こうして、俺は摩耗した 〜性技の味方に至るまで・繋留編〜





そもそも、聖杯戦争の異常を言いだしたのはこのアーチャーだった。
その為、わたし達は他のサーヴァントを倒さないように行動していたはずだ。
しかし今夜、アーチャーはセイバーがランサーを切り捨てるのを止めなかった。
アーチャーの固有結界内でなら、セイバーを拘束することなど造作も無かったはずなのに、だ。
どういうことだろう?
まあ、この変質者のことだ、ただ単に自分の天敵である真性ゲ○撲滅が目的だっただけという可能性もある。
あるのだが……、はたしてそれだけだろうか。
このキ印色情狂は、おちゃらけで不真面目で馬鹿で変態で電波で妄想でサドマゾ両属性持ちで女好きでょぅι゛ょが好きでどうやら年上もOKで自分だって十分大きい癖に巨乳が好物で、それなのに虚乳にも無償の愛を注いでいて……わ、わたしの事じゃないわよ? ……自分の欲望に忠実で他人を陥れることが大好きで変な妄想世界を展開するし、でも、確かにアレは上手いし○○った時は××ちゃったけど、でも■■■■した時は△△が□□だったし……、いや、待ちなさい遠坂凛! わ、わたしは色呆けてないわ。士郎や桜みたいな思考回路に流れちゃ駄目。わたしだけは清く正しく麗しく格好良く颯爽と、美味しいところを取らなきゃ!

「といいつつ、現時点では狂言回しの説明キャラなんだがね、君」
「十分コッチ側ですよね、姉さん」
「もう手遅れだと本人だけが気付いて無いんですよ、リンは」
「そこっ! 挫けそうになる発言は禁止っ!」
ポリポリとカップ麺の乾燥した麺を囓っている三人に釘を刺す。

と、とにかく。そんなどうしようもなくねじくれている這い寄る混沌なアーチャーだけど。
コイツの本質は策士だ。――いや、違う。策なんて上等なモノじゃないわね、――コイツは詐欺師だ。おちゃらけた行動の裏で、相手を貶める策謀を巡らせるトリックスター。
「と、言う訳よ。今日こそはアンタの知ってることを洗いざらい吐いて貰うわ! さ、アンタ一体、何企んでんのよ」
「脳内の思考を台詞に繋ぐのはどうかと思うぞ、凛。それに、何を企んでるかと言われても、なぁ」
露骨に眼を逸らす赤い外套の襟首を、私はがっしと掴んだ。
「さ っ さ と 吐 け !」
ぶんぶんとアーチャーの頭を揺さぶる。そんな私の頬と腰に、すっとアーチャーの手が回された。
「そ、そんな強引に求められちゃうと……答えてしまいたくなるではないか」
頬を撫でるかのように繊細に触れた指が、優しく私の唇へと向かって這い進み、腰に回された手は、私の背中を撫でながらゆっくりと下へと向かっていく。
「誤魔化されるかッ!」
「ふぐぅっ!」
奴の襟首を引き絞りながら引きつけて。私の額を奴の鼻っ面に叩き付けた。手加減無しの一発。もとより、私より乳のデカイ奴にかける情けなど無い。
「り、凛。じょ、女性には慎みとか繊細さとか優雅さが必要だと思うぞ! そもそも遠坂の家訓を忘れたのかっ! オンナノコがチョーパンなんか使うのはどうなんだろうなっ!?」
鼻の頭を押さえながら涙目のアーチャー。確かに、遠坂の家訓からは外れた行動ではあるが……。
「アンタの口から慎みとか繊細さとか優雅さとか言われたく無いッ!」
「いや、言わせて貰う。そんなだから育たないんだぞ、凛。普段から女性らしい内面というものを意識すれば、ホルモンのバランスが調整されて、自ずからその身も女性らしくだな、なる訳だ! 桜を見たまえ、桜を。君もああなりたくは無いのかね、んん〜?」
「う、嘘を付くなぁ! …………ところでそれは本当なのかしら、桜?」
「え、えぇ〜っと。その。……どうなんでしょう?」
私の体の一部に注いでいた哀れみの視線を露骨に逸らせる桜。……イツカコロス。
「私を見たまえ、私を。このナイスバディを!」
傲然と胸部の反らせて、その脂肪を見せつけるアーチャー。
「……ああ、なるほど。……嘘八百だった訳ね」
「な! なにげに非道いぞ、凛。この女性としてパーフェクトなボディラインを否定する気か!」
「アンタのボディを否定するんじゃなくて、アンタの慎みとか繊細さとか優雅さとか品性とか知性とか良識とか性格とかその存在そのものを否定するの」
コイツに女性らしい内面の諸々が何処に在るというのだ。……イカレ精神世界持ちのキ○○○精○○患者が!
「それも非道いなぁ、凛!」
「あの……、リン。リン?」
ぎゃんぎゃんと言い合うわたし達に、遠慮がちにセイバーから声がかけられた。
「……アーチャーに思いっきり誤魔化されてますが……」
「チッ!」
セイバーの指摘に、アーチャーの舌打ちが響いた。ぎゅむ、と視線を向けた私から顔を背けて、口笛を吹く真似をしやがります。
「……アーチャァアーーーーーーーーッ!」





