こうして、俺は摩耗した 〜性技の味方に至るまで・発端編〜
見て見て! 俺の槍を見てー!
とか言いそうな変態青タイツのハードゲイに襲われた俺は、命からがら土蔵へ逃げ込んだ。
冗談じゃない、この身はぴちぴちの清い体。変態野郎の毒牙にかかって貫かれるわけにはいかないのだ。
イっちゃった眼をした変態さんは、手にした槍をしごいて、嬉しそうに俺を追いつめる。
こんな処で、ヤられてしまう。
あの火災から10年間、護り続けてきたモノが奪われてしまう。
けれど襲いかかってきた槍は、俺の背後から放たれた剣に弾かれた。
「何! まさか本当に七人目だと!」
何か叫びながら変態強姦魔は土蔵の外へと後退する。
腰が抜けている俺を、後ろからふわり、と飛び越える人影。赤い外套が翻り、黒いズボンに包まれてなお美しい尻と太もものラインが一瞬だけ現れる。
そして彼女は静かに俺の方へと振り向いた。
銀糸の髪。褐色の肌。獲物を狙う鷹の様に鋭い眼差し。その異国風の風貌を包む、これまた異国風の黒い服と赤い外套。
そんなことより。
なにより存在をアピールする乳!
振り向いた動きにあわせ、たゆん、と振れる。軽い身じろぎで、ゆさり、と揺れる。
「問おう。貴方が私のマスターか?」
「え……マス……ター……?」
そ、そんな! 何時の間に俺にそんなマニアックな称号が!? ご、ご主人様デスカ!?
「サーヴァント・アーチャー。召喚に従い参上した。マスター、指示を」
サ、サーヴァントって、召使いデスカ。そ、それとも、ど、奴隷ディスカ?
驚愕する俺の左手に走る火傷の時のような痛み。そこに現れる三画の文様。
「令呪……やはり貴方がマスターか。名前を聞いても良いか、少年?」
「え、衛宮、士郎、だけど」
「エミヤ……シロウ……」
俺の名前を聞いた彼女の表情に表れる暗い――愉悦。
「フ、フフフ、フフフフ、アハハハハハハハ」
狂ったように嗤い出す彼女の姿に、俺は背筋に何かが這い上がってくるような恐怖を感じた。
突然に彼女は笑うのを止め、吟味するかのように俺を上から下まで長め見る。
「時にマスター。君は童○か?」
「……ハ?」
「君は○貞か、と聞いたのだが。チェリーなのか、青い果実なのか、未だ収穫未満なのかと尋ねている。どこかの黒い後輩とか粗忽な虎とか赤い悪魔に喰われてなどいないだろうな?」
「あ、ああ」
あまりの台詞につい返事をしてしまう俺。
それを聞いた彼女――アーチャーは一瞬だけにんまりとした笑みを浮かべ、そしてまた冷徹な表情に戻った。
「時にマスター。どうも召喚が不完全だったらくてな。君から魔力の供給がないのだが」
「えっと」
「このままでは私は現界することすら覚束ないのだが」
「いや、ちょっと」
「つまり、早急に魔力を供給しないと、今後とも君はそこの青いのみたいなのに襲われる生活が続くわけだが」
「それは困る」
うん、困る。とても困る実に困る大いに困る。
「よし、では話は決まったな」
むんず、とアーチャーは腰が抜けている俺の襟首を掴んで引きずり出した。
「痛、痛、ちょっ、何が何やら、待っ」
「安心したまえ、痛いのは最初だけだ。天井のシミでも数えていたまえ。くくく、せめて“初めて”くらいは布団の上でシてやろう」
「……あー、そのよ。……なんか忘れていないか?」
呆れたように土蔵の外に立っていた青タイツ。
「む、まだ居たのかランサー。……チェンジ」
その後色々あったが、遠坂が俺の家に乱入した時、俺は大人の階段を三段とばしで駆け上っている最中だった。
こうして、衛宮士郎は“正義の味方”から引きずり墜とされ、“性技の味方”へと摩耗するのであった、まる
「ち、ち、ち、ちょっとアンタ達、な、ななななな、なにやってんのよ〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「何、ァ、ハァ、ただの調きょ、もとい、魔力供給だ。フゥ、ン、もっと……、ゥン、用事があるなら少し、ン、待っていたまえ」