■ 恋紅茶 ■


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はいつも、土曜の午後を心待ちにしている。



決まった日、決まった時間に、はスネイプの研究室を訪れる。

それは、スネイプが、を迎える為に用意した時間で、

彼もまた、が来るのを楽しみにして居る様だった。



他人と深く関わる事を嫌い、増して生徒と必要以上に親しく付き合うなど願い下げだ、

といった風情のスネイプだが、どういう訳か、が側に居る事は拒まなかった。



二人で過ごすその時間には、特別に何をするという事もなく、

読んだ本の内容について議論したり、が授業で理解出来なかった箇所を質問したり、

他愛の無い日常の事 ―― これは専らスネイプが聞き役に回る ―― を話したり、

そんな風にして1〜2時間がすぐに経ってしまうのだった。



それが、スネイプにとって、暇潰しとか遊びとか、そういうものではないという事が、

にはとても嬉しかった。

他の誰でもなく、の為に、スネイプが時間を作ってくれている事が、嬉しかった。



は、スネイプが好きだったから。



けれど、それをはっきりと伝える事はしなかった。出来なかった。

言ってしまったら、間違いなく、先生は私から離れて行ってしまう、と、

誰よりも、が一番良く判っていた。




ある時、さり気なく、けれど精一杯の勇気を振り絞って、訊いた事がある。


「 先生は、奥さまとか、恋人とか・・・いらっしゃるんですか? 」


すると、スネイプは眉間に皺を寄せて言った。


「 何故、その様な下らぬ事を訊く、 」


その表情が、余りにも不機嫌だったので、は慌てて撤回した。


「 いえ・・・っ、ちょっと、フッと気になっただけで・・・すみません、余計な事を言いました・・・ 」


「 ・・・・そういった物は、我輩には無縁の話だ。 」


「 ・・・え? 」


「 誰かを愛したり、愛されたり、必要としたり、されたり・・・もう、その様な事をする気は無いし、

 その資格も、我輩には無い。それは死ぬまで・・・死んでも、変わる事は無い。 」




スネイプのその言葉は、の胸に深く刺さった。

一体、何がこんなにも彼を苛んで居るのか、何故、こんなにも苦しい顔を彼にさせるのか・・・

には、何も言えなかった。どうする事も、出来なかった。




勿論スネイプが、の気持ちを知らない筈は無いのだ。

他人と深く関わるのを嫌って居ながら、

相手の心理思考を読み取る事にかけて、彼は頗る敏感なのだから。



そして、スネイプ自身も、を憎からず思っていた。

間違いなく、をとても大切に想っていた。



しかしスネイプは、それをに告げるつもりなど毛頭無い。


の方から告わない限り、現在の関係が動く事は永久に有り得ないのだ。



けれど、が想いを伝える事は、絶対に無いだろう。

スネイプはそれを ―― 分かり過ぎる程に ―― 分かっていた。

それだからこそ、彼女が側に居る事を許したのだ。



そしても、スネイプのそういった ―― 一見理解に苦しむ様な ―― 思考を、良く解っていた。

そうと知りながら側に居る事は、にとって、とてつもなく苦しかった。

自分に出来る事など何一つ無いのだ、と知っているから、涙が出る程、切なかった。哀しかった。



それでもは、全てを抱えて、スネイプの側に居ようと決めた。

スネイプの側に、居たかった。



そしてそれは、がこの学校を卒業したら終わるのだ。

卒業してからも会いたいなどと、スネイプが望む筈は無いのだから。

それが幸せだとか、不幸せだとか、そういう事は問題では無く、彼は、“ 望まない ” ―――







「 先生、この紅茶、美味しいですね。 」


「 ・・・次から、お前が淹れろ。 」


「 ・・・・・え、 」


「 何だ、紅茶の淹れ方も知らぬのか? 」


「 し、知ってますよ!これでも結構上手いんですよ?私。 」


「 ほう・・・それは、楽しみだ・・・。 」







はまた、土曜の午後を待つ。

朝を迎える度、カレンダーに印を付ける。


一人、静かに、紅茶を飲みながら。







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