こうして、俺は摩耗した 〜性技の味方に至るまで・幼女編(前)〜





・金のょぅι゛ょの場合


「……まだ生きていたとはな。存外、あの詐欺師達も役に立たぬものよ……」
携帯電話という文明の利器で近所の公園に呼び出された金色ょぅι゛ょは、目の前に居る言峰綺礼に吐き捨てた。
「神(ょぅι゛ょ)の加護だよ、ギルタソ」
「タソ言うな。殺すぞ」
「大人気ないな、ギルガメッシュ。……いや、今はょぅι゛ょだったな、これは失言だった」
「――貴様と話しているとな、蛇を思い出してどうにもむかついてならん。幸い、元に戻る当ても出来た、疾く殺すとしよう」
「……残った令呪で口には出せないほどの恥辱満載な命令を下しても良いのかね? まあ、落ち着くがいい。もうすぐ――終わりが来る」
ふっふっふ、と嗤うモジャ神父に、ギルガメッシュは怪訝な瞳を向ける。
「終わりも何も。まだ一体のサーヴァントも脱落しておらん現状で何が終わる? ……言峰。貴様、何を知っている?」
「何、敬虔な信徒である私には神(ょぅι゛ょ)の声(デムパ)が聞こえてくるのだよ」
「貴様、またそう言う戯れ言を……む、貴様!?」
そこでギルガメッシュは気が付いた。言峰綺礼の左手が、その左胸、心臓部分を押さえていることを。
「――そう言うことか、良いだろう。話すことを許可する」
「ふ、ふふふ、とりあえず場所を変えるか。ここではいささか人目が在る……」
ぴゅーと吹く冬の北風の中。子供達が元気に走り回る公園で。何処までも空気読めてない変態神父と金色ょぅι゛ょであった。
「お、奥さん。あの神父様、金色の綺麗な娘を連れ去ろうとしてるんだけど、通報した方が良いのかしら……」
「だ、大丈夫よ。し、神父様でしょう。多分余所の娘さんを預かってるとかそう言う理由なのよ……、こら、○○ちゃん。あっち見ちゃいけません!」





・銀のょぅι゛ょの場合


「紅茶が入りました、イリヤスフィール様」
すっと優雅にカップを目の前に置く新顔のメイドに、城の主、イリヤスフィールは憐憫満載の視線を注いだ。
「えーっと、ご苦労様、ライダー。その……強く生きてね?」
「……ううっ」
イリヤの哀れみに、るーるーるーと目の幅一杯の涙を流す、アインツベルンのメイド服に身を纏ったライダー。
「ライダー。お茶をお出ししたら、速やかに後に控えなさい! そんなことでは一流のメイドの足下にも辿り着けませんよ」
「ハッ、ハィィ〜ッ! セ、セラ御姉様ッ!」
「それは二人きりの時だけですしょう、ライダー。人の目がある時は……」
「し、失礼しました、セラ先輩ッ!」
「それとも……そんなにお仕置きが楽しみなのでしょうか。そうならそうと……」
部屋の入り口付近でライダーを監督していたセラの目が怪しく輝く。
「……イリヤスフィール様。先日の騒乱で崩れそうな屋根裏の補修をしようと思うのですが、ライダーをお借りしても宜しいでしょうか?」
「そ、そう。屋根裏のほしゅーさぎょーなのね」
「ええ、つきましては危険なので屋根裏にはお近づきにならないようお願い致します」
「えーっと、やねうらはきけんだからちかよっちゃだめなのね」
確かに、危険地帯に変わるだろう。主に私の貞操に。……たらり、とイリヤスフィールの額に冷や汗が流れる。
「さ、ライダー。行きますよ」
「う、ううっ、は、はいぃ〜」
「ご、ごゆっくり」
喜色満面のセラが、打ちひしがれたライダーを屋根裏にドナドナする光景を、何とも言えない生温い視線で見送ったイリヤスフィールは、ぼそり、と呟いた。
「……早く引き取りに来てくれないかしら」
「イリア、アーチャーに電話する?」
「……止めましょう。セラに恨まれそうだし。なにより、電話したってばれたらセラの矛先がこっちに来そうで嫌だわ」
「……イリヤ、危ない」
「ええ。ほら、夢見る淑女としては、はぢめて、は好きな人とが良いじゃない。お兄ちゃんとか」
「イリヤはシロウが好き?」
「ええ、私のはぢめてだけじゃなく、お兄ちゃんのはぢめてを“アッー”したいくらいに……」
イリヤスフィールのバックに浮かぶ背景の牡丹の一輪挿しからその大輪の花が落下する。それはさながら、咎人の斬首のように。
今日も、何処までも腐敗しているアインツベルン城であった。





