はいつも、土曜の午後を心待ちにしている。 決まった日、決まった時間に、はスネイプの研究室を訪れる。 それは、スネイプが、を迎える為に用意した時間で、 彼もまた、が来るのを楽しみにして居る様だった。 他人と深く関わる事を嫌い、増して生徒と必要以上に親しく付き合うなど願い下げだ、 といった風情のスネイプだが、どういう訳か、が側に居る事は拒まなかった。 二人で過ごすその時間には、特別に何をするという事もなく、 読んだ本の内容について議論したり、が授業で理解出来なかった箇所を質問したり、 他愛の無い日常の事 ―― これは専らスネイプが聞き役に回る ―― を話したり、 そんな風にして1〜2時間がすぐに経ってしまうのだった。 それが、スネイプにとって、暇潰しとか遊びとか、そういうものではないという事が、 にはとても嬉しかった。 他の誰でもなく、の為に、スネイプが時間を作ってくれている事が、嬉しかった。 は、スネイプが好きだったから。 けれど、それをはっきりと伝える事はしなかった。出来なかった。 言ってしまったら、間違いなく、先生は私から離れて行ってしまう、と、 誰よりも、が一番良く判っていた。 ある時、さり気なく、けれど精一杯の勇気を振り絞って、訊いた事がある。 「 先生は、奥さまとか、恋人とか・・・いらっしゃるんですか? 」 すると、スネイプは眉間に皺を寄せて言った。 「 何故、その様な下らぬ事を訊く、 」 その表情が、余りにも不機嫌だったので、は慌てて撤回した。 「 いえ・・・っ、ちょっと、フッと気になっただけで・・・すみません、余計な事を言いました・・・ 」 「 ・・・・そういった物は、我輩には無縁の話だ。 」 「 ・・・え? 」 「 誰かを愛したり、愛されたり、必要としたり、されたり・・・もう、その様な事をする気は無いし、 その資格も、我輩には無い。それは死ぬまで・・・死んでも、変わる事は無い。 」 スネイプのその言葉は、の胸に深く刺さった。 一体、何がこんなにも彼を苛んで居るのか、何故、こんなにも苦しい顔を彼にさせるのか・・・ には、何も言えなかった。どうする事も、出来なかった。 勿論スネイプが、の気持ちを知らない筈は無いのだ。 他人と深く関わるのを嫌って居ながら、 相手の心理思考を読み取る事にかけて、彼は頗る敏感なのだから。 そして、スネイプ自身も、を憎からず思っていた。 間違いなく、をとても大切に想っていた。 しかしスネイプは、それをに告げるつもりなど毛頭無い。 の方から告わない限り、現在の関係が動く事は永久に有り得ないのだ。 けれど、が想いを伝える事は、絶対に無いだろう。 スネイプはそれを ―― 分かり過ぎる程に ―― 分かっていた。 それだからこそ、彼女が側に居る事を許したのだ。 そしても、スネイプのそういった ―― 一見理解に苦しむ様な ―― 思考を、良く解っていた。 そうと知りながら側に居る事は、にとって、とてつもなく苦しかった。 自分に出来る事など何一つ無いのだ、と知っているから、涙が出る程、切なかった。哀しかった。 それでもは、全てを抱えて、スネイプの側に居ようと決めた。 スネイプの側に、居たかった。 そしてそれは、がこの学校を卒業したら終わるのだ。 卒業してからも会いたいなどと、スネイプが望む筈は無いのだから。 それが幸せだとか、不幸せだとか、そういう事は問題では無く、彼は、“ 望まない ” ――― 「 先生、この紅茶、美味しいですね。 」 「 ・・・次から、お前が淹れろ。 」 「 ・・・・・え、 」 「 何だ、紅茶の淹れ方も知らぬのか? 」 「 し、知ってますよ!これでも結構上手いんですよ?私。 」 「 ほう・・・それは、楽しみだ・・・。 」 はまた、土曜の午後を待つ。 朝を迎える度、カレンダーに印を付ける。 一人、静かに、紅茶を飲みながら。 【back】 |