こうして、俺は摩耗した 〜性技の味方に至るまで・不在編〜





衛宮士郎とアーチャーの契約が切れてから2時間47分後、残されたわたし達、『遠坂凛と不快な仲魔達』御一行はようやく柳洞寺へと辿り着いた。その2時間47分に何があったのかは、ツヤツヤテカテカのアーチャーと、その背中でぐてっと意識を失っている隻腕ょぅι゛ょしか知らない謎だ。地上に居たわたし達には当然、地下室でのょぅι゛ょの嬌声とか絶叫とか救いを求める声とかは聞こえなかった。……ええ、もちろんこっそり覗き見なんてしていないし。
すでに夕刻。空は紫に染まり始めている。
「と言うわけで、最後に士郎が居たと思われる柳洞寺なんだけど……アサシンが居ないわね」
いつもなら山門に居るはずの優男が、今日に限っては居なかった。
「ふむ……しかし、別に戦闘があったようにも見えんが。まぁ、とりあえず入ってみよう」
軽い口調のアーチャーは何の警戒もせずにすたすたと中へ入っていく。
「ちょっと、アーチャー! ここで士郎との契約が切れたのは確かなんでしょ? そんな無警戒に進入しちゃって良いの?」
わたしの問いに、アーチャーはいつものように軽く肩を竦めた。
「なに、契約を切ったのはキャスターの仕業だろう。大方、今の士郎の“おねだり”についやっちゃったんだろうよ。アレはかぁいいオニャノコに弱いからな」
「……人妻のくせに腐ってるわね」
「まったくだな」
すたすたとわたし達は境内を横切り、柳洞寺の裏手の方へと向かっ……げ。
柳洞寺の庭の一カ所、正門からは見えない横手に、その空間は在った。
屋根から皺一つなく引き下ろされた青い布地は地面を這いある程度の処でペグで固定。向けられているのは6つの撮影用照明。そして複数の三脚に備え付けられた一眼レフカメラ群。側に置かれたキャスター付きのハンガーラックに掛けられた沢山の服は、すべてフリルやレース等の装飾過多のものばかりだ。トドメとばかりにレフ板をかたづけている優男。ここで何が行われたのか正確に想像できてしまったわたしは、ちょっとだけ士郎に同情した。
「キャスター。……ここで何をしたのかとりあえず聞かないけど、士郎来なかった?」
とりあえずわたしは、至福の表情でカメラをかたづけている、上機嫌なキャスターに向かって話しかけた。というかなんでコイツ、こんなに幸せ一杯な顔してるんだろう?
「あ、あら。い、何時の間に来てたのかしら?」
わたしの問いに我に返ったキャスターが、挙動不審に狼狽えながら返事を返した。……なぜ頬を桜色に染めたりなんかしてやがりますか?
「と に か く ! 士郎来なかった?」
ネタはあがってんのよー! と凄むわたしに、ほにゃっと微笑む新妻。あー、もう、調子狂うなぁ。アーチャーも桜もこの空間を見てからずっと無言だし、セイバーはハンガーラックの服を眺めてるし。
「ああ、坊や……じゃないわね。あの可愛らしいお嬢さんなら来たわよー♪」
「……」
満面にこやかなキャスターが正直ヤバイ。どっか遠くに逝っちゃってる感じです。
「ね、ね。アレって教会の神父の仕業? 良い仕事するわね……」
キャスターがはふぅ、と溜息を吐いた。
「あー、調子狂うわね! で、どこに居るのかしら?」
「さぁ、ここにはもう居ないわよ」
「ここで契約が切れたみたいなのだが、何か知らないかね?」
能面のような無表情でアーチャーが言葉を発した。でも背中のょぅι゛ょで全て台無しだ。よっぽどキツかったのか、今だ目を覚まさない隻腕ょぅι゛ょ。……悲惨ね。
「さ、さぁ、し、知らないわ」
アーチャーの詰問に、きょろきょろと目を泳がせるキャスター。
「……まあ、良い。その辺りの詮索は止めておこう。……で、どこまで撮ったのかね?」
そんなキャスターの様子に、何故か詮索を止めておかしな事を聞くアーチャー。
「そうです! 先輩にどこまでヤったんですか、キャスターさん!」