・そして、鉄のょぅι゛ょの場合


下半身履いてないダッシュで地下回廊を駆け抜けた俺は、教会を仰ぎ見る坂の下の小さな一軒家の一室へと辿り着いた。
「というか侮り難し、冬木教会。秘密基地か!」
ただし“悪の”が付く。
「さて、どうしたものかなぁ……」
そうそう何時までも逃げ切れまい。なにせ俺とアーチャーとは令呪で繋がっている。奴に居場所は筒抜けだろう。
「とりあえず、今のうちに距離と時間を稼ぐか」
まずはざっと家捜しして着る物を探す……。どうやら教会からの抜け出し口ということで、空き家のままなのだろう。家にはまったく生活臭が感じられない、感じられないのだが……。
居間と思われる一室に何故か存在する巨大なクローゼット。この家に存在していた唯一の家具。
「ううっ、嫌だなぁ、本当に嫌だなぁ、開けたくないなぁ……」
とはいえ、冬木の街を下半身履いてない状態で駆ける事と秤に掛けた場合、天秤はちょっとだけこっちに傾いている。と言うわけで、俺は嫌々ながらもクローゼットを開けて……肩を落とした。
ハンガーに掛けられていたのは三セットの衣服+靴。それだけが、クローゼットの中身の全てだった。

1・スクール水着+ビーチサンダル+えっと、浮き輪?
2・近隣○学校の制服+ランドセル+赤いローファー。
3・体操服+ぶるまぁ+運動靴。

「って何だよ、このラインナップはっ!」
俺は、HAHAHA! と嗤うモジャ神父を幻視した。2番以外に選択肢は無いだろっ、これ! 糞っ、しかも下着が入ってないからスカートに下にブルマ履かなきゃいけないし! いや、制服の下にスク水って選択肢も、その、なんだ、良いモノだけど、自分がやろうとは思わないぞ。
「ううっ、わざとだな、絶対わざとだな、あの糞神父。殺す、絶対殺す、コレクションの場所だけは吐かせてからゲヘナに送り込んでやる」
がっしがっしと着替えながら、靴だけは運動靴をチョイスした。こっちの方が走りやすい。当然、ランドセルなんか背負わない。
「とりあえず、言峰を探すか。だけど当てずっぽうに探しても見つかるわけも無いし……」
そこで俺は気が付いた。ギルガメッシュ。アイツなら言峰とラインが繋がっている筈。ついでに助力を願えれば心強い。
「よし、そうと決まれば行き先はうちだな。アイツ等より先に辿り着かなきゃ意味がない」


検閲により行動方針削除。思考巻き戻し。方向性変更。修正。
クスクスと脳裏を過ぎる嗤いの波動。
黒い影絵のシルエット。


「あ、あれ?」
何か今、一瞬目眩がしたような。まあ、こんな格好をさせられれば目眩もするか。
「とりあえず、言峰を探すか。だけど当てずっぽうに探しても見つかるわけも無いし……」
となると、まずは最大の危機であるこの躰をなんとかしたい。飢えた狼達に襲われる前に。
「この体を何とかする、かぁ。……うーん、とりあえずキャスターにでも聞いてみるか」
アサシンを召喚した手口といい、色々と裏技を持っているかも知れない。魔術師のクラスは伊達では無いはずだ。
躰が何とか出来れば万々歳、次点としてはアーチャーとの繋がりを何とかして行方を眩ませる、というところか。どうせ奴らのことだ、くじ引きでもして順番を決めて、数時間はヤりまくるに違いない。まったく、色キチ○イ共は質が悪い。キャスターで何とかなれば良いんだけど。とはいえ。

「そのキャスターに汚される可能性もあるんだけどさ」
まあ、その辺は葛木先生が居ることに期待するしか無い。亭主の前でアレなほどのキャスターではあるまい。葛木の前では良い格好しぃだし。とりあえず急いで向かうとしよう。あの四人の色呆け達にこの清い躰を汚される前に何とかしなければ。

