
これまでの「住民の生活向上と福祉や教育などの公共サ−ビスを柱とした」地方自治体の役割を変質させ、あらゆる面での競争政策の導入と企業化してしまうことを表明したものが「21世紀戦略」の提言です。
そもそも競争をあおりたてながら、安らぎがあるはずがなく、「受験競争地獄」という言葉にも象徴されるように、競争県政の行き着く先、この「21世紀戦略」の行き着く先は「岡山県政地獄」が待っていることは明らかなので警鐘を乱打せざるをえません。
このような知事の県民に対する政治姿勢と責任は断固として追及する必要があります。
5.「グロ−バル水島」について
それではつづいて「グロ−バル水島」の検討をすすめましょう。
本報告書は「調査の目的」を巻頭にあげ「岡山県及び水島地域の産業の現状」「県内企業の研究・開発ニ−ズと水島地域立地企業の保有技術」「技術・ノウハウの活用等先進事例」「『グロ−バル水島の活用』の基本方向」「公的機関による産業支援体制」「『グロ−バル水島の活用』の基本方策」「重点プロジェクト」「実現にむけて」と章立てがされている。
さきに検討した「21世紀戦略」とは異なり、極めて論理的な章立てがされたオ−ソドックスな報告書である。
しかし「『グロ−バル水島の活用』の基本方向」の章以降については、繰り返し同一内容が述べられている部分もかなりを占めるので、できるだけ重複をさけて本報告書を検討してみましょう。
さて、この調査の目的については「素材生産を中心に先端的な事業展開が行われている水島臨海工業地帯の持つ技術・ノウハウ・人材等の多様で優れた資源を積極的に活用することによって、倉敷地域はもとより、岡山県下全域において、新たな事業展開などを支援することを目的とした方策、仕組みを提案する」とされており、具体的には次の3点について方策を確立することとしています。
@技術活用で県内企業の新製品開発を促進する。
A水島サロンを活用して企業間の交流と技術者の交流を促進する。
B水島等のOB人材の活用システムの検討。
こうした産業振興をIT産業を柱に推進することとしていますので、「21世紀戦略」がIT産業による競争力をつけて他に打ち勝つとしている位置づけからして、今後の岡山県政の産業政策の中心となるのが本報告書と理解してよいと考えられます。
6.岡山県及び水島地域の産業の現状について
ではなぜ本報告書の様な検討が必要となったのでしょうか。
報告書には、このままでは岡山県の産業が衰退する一方になりかねない深刻な実態が、現状評価として分析されていました。
その要点をまとめると次のとおりです。
岡山県の産業構造から言えることは、県民所得は水島地区をはじめとする県内製造業の製品の移輸出により、支えられていることである。
ところが県内の製造業の就業者は昭和50年から平成7年にかけての20年間で、水島地区では4679人減少し、しかも岡山県全体のの有効求人倍率よりも水島地域のの倍率が低く、これは求人者数より求職者数が多ということで、水島地域には職が無く労働者が働けない状態であること。
さらに、ここ12年間は岡山県下では開業率を廃業率が上回り、会社や商店などの事業所が減少するために経済の活力低下が懸念される状態であること。
事業所数は昭和58年の7435がピ−クで、平成3年以降急速に減少を続けています。
全国との比較では、岡山は基礎素材型産業(50.3%)の割合が特に高く、加工組立型や生活関連型の割合が低いこと。(水島コンビナ−トの石油製品・石炭製品と鉄鋼が生み出す付加価値割合が突出している。
)
研究開発で見た場合は、特許件数で広島・山口の次で第3位、研究所は広島の次、新分野進出も広島の次となり、中国五県でも二番手三番手でしかないこと。
水島コンビナ−トの県内の生産活動に及ぼす波及効果は、装置型産業(石油化学関係)では効果少ないが、自動車・造船・鉄鋼ではすそのが広く、平成9年でコンビナ−ト2兆9539億円と波及しての金額が1兆3226億円となり、合計4兆3千万円近い生産額となると想定計算をしています。
ところがこうした岡山県民所得に大きな影響与えてきた水島コンビナ−トに最近は深刻な不況や資源産出国での安価なコストでの製品化による国際競争力低下の影響などが広がりつつあります。
コンビナ−トをめぐる全国的な経済環境は次のとおりです。
石油精製は、平成9年をピ−クに減少し、国内主要6社は2000年までに7千人強のリストラ計画があること。