ギラギラとした瞳のアーチャーと鬼気迫る顔の桜がキャスターに詰め寄った。桜、桜、アンタ黒くなってるから。 
「チラリか、チラリまでか。それとも口に出せないあんなとかこんなとかもか? ま、まさかキャスター、君、美味しく頂いてしまったりなんかしていないだろうな?」
「もしそうなら、キャスターさんも頂いちゃいますよ、わたし?」
うねうねと影から黒い布みたいなのをうねらせながら、フフフ、と黒く嗤う桜。あー、姉妹の縁が切れてて良かったかも。コレが私の実の妹だなんて、世の中間違ってるわ。
「そ、そんなことしないわ! 宗一郎様が居たのに出来るわけ無いでしょう! せいぜいそこの15着ほどよ!」
……チラリ、とわたしはセイバーが見ているハンガーラックに目をやった。よくよく見ると、靴とか帽子、バッグなどの小物まで完備されている。アーチャーと桜も、わたしと同じ物を見ていたらしく、顔を見合わせて頷きあった。
「で、キャスター……」/「時にキャスターさん……」
「焼き増しの注文はどこに出したらいいのかね!」/「焼き増しの注文はどこに出したらいいですか!」
「……アンタらね……」
がっくりとくるわたし。この聖杯戦争関係者で真人間なのはわたしだけなのかしら。
「……ところでキャスター……」
真剣に服を見ていたセイバーが、キャスターに声を掛けた。ああ、貴女だけが頼りよ、セイバー。
「……この様な服は何処で手に入るのでしょうか? ……あ、いえ、別に着てみたいとか言うわけではないんですが、その……」
ごにょごにょと口ごもるセイバー。……アンタも敵か……。
「がぁーーーっ! 話を戻すわよ! もうここに士郎は居ないのね? どこに行ったのか、貴女知ってるのかしら、キャスター?」
「残念だけど知らないわね」
キャスターは軽く首を振った。
「ふむ。ぱんつ履いてないのにどうしたものか」
「……あら、それなら私の手持ちの服を進呈したわよ。赤いワンピース。薔薇乙女のクリムゾンみたいなの。下着もシルクの黒の上下。もちろんガーターストッキングよ」
首を傾げるアーチャーに、キャスターが微かに嗤って答えを返した。
「それはまた恥ずかしい、もとい、素晴らしい。パーフェクトだ、キャスター」
キラリと白い歯を見せて、ょぅι゛ょを背負ったまま器用に片手を挙げてサムズアップするアーチャー。ハァハァと妄想する桜。セイバー、ゴスロリ服を体に当てて鏡を見るの止めなさい。後でキャスターと交渉して貰ったげるから。
「なんでこう話が脱線するのよ、まったく。それにしても……何処に行ったのかしら、士郎」
溜息を吐いたわたしに、キャスターが軽く微笑んだ。
「まぁ、あの娘の性格なら、今の状況を何とか解決しようとするんじゃないかしらね? 頑張り屋さんだから……」
はぁ、と心配そうな溜息を吐きながら空を見上げるキャスター。……ちょっと、一体撮影以外に何があったのよ、ここで? わたしはキャスターの反応の微妙なおかしさに首を傾げた。
「……今帰った」
ふらり、と気配を感じさせずに唐突に、うちの担任、葛木宗一郎が現れた。
「あ、お帰りなさい、宗一郎様」
嬉しそうなキャスター。しかしこの空間にまったく動じない葛木先生は確かに大物だと思う。
「お邪魔してます、葛木先生。ところで出掛けてらした見たいですけど、どちらへ?」
話の流れからすると、士郎がここに来たときは居たみたいなのよね。で、ょぅι゛ょ化した士郎を見てるはずだし。
「……役所に養子縁組の書類を貰いに行ってきた」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ハイ?」
「役所に養子縁組の書類を貰いに行ってきた」
わたしの疑問に、淡々とまったく同じ台詞を繰り返す葛木。……えっと、養子縁組? つまり、葛木夫妻が、養子を取るってことかしら。……誰を?