……ということで、やって来ました柳洞寺。見上げれば長い石段。キッツイなぁ、この体で登るのは。
「おじさん、ありがとー」
とりあえず俺は、ここまで乗せてくれた親切なトラック配送のおじさんにお礼を言った。
「おう、良いって事よ。嬢ちゃん、色々あると思うけど頑張れよっ!」
ちょっとだけ涙をこらえるかのような仕草のおじさんは、元気よく俺に向かって手を振って車を奔らせた。
うーん。俺はただ、義理のお父さんのお墓のある柳洞寺まで乗せていってくれませんか、みたいなことを修飾語とかで大量に飾ってお願いしただけなんだが。どうも思いっきり不幸な身の上に勘違いされてしまったようだ。同情全開にお菓子とかジュースとか買って貰ったりもしてしまった。うん、ありがとう知らないおじさん。オンナノコの泣き真似って便利だなぁ。
そうして、俺はとことこと石段を登っていった。で、中腹を過ぎた辺りで感じた気配に言葉を掛ける。
「おーい、アサシン。質問だけど、葛木は帰ってる?」
「ふむ。見覚えのない童女なれど、私の気配を読むとはただ者では在るまい。……とはいえ、宗一郎の客と言うのなら無体に切り捨てることも無かろう。宗一郎なら戻って居るぞ、童」
俺の台詞に、陽炎のように現れる時代錯誤な格好のロン毛優男。ただし背にはやたらと長い日本刀。アサシンのサーヴァントである。真名は知らない。現状一番まともなサーヴァントだ。ま、出番が無いだけとも言う。
ニヤリ、と笑うアサシンとすれ違う俺。まあ、この伊達男が汚れ役に甘んじるとも思えないが。
「じゃ、お邪魔するわ」
「ゆるりと滞在するが良い。魔女に捕まらぬようにな」
……その魔女の方に用事があるんだよな、困ったことに。

ぎゅっぎゅっと玉砂利を踏みしめて、柳洞寺の境内を裏手に廻ろうとした俺は、痩身の男が空を仰ぎ見ているのに気が付いた。
「あ、葛木先生、こんにちは。キャスター居ます?」
これ幸いと、葛木夫人の在宅を尋ねる俺に、いつも通りの仏頂面で答える葛木宗一郎、新婚。
「……ああ、衛宮か。妻なら自室に居るが」
「あ、はい。じゃあお邪魔します」
「ああ」
そうして、俺は葛木の横を抜け、とことこと……アレ? ちょっと待て。今何かおかしくなかったか?
「あ、あの。葛木先生。今、何と……」
仰いましたか、と振り向いた俺は恐る恐る葛木先生に尋ねた。
「妻なら自室に居るが」
「いえいえ、その前です。俺の名前を仰いませんでした、か?」
「ああ、衛宮だろう。……随分と縮んで、可愛らしくなったようだが。あれの悪戯か?」
た、ただ者じゃ無いぞ葛木宗一郎。ラインの繋がってる赤いキ印ですら一見で分からなかった俺を、一発で衛宮士郎だと見破るとは。
「あ、いえ。キャスターの所為じゃじゃなくてですね。その、キャスターなら元に戻る方法を知ってるんじゃないかなぁ……とか」
「……ふむ、なら上がっていくがいい」
玉砂利の上を滑るように歩を進める葛木先生。足音がほとんど立っていない。この辺りもただ者じゃないな。実はサーヴァントとガチンコで殴り合える達人だった、とか。……はは、まさかな。そんなトンデモ人間、そうそう居るわけ無いよな。少なくとも俺は会ったことがない。馬鹿な事を考えたもんだ。
てとてとと、俺は葛木先生に付いて歩いた。歩幅の違いから早足になる俺に気が付いたか、歩調をやや落とした葛木先生。道中で寺内に上がり、葛木先生達が間借りしている一室へと向かった。
「今帰った」
抑揚のない声で。普段通りの仏頂面で。すっと障子を開ける葛木先生。そしてそれを迎える喜色満面の新妻。
「お帰りなさい、宗一郎さ、ま……」
その台詞が、俺の姿を確認して途切れてしまう。まあ、新婚家庭の夫が見知らぬょぅι゛ょを連れ帰ったら驚くよな、普通。
「キ……」
「キ?」
首を傾げる俺を、ぎゅむ、と抱きしめるキャスター。ぶんぶんと身を捩るお陰で、俺の顔面がふくよかな乳房に押しつけられ、苦し気持ち良い。
「キャーッ、キャーーッ、キャーーーーーッ、そ、宗一郎様ッ。ど、何処で拾ってらしたんですか。こんな可愛い娘! お土産ですか。お土産ですね。お土産なんですよね!! ああっ、もうっ……」
ぎゅむ、ぎゅむ、ぎゅむ。うん、さすがに拙いな。息が出来ない。俺はぽんぽんとキャスターの腕をタップした。
「ギ、ギブ、ギブだ。キャスター。お、落ち着いてくれ、頼むからっ!」





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