鉄鋼業は、平成9年より粗鋼生産量減少し、各社ともリストラが図られている。
化学工業は、エチレン生産が平成10年度より減少、産業再編成が進展。
自動車製造業は、平成9年度より生産台数減少、リストラや系列との関係見直し。
このため、コンビナ−ト・ルネッサンスによって、水島コンビナ−トでは石油化学主要4社間に海底トンネルやパイプライン新設(総額60〜80億円)をおこない、生産統合と整理で欧米やアジア地域に比べて劣っている水島コンビナ−トの競争力を強化せねばならなくなっています。
現に、鹿島コンビナ−トは平成4年から平成9年にかけて、事業所数・従業者数・製造品出荷額等・粗付加価値額のすべての項目で増加しているのに比べて、水島コンビナ−トは全ての項目で減少であり、粗付加価値額ではなんと27.5%もの減少を示し、平成9年の製造品出荷額では鹿島コンビナ−トが約1兆9千6百万円で約1兆円少ないもかかわらず粗付加価値額はほぼ同額の約8千億円ということで、水島コンビナ−トの生産コストが鹿島コンビナ−トの約1.5倍となり、生産性でも鹿島コンビナ−トにさえも対抗できない現実が、統計で示されています。
以上の現状を概括して、報告書は「今後は、水島及び周辺に産業やビジネスの集積を極力多様化させていくことが重要である」としています。
つまり、コンビナ−トの先行きが不安定不透明となってきている現在、産業政策を水島コンビナ−ト優先から多様な産業育成に切り換えることが重要だと分析しているわけです。
7.多様な産業育成ができるのか調査(立地・開発などの技術ニ−ズとシ−ズ)
多様な産業育成を政策として掲げても、IT産業分野を先頭に日進月歩で産業構造自体も変化発展していますから、こうした発展に対応して多様な産業を育成するためには、立地・開発・拡張をささえる進んだ技術があって、その技術を必要とする産業があって、さらに技術を提供する能動性があって、そうして産業発展に結実するわけです。
従ってこうした技術に対するニ−ズ(需要)とシ−ズ(供給)が成り立つのかどうかという調査が必要となり、調査がされました。
アンケ−ト調査期間は1999年7月29日より約1ケ月間です。
県下1000社の中小企業に、水島コンビナ−ト企業のもっている技術に対するニ−ズアンケ−トをおこない、有効回答率21.5%と報告されています。
そして、水島コンビナ−ト企業との連携希望は7〜8社であること、一般的な人材・従業員の受け入れ希望ある中小企業は60社程度あっても、水島コンビナ−ト企業を対象とするとやはり7社程度となり、要求する技術の人材や給与などの労働条件が合わないこと、特許等の技術利用希望などは7〜8社であることが指摘されています。
これは実に絶望的ともいえるようなコンビナ−ト企業と県下中小企業との関係を浮き彫りにする数字です。
こうした公的なアンケ−トでの回答率21.5%と大変低い値であることが、まず県下の中小企業が水島コンビナ−トに期待していないことを明示する結果です。
その実態は、回答してきた215社のうちでさえもコンビナ−ト企業との連携希望は7〜8社、あるいは特許等の技術利用希望も7〜8社という数字に明確に示されていて、県下の中小企業でコンビナ−ト企業に期待しているところはほとんど無いに等しく、技術者などの受け入れも不可能に近いということです。
つまりニ−ズ(需要)が皆無に近いということです。
ではコンビナ−ト企業シ−ズ(供給)調査はどうでしょうか。
調査はコンビナ−トの65事業所におこなわれ36の有効回答(有効回答率55.4%)となっています。
ひきつづき主要11社についてはヒヤリング調査もおこなわれました。
アンケ−トでは、83.9%の事業所はなんらかの形態での技術交流を希望している結果でしたが、岡山県下の企業との交流になると13.9%と希望が大幅に減少します。
県内中小企業との交流は、「時間的制約なく」「自社が希望するタイプ」という条件でおこなわれており実際おこなわれている異業種交流会、共同研究などへの参加企業は少数であると書かれて、数字は示されていません。
20%の事業所が管理職・事務職・技術者などの出向や再就職などの送り出しを希望しています。
技術供与についての調査では、他社へは供与しない・特定以外には供与しないとする事業所が56%となり、県内企業との連携ではわずかに5.6%の事業所が「保有している未利用特許・実用新案を活用希望企業へ供与(有償)したい」とする結果でした。
