■ 側で... ■


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夕暮れの、教室。


今、我輩のこの胸を締めつけるのは、一人の少女の笑顔 ―――




名前を呼ぶと、彼女はゆっくりと振り向く。


夕日に照らされたその横顔は、寂しげで。

それなのに、優しく・・・・涙が出そうな程、優しく、微笑う。



彼女は・・・は、我輩にとって、誰よりも愛しい、誰よりも大切な者。

傷付けたくないと、この手で守りたいと、生まれて初めて本気で願った。



けれど、今まさに目の前で傷付いているに、何もしてやる事が出来ない。


微笑んで、優しい言葉をかけて・・・・


それが出来ない自分が、もどかしい。

情けない。




「 ・・・・何を、している・・・? 」


「 ・・・・雲が・・・ 」


「 雲・・・? 」


「 はい・・・オレンジ色で、綺麗だなぁ、と思って・・・見てたんです。 」




そのような寂しそうな顔で、微笑わないでくれ。


の心を縛るのは・・・彼女にそんな顔をさせるのは・・・・

我輩ではない、別の男。


けれど、それをも承知で、彼女の側に居ようと決めた。


なのに結局、どうすることも、出来ないままで ―――




「 先生・・・・・? 」



がそっと、我輩に触れる。

彼女の白い指先が、堪らなくいとおしくて、



その手を取って、抱き寄せた。




「 ・・・・っ・・・ 」



声にならない、想いが溢れる。

強く、強く、抱き締める程に伝わってくる、彼女の体温。

胸の鼓動が、響き渡る。


微かに、彼女の腕の感触を背中に感じて、安堵する。





そして、腕の中で、小さくすすり泣く声が聞こえた。



ならば、その声の止むまで、こうしていよう ―――





いつか、彼女の本当の笑顔を見たいなどと、

それはただの、我輩の我が侭でしかないけれど・・・・。

それでも、そう願わずにはいられない。





悲しいのなら、ここで泣けばいい。


寂しいのなら、この手を取ればいい。


抱き締めることの他には、何も出来ないけれど。


いつでも、見守っているから。



その悲しみが消えるまで、いつまでも側で、見守り続けるから ―――






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