へたうま見聞録:「赤影とともに行け!」      
      その3:「赤影とともに行け!」
     


 それは、ほんの偶然から始まった。たまたま立ち寄った本屋で、新刊コーナーに1冊だけ残っていた本を手にとっていた。「東映特撮大全」。「仮面の忍者・赤影」「キャプテンウルトラ」「ジャイアントロボ」と、子供の頃に親しんだテレビ番組に関する本だ。その中でも、「仮面の忍者・赤影」は特に大好きだった。

 「仮面の忍者・赤影」は、昭和43年に製作され一年間放映された。織田信長、豊臣秀吉らが活躍する戦国時代が舞台で、飛騨忍者の赤影・白影・青影の3人が活躍する特撮時代劇。奇想天外なストーリーとぶっとんだ設定で有名な作品で、赤影たちは忍術で怪忍者や怪獣と闘い、日本の平和を守る。

 この本では、「赤影」のたくさんの写真や、ちょっとした秘話が紹介されていた。読んでいく内に、子供の頃の血湧き肉踊る感覚がよみがえる。 それからインターネットで「赤影」情報を探しまくり、赤影役の坂口祐三郎氏が、「赤影参上」という本を出版しているのを知った。本屋を何軒か探してようやく入手。前後して「実録テレビ時代劇史」という時代劇本も入手した。

 「赤影」が、ただのテレビ映画ではなかったということが分かってくる。
 まず、日本で始めてのオールカラーテレビ時代劇映画だったのだ。製作した東映にとっても、放映した関西テレビにとってもカラーは初めてのこと。カラーがまもない時代に、「これからも繰り返し放映される作品を」という願いがあり、「赤い仮面」は鮮やかにテレビに登場した。 奇想天外なストーリーやぶっとんだ設定は、時代劇の基本を知りつくしている監督が、崩してやっているというのも知った(内田吐夢監督の下で助監督をしていた)。だからこそ、おかしな映像の連続でも違和感なく見ていたのだろう。役者やスタッフも、どんどん意見を出して一緒に番組を作っていった。監督の柔軟性もあるが、当時の時代劇がおかれていた、現代劇が台頭して全盛期を過ぎようとしていた、微妙な立場もあったのかも知れない。

 役者たちも魅力的だった。赤影役の坂口氏は、まさにはまり役。坂口氏が決定した理由に、すばらしくきれいな目をしていたのがあげられていた。その目は赤い仮面に包まれ、美しく凛々しい、秘められた色気のある不思議な魅力をもたらしている。
 白影役の牧冬吉氏は、その後「水戸黄門」などで悪役をよくしていたが、私には、いつまでも白影だった。昨年亡くなってしまったのは大変残念なことだった。
 私のごひいきの里見浩太朗氏が、最初の1クールに竹中半兵衛役で出演している。

 今から思えば大変にぜいたくな番組だった。これだけの番組を、多感な子供時代に見せてもらったのは、とても幸せなことかも知れない。

 「仮面の忍者・赤影」は、レーザーディスクで全話が発売されている。数年前にビデオを借りて、あまりの奇想天外さに途中であきれてしまったことがある。今でも、そう思うのだろうか。確かめてみたい気もするが、8万円もするので迷うばかりである。

(99/05/25)

追伸:21世紀に入り、DVDの世の中となりました。DVDボックスセットを目出度く手に入れました。デジタルリマスターされた映像と音声を楽しんでいます。しっかり作られた番組でしたよ。
(2005/01/02)

(C) HETAUMA HONPO 1999


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