こうした数字から、水島コンビナ−ト企業は県下の中小企業は相手にしていないという実態が浮き彫りとなります。
ニ−ズ・シ−ズ調査では、県下中小企業と水島コンビナ−ト企業は、双方ともに背をむけあっている現状だと判断できる結果となっています。
これでは、多様な産業育成を行政が考えても、直ちにそれが前進する環境は全くないことになってしまいます。
このため、どこかに先進的に地域産業活性化に成功している例や教訓はないのかと全国調査をおこない13例の活性化手法を分析していますが、コンビナ−ト地域での参考として川崎コンビナ−トでの臨海工場地帯の再編整備、研究開発拠点機能付加、ゼロ・エミッション工業団地創出などの取り組みに注目しています。
8.地域産業活性化にむけての方策
これまでの調査にもとづき再度現状評価とそれによる活性化の課題整理がおこなわれていますが、ここに突然「環境問題への対応」という項目が登場し、産業廃棄物処分問題がとりあげられています。
現状評価によると、県下では平成7年頃より一層の開業率低下で歯止めがかかっていないこと、新分野に進出した企業の割合は全国平均に比べて小さくなっていると指摘しています。
水島地域製造業では従業者数の減少で昭和47年の39795人をピ−クに平成9年に は25628人となり14267人も減少しており、国際競争の激化にともなう省力化とリストラが原因であるとしています。
そして現状では一層の従業員の減少が見込まれ、雇用の場をつくりだすことが水島コンビナ−トの企業から望まれているとしています。
交流ふれあいの場としての水島サロンは、研究者・技術者の交流の場としての利用はほとんどみられないので仕掛け作りを行っていく必要があるとしています。
これまでの調査目的や経緯に関係なく突然登場した産業廃棄物処分問題では「水島コンビナ−トは年30万トンの産業廃棄物が排出」されているけれども、「岡山県の埋め立て処分場が数年後には満杯となる」ので、「これを処理するには大規模な設備投資が必要」なので「産業廃棄物処理は地域全体の連携」で処理方法を確立することが重要であるとしています。
県内製造業とコンビナ−ト企業間のニ−ズとシ−ズとしての分析評価されていますが、アンケ−ト等で示された深刻な事態についての論究はなく「岡山県及び水島地域製造業の活性化を図っていくには、積極的な取り組みのみられる企業、元気な企業を伸ばし強化していく必要がある」という観点から、交流・人材受け入れ・相談指導体制・情報提供・研究や共同開発・産業廃棄物処理での前進の可能性をとりあげています。
特に「水島地域の産業廃棄物処理は、水島工業地帯全体の問題であることから、早急にプランづくりに着手していくことが望まれる」と強調しています。
9.具体化について
活性化の基本方向として「現状の岡山県内企業と水島地域製造業との取引は、製品・商品等の販売、材料・部品等の仕入れなどの物の取引ではある程度みられるが、各種サ−ビスの取引はあまりみられず、技術の供与・導入はごく少数」で「水島地域の企業と岡山県内企業は互い互いをほとんど知らないのが実状であり、互いを理解し合う場づくりからスタ−トする必要があ」り「まず互いの顔がみえるようにする段階からのサポ−トが必要」という認識で基本方向を示しています。
基本目標は「新規創業・新分野進出の盛んな地域を形成するために、水島地域の技術・ 人材等を有効に活用するシステムを構築すること。」として次の3基本方向を提示してあります。
@水島地域での多角的な交流・連携の推進
A水島地域の優れた技術・人材情報の顕在化
B水島を含む岡山県内の情報発信と起業家風土の形成
ということで「互いの顔がみえるようにすること、出会いの場をつくっていくこと・・・・起業者のサポ−トを行っていくことが肝要」としています。
10.公的機関による支援体制づくり
先に見た基本方向を実現するための具体化は、公的な支援体制を柱にしないと、自然的には前進できないと判断し、企業間連携の強化を県がどのように主導するのか、その方策手段はなになのか、おこなうべき事業はなになのかと記述していますので、それらについて一括して整理して以下に特徴を抽出してみます。
@公共主導で水島サロンに産業支援機関(グロ−バル水島推進機構)を設置します。
