エール
水をかくような仕草
ゆっくりとした

しかし力強く流れる姿に、私の目は奪われたまま。

あの人は、投げる。
あの人は、立ち向かう。

目前の敵に
その先の未来に

彼の泳ぐ水槽は、夜ごとカクテルライトに照らされて
乱反射する管楽器や、大旗や、
歓声の波は渦巻きながら あの人を飲み込んでゆく。

どうか、
彼の指先から放たれた、夢へと続く塊が、
どうか弾かれませんようにと、私は声を枯らして叫ぶ。

目前の敵に
その先の未来に

どうかあの人が勝ちますようにと
張り上げた声は、溶けてゆくだろう。

そして、
呼吸するたびに、貴方の肺に入ってけばいい。

だから私は、叫び続ける。
遠い遠い、背中へと向けて。