数分後。
「とにかく。どうやって君達を出し抜いて鉄のょぅι゛ょをゲットするか、とかそういう企みに関しては置いておいて、だ」
「そうね。こっそり士郎を捕縛して遠坂邸に監禁する計画に関してはこの際保留するわ」
「クスクス。間桐邸の地下室って、今使ってないんですよね……」
「……シロウ、誰を選べば幸せかははっきりしてると思います。貴方が道を違えん事を……」
顔を見合わせたわたし達はフ、フ、フ、とにっこり笑い合った。部屋の温度が急激に下がった気がしたのは気のせいだろう。……全員敵ね。
「で、アーチャー。そろそろ話なさい」
「やれやれ、せっかちだな。……時に桜。君、体に不調はないかね?」
アーチャーが唐突に、桜へと話を振った。振られた桜はわたわたと手を振って、
「え、私ですか。……えーっと、絶好調です。先輩相手なら何時でも何処でも何回でもOKなくらいには」
と本能というか欲望に直結した台詞を返す。
「……」
「……」
「……」
「は、外しました、ね」
エヘ、と舌を出す我が馬鹿な(元)妹。さらに低下する室温。わたし達の何とも言えない視線に、顔を真っ赤にして恥ずかしがる桜。
「……それ以前に本気にしか聞こえないわね。つまりいつも通りね」
「ああ、いつも通りオカシイな」
「ええ、いつも通りイっちゃってますね」
「み、みんな酷いです……」
「しかし、桜に何の変化も無い、か。となると出掛けるしかないな」
「出掛けるって何処によ?」
私の問いに軽く笑うアーチャー。
「ランサーは倒れた。しかし桜に問題は無い。そこでイリヤスフィールの方に変化が無ければ……愉しいことになるぞ」
「……アンタ、何を……言ってるの……」
確かに、コイツは何かを知っている。言峰綺礼よりも、ギルガメッシュよりも。そしておそらく……イリヤスフィールよりも。
「ふん、聖杯のことならアインツベルンが詳しいだろう。彼女に聖杯の中身について解説してもらうとしようか」
「……アンタの口から話す気は無いって訳ね」
もっとも、コイツが真実すべてを話すとも思えないが。
「私の知ってることは、私の主観でしかない。君、私を信じるのかね、凛?」
「そうね。綺礼と同じくらいには信用してるわ」
私の返答に苦笑いするアーチャー。
「つまり全く信用してない、と。なら私が何を言ったところで完全には信じられまい? なら意味は無いだろう」
にらみ合ったまま、私とアーチャーはすっくと立ち上がった。
「出発は早朝だ。睡眠不足は美容の大敵だぞ。さっさと寝るとしよう」
「うふふふ。そう言って深夜にこっそりと士郎捕獲に出る気ね、アーチャー。セイバー、一晩中アーチャーを見張りなさいっ」
「お断りします。空腹で力が出ません。速やかに食事の提供が為されない限り、私は今回の聖杯戦争をボイコットします」
「なっ、アンタそれでもサーヴァント? それでも剣の英霊? 本当に騎士王? パチもんじゃ無いでしょうね!」
「な、何を言う、リン! 貴女こそ全く全然完膚無くマスターらしさの欠片も無いではありませんか! 大体貴女は……」
「……な、何よ。わたしだってもうちょっと……って、桜っ! アンタ何こっそりと外出する気で居るのよ!」
「え、え〜っと。お、お醤油が切れてるんでちょっと買ってこようかと」
「醤油なら床下収納に薄口も濃口も予備が完備だが?」
「あ、だったらお味噌を買いにでいいです」
「ええーい、抜け駆け禁止でしょう!」
「やれやれ、付き合ってられ無いな、さて……」
「そう言って逃げようとしないで下さい、アーチャーさんっ!」
「桜、桜っ! 黒いの仕舞いたまえっ、それはアブナイから!」

「……眼が覚めたので状況を聞きたかったのですが……」
暗い廊下、障子の脇で。他の部屋に寝かされていた隻腕ょぅι゛ょが、室内の狂乱を耳にして、立ちすくんでいた。
「……い、今は止めておきましょう……はぁ、お腹が空きましたね」
ょぅι゛ょ化してから何も食していない為の空腹を抱えながら、とぼとぼと寝かされていた部屋へと戻る、バゼット・フラガ・マクレミッツであった。





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