A水島地域の企業に企画・運営に積極的に参加してもらう、産・学・官・住民で水島サロン活用委員会を設置します。
B新技術コ−ディネ−タ−の配置等により特許・技術移転等の橋渡しをします。
C水島臨海工業地帯21世紀協議会を設置します。
「産・学・官からなる水島臨海工業地帯の発展方向の検討協議会を岡山県主導で倉敷市などとともに設置し地域の共通課題への対応、今後の地域発展戦略等について検討し、地域の計画等にもりこんで・・・水島サロンを利用して同協議会を定期的に開催し、水島工業地帯の一層の発展を図っていく。」
検討課題は「水島臨海工業地帯のビジョンの作成」であり、水島地域のリサイクル・廃棄物処理拠点化・ゼロエミッション工業団地の整備、太陽熱発電、風力発電などによるエネルギ−フリ−の団地整備、FAZを利用した加工組立型製造業への展開、地域内交通網、広域交通網の整備、教育施設、職業訓練施設等の生活環境整備、地域の自然環境保護・緑化などが考えられる、としています。
そして、重点プロジェクトとして、「交流・連携・資源の活用等を積極的にプロモ−トしていく機構」として「グロ−バル水島推進機構(仮称)」を設置して次の3点を推進するとしています。
@交流・連携機能を推進する事業として「BESTリンク水島(仮称)」の推進。
A技術・人材の移転を推進する事業として「テクノトランスファ−水島(仮称)」の推 進。
B創業支援を推進する事業として「インキュベ−ト・フロント水島(仮称)」の推進
そして、グロ−バル水島の体制と年間事業費は次の様に想定されています。
人的体制 常勤4名+非常勤3名(+1?)+(事務?)とし、所長とコ−ディネ−タ−はコンビナ−ト企業から迎える。
年間経費 4310万円(2860万円が人件費)を想定。
設置場所 水島サロン。
こうした全体像は別紙イメ−ジイラスト参照していただけばよいのですが、「インキュベ−ト・フロント水島(仮称)」の事業のなかになんと「水島地域に大規模な産業廃棄物処理施設を共同で整備したい」「水島臨海工業地帯21世紀協議会(仮称)で検討し、実現に向けて努力していくこととする。」と「今後の水島地域や岡山県の発展を考える上で重要なテ−マ」として産業廃棄物処理施設の実現が事業として明記されていることは特に注目せざるをえません。
そして最後に「実現に向けて」と章をおこし、今後の課題として「産・学・官の共通認識の確立と実現に向けての詳細な検討」として「岡山県と倉敷市が、水島地域の特許・技術・人材等を有効に活用するシステムの構築について十分な協議を重ね、水島臨海工業地帯21世紀協議会(仮称)の設置とそこでの討議を通じて、産・学・官の共通認識の確立を図り・・・・実現可能なものから早急に実施していくことが望ましい」とし「水島地域の企業の積極的な参加と関係機関の協力体制の確立」「公的機関等の利用料金についての意識啓発」「各種交流・研究団体のネットワ−ク形成」をすすめ「岡山県内の中小企業では、製品価格の低下が続く中で、これまでの大手企業からの受注が減少し、新たな事業の柱を構築していくことが喫緊の課題となっている・・・・本調査の提案が生かされ、企業間連携等が活発化し、水島地域の技術・人材等の資源と、岡山県内の各種資源を有効活用して、新しい産業が簇生してくることを期待したい。」と締めくくっています。
11.まとめ(「グロ−バル水島」批判と「21世紀戦略」の危険性)
本報告をよむと、県当局の危機意識がかなり鮮明に記述されています。
その展開は、おおむね次のとおりです。
岡山県下製造業の長期低落傾向に歯止めがかかっていない。
岡山県下中小企業の先の見通しでは、経済活力低下はさけられない。
創業や新技術活用でも広島県に遅れをとっている。
国内の鹿島コンビナ−トとでさえもコストで勝負にならない。
コンビナ−ト・ルネッサンスを推進したとしても、水島コンビナ−トは今後ともリス トラや生産低下がさけられない。
このままでは、水島コンビナ−トに依存してきた岡山県は、活力を失って沈んでしま う・・・・・・どうしよう。
すぐにでも、水島コンビナ−トの技術を岡山の中小企業に供与してもらい、製造業の 展望をつくるしか方法がみつからない。
しかし、これまで水島コンビナ−トと県内中小企業の交流はなかったし、相互間で展望を つくろうとする意欲もない。