わたしの思考が答えを出すのと同時に、他のメンツも解を導き出したらしい。
「な、ずるいぞキャスター。士郎を手中に収めるつもりか!」
「そ、そうです、キャスターさん。先輩を養子になんて卑怯です!」
「そうね。大体そういうのならわたしの家でもいいはずよ!」
思わずわたしまで参戦してしまった。でも冬木の管理者として、もぐりの魔術師を野放しにするよりは身内に取り込んだ方が都合がいいのだ。……うん、多分。
「戸籍の無いサーヴァントと未成年が何をいうのかしら? 大体我が家なら夫婦だし、それに子供居ないし……サーヴァントだから出来ないし……だから! これは世界が私たち夫婦に子供を恵んでくれたのに違いないわ! ね、宗一郎様……いえ、お父様♪」
「……ああ」
顔色一つ変えずに頷く我が担任。
「……ょぅι゛ょの衛宮の戸籍の方もなんとかしなければな。……娘の名前を考える日が来るとは……」
まぁ、確かに性別も年齢も変わってしまった今の士郎の戸籍とかは何とかしなきゃいけないとは思う。しかし……。
表情がまったく変わらないから分からないけれど。もしかしてもしかするともしかするんだけど、ひょっとして嬉しいのかしら、葛木先生?
「ええい、話は奴を捕まえてからだろう!」
「そうです。まずは先輩をゲットしないとお話になりません!」
「といっても、ふらりと出て行ったしね……」
「それにしては平静ね、キャスター? もしかして行き先、知ってるのかしら?」
「いえ、知らないわよ、……でも」
両手を桜色に染まった頬に当てて、身もだえする若奥様。
「戻ってくるからって……こう、キュって……ああ、母親って良いわね……」
軽くトリップしているキャスター。……士郎、アンタ、ょぅι゛ょになってさらにおかしな処がレベルアップしてない?
「まぁ、良い。とりあえず当てはある。移動するとしようか」
「心当たりが? アーチャー」
セイバーの問いにアーチャーが背中のょぅι゛ょを抱え直しながら答えた。
「異常の解明を目指すならそれについて知ってそうな人間に話を聞くのが早いだろう。士郎の知ってる限り、事のからくりを知ってそうな人間の心当たりは三人だけだろうさ。イリヤとギルガメッシュと言峰だ。一番近いのは衛宮邸のギルガメッシュだろう?」
……なるほど。





と、いうことで、わたし達は夜の住宅街を衛宮邸に向かって歩いていた。
キャスターは柳洞寺で、新しく出来る(予定の)養娘の名前を考えるらしい。……もー、勝手にして。
「……変だな。灯りが点いていない」
衛宮邸の前で突然アーチャーが立ち止まった。セイバーもしゃらん、と鎧を纏う。
「……アーチャー」
「ああ、気が付いている。……凛、バゼットを頼む。ごそっと魔力を頂いておいたからもうしばらくは目を覚ますまい。桜と一緒にわたし達の後ろにいたまえ」
「……何が居るの?」
アーチャーの背中のょぅι゛ょを受け取りながら、わたしは問うた。珍しく真剣なアーチャーに戸惑いながら。
「……サーヴァントだ」
「先行します。アーチャーはバックアップを」
「了解した……この気配、おそらくは」
「……ええ、ランサー、ですね。ということはマスターのコトミネも居るかもしれません。ひっつかまえてシロウを戻しましょう」
「……それは断る。まだ鉄のょぅι゛ょを頂いていないからな」
「……くじ引きですからね。後順番遵守で。ま、戻すのはその後で良いでしょう」
すっと、桜の半身が黒に染まる。わたしも、背中のょぅι゛ょを抱え直しながら、ポケットの宝石を確認した。
アーチャーの合図と同時に、セイバーが門を蹴破り、庭へと躍り出る。続くアーチャーとその後ろのわたし達。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……さ、そろそろ夕食にしようか」
