クリスマスが近づいた、ある朝のこと。
目が覚めると、窓の外は一面の雪景色だった。
寒い寒い12月の終わり。
――あの人は、今でも一人で、あの部屋で、朝を迎えているのだろうか――
この季節になるといつも、思い出すのは3年前のクリスマス。
ホグワーツで過ごした、最後のクリスマス。
いつもの通り、先生の部屋で。
いつもの通り、先生の淹れてくれた紅茶を飲みながら。
ただ、いつもと違ったのは、
わたしがそこに居たのは、その日が最後だったということ。
「先生、もう、終わりにしよう・・・?」
「・・・・お前がそうしたいのなら、好きにしたらいい。」
「・・・・・止めないの・・・?」
「お前がそう決めたことを、止める権利は、我輩には、ない。」
「・・・・・じゃあ、もう、来ないから。」
「・・・・そうか。」
不安だった。
先生がわたしを愛してくれてるのかどうか。
――わたしが手を離したら、きっと終わる――
そして、その通りになった。
それから卒業まで、授業以外で言葉を交わすことはなかった。
今なら、解る。
先生がわたしを想ってくれていたこと。
だけどあの時は解らなかった。
あの時、わたしは生徒で、先生は教師で。
「終わりにしたい」と言ったわたしを、抱きしめて、引き留めるには先生は大人すぎて、
そんな先生の気持ちを理解するには、わたしは子どもすぎた。
今なら、解るのに。
愛してくれていたかどうかなんて、
あの時の、先生のかおを見れば、すぐに解ったはずなのに。
******
確か、あの日も雪が降っていた。
雪の積もった、寒い、クリスマスだった。
――彼女は今、どんな朝を、迎えているのだろうか――
3年前、離れていった一人の生徒。
そう・・・・“生徒”だった。
側に居る間も、心のどこかで予想はしていた。
いつか離れていくのではないか、と。
それは彼女を信じていなかった訳ではなく、
ただ、逃げていたのだ。
予想していれば、傷も浅くて済むと。
そして、その時はやってきた。
「・・・・好きにしたらいい」
なんという、残酷なことを言ったのだろう。
残酷で、心にもないことを。
今なら、解る。
彼女が望んでいたのは、
そのような言葉ではなかったと。
いや、あの時も解っていた。
彼女がどのような思いで「終わりにしたい」と言ったのかも、
どのような答えを望んでいたのかも。
ただ、恐かったのだ。
抱きしめてしまったら、二度と離せなくなる。
もし本当に終わりが来た時、耐えられなくなる。
ならばいっそ、
今、この時、離れてしまった方がいい・・・・・。
何という、身勝手であろう。
その身勝手で、どれ程、彼女を傷付けたことであろう。
あの時の、彼女の顔が、今でも心から離れることは、ない。
もしも今、もう一度会えたとしたら、
そうして、もしもまだ、お互いの気持ちが変わっていなかったとしたら、
今度はもっと、上手に愛することができるだろうか。
傷付けることなく、愛することが、できるだろうか
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