しかたないから「官」主導で強引にでも、コンビナ−ト企業の技術と県内製造業とを 結びつけないと展望がでない。
その際、ギブ一方となる水島コンビナ−ト企業の要求である、リストラ人材の雇用の 受け皿つくりと、産業廃棄物処理は受け入れざるをえない。
水島サロンにこうした方策の推進組織(グロ−バル水島)を設置する。
という筋書きです。
自動車や一部鉄鋼産業は別として、もともと水島コンビナ−ト企業と地元中小企業とは法則的な共通利益による発展がこれまで生まれてきていませんし、県の産業振興政策は水島コンビナ−ト優先・依存でおこなってきたために県下の製造業関係が活力低下をきたしてしまっているなかで、深刻な反省にたって率直に中小企業の要求に応える対話を県がおこなうこともなく、この様な方策をとることはかなり無理があり、「官」がどれだけ必死になっても県下中小企業の「民」が背を向けている現実からして、成功させることはなかなか困難な課題と思われます。
しかし県知事は「21世紀戦略」で「競争に打ち勝つ」と宣言して「県のために県民の役割を果たせ」つまり「水島コンビナ−トの保有する技術を活用して、中小企業は産業活力をつけて業績を向上させよ、広島県に負けるな」と叱咤していることとの関係から考えるならば、県知事はたとえ強引であろうとも他に方策がない以上、推進してゆく覚悟と想定できます。
最後にこの報告で奇異に感じて検討したところ、危険な本質が現れていると指摘し糾弾せねばならない内容がありますのでみなさんに報告します。
それは、全体的には「行政」という言葉が記述では選択されているのに、突然「官」という言葉が使われる部分があることから判断しました。
先に取り上げた「21世紀戦略」では方向を示した章に「官民協働」をパ−トナ−シップと表現していますが、封建的な統制意識・お上意識の「官」という言葉とパ−トナ−シップとは元々次元が異なっており、粗暴としか言いようがありませんが、しかしパ−トナ−シップとは口先だけで「官民」の関係で「21世紀戦略」を推進すると表明しているわけです。
「グロ−バル水島」では「産・学・官からなる」と記述される部分は全て「水島臨海工業地帯21世紀協議会(仮称)」にかかわる部分で、つまりコンビナ−トの産業廃棄物処理をどうするのかということで「21世紀協議会」が必要となるとしつつ、実際上は「グロ−バル水島」の計画全体の推進を、水島コンビナ−トの主要企業と県・市で構成す「21世紀協議会」にゆだねる形となっている本計画の核心となる組織とその目的についての記述部分です。
本調査報告書の当初の目的は「水島工業地帯の持つ技術・技能・ノウハウ・人材等の多様で優れた資源を積極的に活用することによって、倉敷地域はもとより、岡山県下全域において、新たな事業展開などを支援することを目的とした方策、仕組みを提案する」ということであって「水島コンビナ−トの産業廃棄物処理をどうするのか」ということは、本調査活動のなかで、コンビナ−ト側からたまたま持ち出された要求であって、当初目的とは次元の異なる内容です。
ところが、その産業廃棄物処理要求に対応する記述が突然報告書のなかに登場して、最後には「21世紀協議会」となって、その部分だけが「産・学・官」などと「官」という表現が使われています。
ここからは、一生懸命当初目的の調査をおこない報告書をまとめる作業をおこなっていた集団の意見を無視して、上層部から「産・学・官」の発想でコンビナ−トの産業廃棄物処理と「21世紀協議会」の方針が本報告書に注入された様子をうかがうことができます。
この記述に対応して、はじめにとりあげた「21世紀戦略」では水島コンビナ−トを環境コンビナ−トにつくりかえることを明記していますので県知事自らがこうした方針であることがわかります。
「官」は、 県政を「21世紀戦略」方針で推進し、水島コンビナ−トの産業廃棄物処理などの要求を「21世紀協議会」方針で実現していこうとする「意志」をはっきりと示しています。
県政を、民主主義を踏みにじってなんら省みない「官」による統制ですすめるならば、県民には犠牲のみがかぶせられ、県民の活力や意欲は失われ、暗い岡山県となることは明らかです。
全県民が県行政の民主的転換をはかるために、今こそ決起すべき時と強く訴えて、私の分析報告とします。
2000/09/13
補足
2000年9月27日と28日にマレ−シアを訪問して、勉強する機会があった。