「そうですね。今日はばたばたとした一日でしたし」
肩を竦めるアーチャーと、視線を逸らせて屋敷を見るセイバー。
「先輩居ませんし、今夜はどうしましょう。私が作りましょうか、それとも姉さんが?」
「そうね、たまには一緒に作るのはどう?」
「……えー、姉さんとですかー。……邪魔しないでくださいね」
「……良い根性じゃない、桜」
とりあえず、今日の夕食当番について会話するわたしと桜。
「待て、待て待て待て、ちょっと待てーーーっ! このボクの姿を見て、その反応はおかしくないか?」
庭の木の上からなにか叫ぶ声が聞こえた。……空耳だろう。
「ええーい、桜。オマエ、ボクに何か言うことがあるだろう!」
「……桜、アンタの関係者?」
「……私の知り合いに、人様の庭の木に濃紺色のブーメランパンツ一丁で登る人なんて居ません」
「そう。わたしはてっきりアンタの肉親かと思ったわ」
「私の親戚なら姉さんの親戚でもありますね」
ふっふっふっと嗤い合うわたし達姉妹。さて、夕食の支度でもしましょうか。
とりあえずわたし達は、今見た変態を記憶の中から叩き出して邸内へと……。
「ええぃ、話を聞けッ! トオッ!」
夜空をバックに空を飛ぶ変質者。前方伸身二回転に捻りを加える芸の細かさに、気持ちが悪くなったわたしは、
「とりあえずシュート!」
「へぶっ!」
どこぞの魔砲少女ばりの掛け声とともに放ったガンドで撃墜してみた。よし、Hit! 
しかし、体勢を崩しながらも、パンツ一丁の貧相な変質者はふわり、と足から着地する。まるで目に見えない誰かがその着地を助けたかのように。その不自然な動きには見覚えがあった。それに気が付いたセイバーとアーチャーも臨戦態勢に入っている。
「いきなり何をする、この赤い雌狐!」
鼻血を出しながら喚く変質者とは目を合わさずに、私はゆっくりと口を開いた。
「そう……、どういう経緯か知らないけれど、今のアンタのマスターはソイツって訳? ……出てきたら、ランサー!」
わたしの呼びかけに実体化する青い槍兵……青い槍へ……青い槍……青い変態?
確かにその姿はいつぞや見たランサーだ。その青いタイツは忘れようも無い。しかし……。
そう、しかしあのタイツ、あそこまでぱっつんぱっつんじゃ無かった筈だ。ムキムキとしたしなやかな筋肉がはっきりと分かるその薄さ。
「というか、おいなりさんとかもっこりさんの形がはっきりと判るなんて……」
「け、警察呼びましょうか」
「それより黄色い救急車を……」
「ははは、狼狽えるなショミン。ボク達の熱い魂の前に服など不要さ。どうだい、衛宮。君なら分かるだろう、この熱い漢の心意気って奴をさ! ……衛宮? おい、桜。衛宮はどこだい?」
きょろきょろと士郎を捜す変質者が、桜に声を掛けた。
「に、兄さん。……一体何を……」
「桜、ボクはオマエに感謝してるんだ。真の漢の姿に目覚めさせてくれたんだからな! だから教えるんだ。衛宮はどこだい?」
白い歯をキラリと光らせて笑う変質者、間桐ワカメ(仮)。
「……衛宮君になんの用かしら、間桐君?」
「……なんだ、遠坂か。小娘には用は無いよ」
ワカメ野郎は事もあろうか、わたしに向かってシッシッと犬を追い払うように手を振った。
「うふふふふ。……殺すわ」
「ね、姉さん。落ち着いて下さい。……で、兄さんは先輩をどうするつもりなんです?」
がっしりとわたしを羽交い締めにしながら桜がワカメに質問した。その問いにくいっくいっと下半身を蠢かしながらワカメが答える。
「もちろん、衛宮は友達だからね。友情を確かめ合うのさ」
