■ When I fall in love ■


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恋をするというのは、なかなか大変なことなのだと、知った。

初めて、絶対に失くしたくないと心から思う人を、好きになってから。

側に居るときは、その一挙手一投足に、

居ないときでも、今、何をしているんだろう、何を考えているんだろう、と思う気持ちに、

振り回される。

翻弄される。

ましてや、私の好きな人は、大人の男の人で。

いつでも、まるで何でもお見通しというような、涼しい顔をしている。

先生には私の考えてることなんて、すぐに分かってしまうんだろうけど、

私には先生が何を考えているのか、どうして欲しいのか、全然分からなくて、

いつも、私ばっかり頑張っているような気がする。

嫌なのに、本当は。

些細な一言で落ち込んだり、悩んだり、

そんなの、嫌なのに。

でも、どんなに頭で色々考えたって、もう無駄だった。

好きになってしまったら、もう、その気持ちには、逆らえないから。










窓の外は、雨。

眠くなりそうな、退屈な授業が、耳に入るなり雨の音にかき消されていく。

ぼんやりと、ほとんど景色の見えないぼやけた窓に目をやりながら、先生のことを考える。

今、先生も授業中だろうか。

それとも、部屋で仕事をしているんだろうか。

そういえば、今日は、朝食のときに広間でちらっと姿を見かけたきり、先生に会っていない。

時計を見ると、ちょうど午後3時。

ああ、先生と、紅茶飲みながらゆっくりお喋りしたい。

先生、紅茶は何が好きなんだろう。

アールグレイ?ダージリン?

それとも、コーヒーの方が好きなのかな。

そういえば私、先生のこと、あんまり知らないなあ……

――――思考はとりとめもなく、広がってゆく。

全部、先生のことばっかり。

私はどこかおかしくなってしまったんだろうか。

一日中、先生のことを考えてない時間なんてないような気がする。










夜になって、やっと先生に会えた。

先生の部屋で、ソファに座って、紅茶を飲みながら。

先生は、机で仕事をしているけれど。

時折その手を止めて、私の話を聞いてくれる。

先生にしてみれば、どうでもいいような話ばかりなはずなのに、

私の声に、耳を傾けてくれる。

それだけで、とても、幸せな気持ちになる。



「先生、今日、ずっと会えなくて、先生のことばっかり考えてました」

「………」

「先生も、私に会いたいと思ってくれることって、ありますか?」



私がこういうことを言った時の、先生の何とも言えない表情が好きだ。

一瞬、眉間の皺が深くなって、溜め息を吐いて苦笑する。

先生は、持っていた羽ペンを置くと、椅子を立って私の方へやって来た。

そして、隣に腰を下ろして、私の顔を覗き込むようにして、口を開いた。



「……しょっちゅうだ」



ほんの一言、その囁かれた低い声に、胸が震える。

嬉しくて、思わず、先生に抱きついた。

先生の身体は、大きくて、抱きつくと、気持ちいい。

先生は、仕様のない、という様子で、でも、優しく抱き締めてくれた。










恋をするのは、大変なこと。

振り回されて、翻弄される。

それでも、やっぱり、何よりも幸せな気持ちにさせてくれるものだと、

優しい、嬉しい、暖かい、そんな気持ちにさせてくれるものだと、思った。

どうか、先生の上に、幸せがいっぱい降りますように。

そして願わくば、その時、その隣に居るのが、私でありますように。

きょうも、月に祈る。


(2004.5)





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