拍手ありがとうございますSS「例のアレ番外 拍手編 前提として例のアレ発展編を読んでいないと解らないネタです」





「おや? 桜にセイバー、何をやってる?」
ふらり、と茶の間に現れたアーチャーが見たのは、二人向かい合ってちまちまと手を動かしている間桐桜とセイバーの姿だった。
「……ほう、綾取りか」
座布団に座っているセイバーの後ろから覗き込みつつ、ぎゅっとその肩を抱く。その結果、恵まれているアーチャーのふくよかな胸が、恵まれていないセイバーの後頭部にぎゅっと押しつけられる。
「ええ、この国の伝統遊技らしいのですが、なかなかに興味深い……それはそれとして離れなさいアーチャー」
額に青筋を立てつつも、冷静を装いながらセイバーは口を開いた。
「つれないな。ツンデレは君のキャラじゃないだろう?」
「デレはありません! 貴女にはツンだけで十分です! いいからさっさと離れなさい!」
「つまらんな、布団の中ではあんなに可愛いのに」
それでも素直にセイバーから離れるアーチャー。
「それで? 桜はともかく、セイバーに綾取りなど無理だろう?」
「何を言うアーチャー。私の手さばきを見て何も感じないのか?」
「セイバーさん、飲み込みが早いんですよ」
「ほほう」
感心するアーチャーに対して得意げに四段ハシゴを作ってみせるセイバー。
「どうです」
「……いや、大したものだ」
軽く拍手をするアーチャー。
「アーチャーさんは出来るんですか? 綾取り」
「……まぁ、得意な方だと自負している。こと綾取りならサーヴァント随一だと思うがね」
「あら、そんなこと言って大丈夫なのですか?」
「フフン、何処かの槍馬鹿の釣りとは違って事実だからな。それこそ猫型ロボットを使役する眼鏡とか西新宿のせんべい屋でも召喚されない限りは私の優位は動かんさ」
「む、よくぞ言ったアーチャー。ならその腕前見せて貰おう」
ずい、と綾取りの糸を差し出すセイバー。
「ふむ、ならば良いだろう」
糸を受け取るアーチャー。
「ではまずは……」
次の瞬間、アーチャーの指が目にもとまらぬ早さで動きだす。
「川、網、鼓、魚、川、っと、まずは基本の連続技だな」
リズム良く姿を紡ぎ変えていく糸に惹きつけられる桜とセイバー。
「次にハシゴと行こう。一段、二段、三段、四段、五段、……六段には長さが足りんか」
くるくると姿を変えていく。
「蝶。バリェーションを幾つか行くぞ」
指が動くたびに、違う姿の蝶を形作っていく。
「これは……」
「ええ、レベルが違います、ね……」

おおよそ5分ほどの手の中の小さな舞台。
「……いや、堪能させて頂きました。貴女にこのような特技があるとは……」
溜息混じりのセイバーの台詞。それに対してアーチャーはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「何を言う? 君は一度私の腕前を見ているだろう?」
「……?」
不思議そうな顔のセイバーと桜に軽く溜息をついて、
「ではもう一度お見せしようか」
テーブルの上のテレビのリモコンを手に取り、宙に投げ、
「……」
「……」
「……」
「ア、アーチャー……あ、貴女と言う人は……」
瞬時に動いたアーチャーの手により、リモコンに綾取りの糸が巻き付けられていた。それは亀の甲羅の文様にとてもよく似た形を描き出している。
「これが証拠」
不思議そうな桜に一枚の写真を手渡すアーチャー。しかしその写真は、大あわてのセイバーに奪い取られ、握りつぶされる。だが桜はしっかりと眼にしていた。
それはセイバーの全身写真だった。格好は……まぁ、そんな感じ。
「……アーチャー、そこに直りなさい。今日こそは我が剣の頑固な汚れにしてあげます!」


おおむね今夜も衛宮邸は平和であった。





・チラシの裏
いやまあ、縛りと来たらこうでしょう。

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