そこで、たまたま岡山県知事が約2月前にマレ−シアを訪れ、サイバ−ジャヤを視察したことを知りました。
マレ−シアはアジアでは日本につづいて社会環境や産業インフラが充実し、経済力が急伸長して世界的にも注目される国となっていますが、1996年より国家計画でマルチメディア・ス−パ−・コリド−という、世界でも最先端のマルチメデア環境をもつ地域開発をクアラルンプ−ル国際空港の隣接地域で推進しています。
ここには現在、プトラジャヤという国家政府機関を移転した新行政都市と、サイバ−ジャヤという世界でも最先端のIT環境が整備された地域が開発されており、1999年にはマルチメディア大学が開設され、既に4千人の学生が学んでいました。(大学も見学しましたが、学生の姿がみえずさみしいので尋ねたところ、ただ今授業時間中とのことで、こちらの学生はよく勉強して、講義をサボルなどということは考えられないそうです。よく勉強するのはりっぱですが、なんか小学校みたいだな・・・・とも思いました。蛇足です。)
日本のNTT情報処理研究センタ−もおかれ、Windowsのマイクロソフトやサンマイクロシステムズなどの情報システムにおける世界先端企業の研究所が50社ほど誘致され、コンピュ−タ−マルチメデア技術における世界の第2の開発拠点になろうとしている、世界的に注目される地域開発が進展しています。
サイバ−ジャヤに進出するマルチメディア研究企業には、マレ−シア政府によって次の10の優遇政策が保証されています。
1.世界一流の設備・情報通信インフラの提供
2.知的労働者雇用の無制限化(外国人雇用の自由化と大学からの人材供給体制の保障)
3.100%外資による会社保有の認可
4.資金および投資資本の海外調達への自由化
5.法人所得税の最大10年間の免除または投資税額控除とマルチメディア関連機器の輸入関税免除
6.知的所有権の保護とサイバ−法による法体系の先進的整備
7.インタ−ネットの検閲をおこなわない
8.世界的にみて安い通信料金
9.インフラ整備入札参加権
10.マルチメディア開発公社による企業要求への一括対処
こうした優遇政策により、ヨ−ロッパ45社・アメリカ26社・シンガポ−ル16社・日本11社などのマルチメディア先端企業がすでに進出を契約しています。
こうした世界最先端研究企業での成果と技術転移やマレ−シア人によるベンチャ−技術開発支援で、2010年には少なくともアジア最新最大のマルチメディア技術開発都市(ひいてはマルチメディア先進国家)をつくろうとする計画が、着々と進められ、高速道路網はほぼ完成し、住宅など居住地の整備がすすめられ、鉄道路線工事が着手されていました。
こうした現状を視察した岡山県知事は何を教訓にできたのでしょうか。
岡山県はたしかに全国に先駆けて県自身が先進的通信インフラ(IT)を整備し情報ハイウェ−として県下の希望者に公開しました。
しかし、県はこれまで水島コンビナ−トを優遇し依拠するのみで、中小企業やベンチャ−を育成する政策はおそまつでした。
このため、せっかくの通信インフラがその利用による新たな知的価値の生産やベンチヤ−企業の誕生に十分な成果を上げられず、宝の持ち腐れ状態となっています。
マレ−シアは世界の先端技術研究所を集めて、新知識技術と別の新知識技術がより新しい知識技術を自ら積極的に生産できるように特別の環境をサイバ−ジャヤにつくりだしていますが、岡山県の「グロ−バル水島」政策とサイバ−ジヤヤ政策とは本質的に別のものです。
「グロ−バル水島」政策は、水島コンビナ−ト大企業の技術を、これまでの経過からコンビナ−ト企業と肌別れとなってしまっている地元中小企業に、なんとかして利用させてもらおうという姑息な方針で、これでは技術が技術をよぶという発展運動は発生しません。
急がばまわれと昔からいわれるように、きちんと県下の中小企業やベンチヤ−を支援する政策をおこない、その積み重ねの成果として知的技術を保有する企業が県下に育っていくなかでしか、整備されたITが生かされる道はありません。
はたして、知事はマレ−シアで華やかな地域開発の表面だけにとどまらずに、本質的なIT関連産業の成長法則とその条件をきちんと理解できたのでしょうか。
2000/10/04
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