「……拳で殴り合いでもするのかね?」
嫌そうな顔でアーチャーが口を開いた。
「殴り合い? まだまだだね。やはりここはぶつかり合わなければいけないだろう? 具体的には体と体で!」
ハウッ、とイっちゃった吐息とイっちゃった眼で虚空に妄想するワカメ。
「つまりアンタは……」
「つまり兄さんは……」
「ゲ○に目覚めたのね」/「ホ○になっちゃったんですか?」
「ま、衛宮が居ないのならここには用は無いね。とりあえずアイツの居場所を教えて貰おうか?」
ワカメの声と同時に、滑るように一歩前へ出る青い変態。
「……け、オンナばっかりじゃねーか。駄目だろマスター。漢の戦いじゃねーぞ」
心底ヤる気無さそうなランサー。
「よー、さっさとあの坊主の居場所を教えてくんねーか? オンナなんかじゃ俺の槍がヤる気を無くす」
「……言うと思うのかしら」
「……言わねぇよな、やっぱ」
軽く振ったランサーの手に現れる赤い槍。
「……セイバー、任せた」
「な、何を言い出すのです、アーチャー。大体貴女は一度ランサーを撃退してるじゃないですか。どうして私なんです?」
何故かこちらチームの英霊二人はランサーの相手を押しつけあっていた。
「いや、ほら。君はまだ彼と戦ってないだろう。強い相手に背を見せるなど剣の英霊の名が泣くぞ」
「いーやーでーす! 彼と戦って変なモノを伝染されたらどうしてくれるんですか? 私はこれ以上の汚れはイヤです。この話ではこのまま影薄い状態で被害を最小限に止めたいのです!」
「な、わ、私なら汚れても良いというのかね、君は!」
「貴女はこれ以上汚れようが無いじゃないですか! 大体どうしてそんなに彼の相手を嫌がるのです? 一回勝ってる相手でしょうに」
「あの時と今は違うだろう。今の彼は私にとって『例外』だ。ちょっとばかり相性が悪い。どうしようもなく苦手な相手だ」
心底嫌そうな顔のアーチャーの台詞。セイバーも桜も、当然私も唖然としてしまっていた。この傲岸不遜唯我独尊歩く毒物吐き出す電波が苦手な相手?
「……どういうことよ?」
「……つまりだな。あの二人は、間違いなくハードゲ○だ。女体に全く興味がない変態相手は私だといささか手に余る」
「……ランサーも、ゲ○だというの?」
思わずわたしはランサーを見なおした。わたしの視線にニヤリ、と嗤う青いタイツマン。
「フン、貴様に受けた屈辱を雪ぐ為ならば、この精神を真の漢の世界へと目覚めさせよう」
よし、ならここでアーチャーを脱落させるチャンスね。
「アーチャー、頑張ってね♪ セイバー、観戦しましょ」
「な、ずるいぞ凛!」
アーチャーの叫びなんか聞こえなーい。すっとわたし達は後ろへ下がった。
「ふん、貴様に掘られた屈辱が俺を目覚めさせた。つまり、掘られ慣れればどうってことない、とな」
ブン、とランサーの槍が一閃した。
「さぁ、構えろよ、アーチャー。今度は俺の槍が貴様の心臓を掘ってやるぜ」
「チ、仕方ないな……。とはいえ、私だと君に勝つ手段は一つくらいしか思いつかないんでね」
アーチャーが軽く溜息を吐いた。
「凛、セイバー、後で覚えていろよ。……こちらも切り札を切らせて貰うとしようか」
「ク、そう来なくてはな。行くぞ、アーチャー! オレの魔槍が真っ赤に萌えるぅっ! オトコを穿てと勝利を掴めと轟き叫ぶぅぅぅっ!」
青い変態が電波な台詞を叫んでいる。しかしそんな変態を前に、アーチャーは眼を閉じた。
そして、アーチャーの口から紡ぎ出される詠唱。

―― I am the bone of my ――
           ―― 体は 剣で ――





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