■ 或る夜に... ■


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静かな、静かな、夜。


室内を照らすランプの灯かりは、何処までも優しく、暖かい。




  ―― 先生、私の事、好きですか? ――




私の目の前で仕事をして居る先生に、何の脈絡も無く、訊いた。


先生は、ペンを動かす手を止めて、私の顔を見る。

部屋を包んで居た無音の時間が、途切れる。


先生は、眉間に皺を寄せて、少し困った様な顔で、軽く溜息を吐いた。



「 ・・・・何故、突然その様な事を訊く・・・。 」


「 答えて下さい。 」


「 言わせて、どうすると・・・ 」


「 聞きたいんです。先生の口から。 」


「 ・・・・・ 」


「 ・・・嫌ですか・・・? 」


「 ・・・・・・・ 」


「 ・・・・分かりました。いいです、嫌なら・・・ 」


「 好きだ。 」


「 ! 」


「 我輩は、を好きだ。・・・・・・・・満足か? 」


「 ・・・・はい・・・ 」



私は、何だか可笑しくて、笑いながら返事をした。

先生も、半分呆れた様な顔をしながら、でも、微笑ってくれた。



そんな事は、訊く前から分かって居る。

先生が、ちゃんと「 好きだ 」と言ってくれる事くらい、私が1番良く分かって居る。



分かって居るのに ―― いや、分かって居るからこそ、そうやって訊いて、先生を困らせてみる。   

私は、狡い。



でも、確かめたいのだ。

そうやって、先生が私の為に困ってくれる事が、嬉しくて仕方無いから。

嬉しくて、どうしようもなく幸せな気持ちになるから。



だけど、何時か、終わる時が来るのだろうか。

この居心地の良い部屋に、二度と入れなくなる時が、来るのだろうか・・・。



そう思ったら、怖かった。

物凄く、物凄く、怖かった。

そしてそれは、先生に訊くことは、出来なかった。






部屋に、静寂が戻った。

静かな、けれど暖かい時間が、また、流れ始めた。







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