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「スネイプ先生、さっきの、授業中の説明について、質問があるんですけど…!」
授業を終え、地下牢教室から研究室へ向かって廊下を歩いていたスネイプを小走りに追いかけ、声を掛ける生徒が居た。スネイプは表情を変えないまま、無言で立ち止まり、振り返った。 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 何かね?」 その生徒の顔は見慣れた顔で、声も、聞き慣れた声。偏屈で陰険、陰鬱な教師 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ とスネイプを恐れる生徒の多い中、彼女は臆するどころか積極的に、しかも頻繁に、授業の質問と言っては彼の元へやって来るから、必然的にその印象はスネイプの中に強く残ることになる。 「今日、先生が説明された調合ですけど……」 すぐさま、持っていたノートを広げて、整然と書き連ねられた文字の列を指でなぞりながらは一刻も早く疑問を解決したいという様子で、スネイプに自分の考えている事を、やや早口に、しかし無駄のない言葉で伝えていく。 「……それで、先生は、満月草は最後に投入する、とおっしゃいましたが、本当は、」 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ああ……気付いたか。」 「え?」 「正規の調合では、満月草は最初から加える。しかしそれだと、薬の効力が少々強過ぎて、お前達に扱わせるのは安全性の面から考えて、非常に心許ない。だから変えた。」 生徒向けの参考書などには特筆されていない事項である。気付く者が居ようとは、いや、気付く者があるとすれば、彼女くらいだろう、と思っていた。易しい講義をしているつもりはない。けれど、あまり微に入り細に穿ったような解説をすれば、只でさえ複雑な薬学を、混乱せずに修得できる生徒など極々少数になってしまうだろう。難易度の高い講義や課題で、日頃、生徒を苦しめているスネイプだが、そのくらいの配慮は当然行なっていた。 「解りました。…ありがとうございました!」 疑問が解決され、また、自分の考えが正当なものであったと分かり、は晴れやかな表情でスネイプに礼を言った。 「……いつも、良く勉強しているな。感心だ。」 ほんの気紛れか、それとも心からそう感じたのか、スネイプには珍しく、目を細め、口許に小さな微笑を浮かべて生徒を褒めた。 すると、その瞬間、の頬が紅く染まった。 「いえ…っ、あの……、あ、ありがとう、ございます」 耳まで真っ赤になって、普段の明晰な口調とは打って変わってたどたどしく返答するを見て、スネイプは一瞬、面喰らった。けれどすぐに、ああ、そういう事かと合点がいって、今度は彼の脳裏に微かな好奇心が働いた。 「待て。」 早々にこの場を立ち去ろうとするをスネイプは呼び止めた。その声に、は肩をびくりと竦ませて過剰な程反応し、おずおずと振り返ると零れ落ちそうな瞳でスネイプを見上げた。その姿に、スネイプの胸に生まれた好奇心は、更に確かなものとなる。 「話がある。研究室へ、来なさい。」 何が起こったのか、分からなかった。 扉の閉まる音が響くと同時に、視界が真っ暗になり、身動きがとれなくなった。何か強い力に拘束されている。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ それが、スネイプの腕であると気付く間もなく、口を塞がれた。舌に、自分以外の体温を感じ、自分が今、何をされているのかようやく理解する。けれど、理解はしても、何故このような状況に置かれているのか全く判らない。何故なのか、どうすれば良いのか、考えを巡らそうとしても、驚きと恐怖と羞恥から早鐘のように打つ鼓動によって、思考回路は閉ざされてしまう。 そしてその間にも、スネイプの舌は好き勝手にの腔内を侵してゆく。 「……んん…っ」 喉の奥から苦し気な声が絞り出される。しかしスネイプは一向に口付けを緩める様子はなく、それどころか、それは更に激しく強くなってゆく。が身をよじってスネイプの腕から逃れようとしても、そのような抵抗は全く意味をなさない。むしろ、スネイプの行為をエスカレートさせる燃料となるだけだった。 「……は…あっ…!」 息を止めていたため、酸欠状態になりそうだったは、ようやく口を解放された瞬間、苦しそうに荒く呼吸した。 「こちらを、見ぬか!」 片方の手での身体を強く抱き寄せたまま、もう片方の手で彼女の顎を強引に自分の方へ向かせた。その頬は紅潮し、大きな瞳には涙を浮かべ、口許は唾液で光っている。それを見てスネイプは、口の端を上げ、の見た事のない顔で、笑みを浮かべた。は、そんなスネイプを、何か恐ろしい魔物にでも遭遇したかのように怯えながら只々、黙って見上げる事しかできない。 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ このような場合の対処法は、勉強していないのかね?」 厭らしく、愉しそうに、スネイプが耳許で囁く。は必死で、首を横に振る。 「そうか、それは……勉強不足だな。」 スネイプはそう囁くと、再び、の顎を強く掴み、言った。 「特別に、教えてやろう。」 「…っ!」 が言葉を返す間もなく、再び、その口は強く塞がれた。 そして、腔内を蹂躙されながらも、相変わらずその腕から逃れようと無意味な抵抗を試みるの身体を、スネイプは軽々と抱き上げた。 「……っ、なに、」 「立ったままでは、流石に可哀相だからな。」 にやりと笑ってそう言うと、スネイプはを抱えたまま、部屋の奥へと消えて行った。に、逃げる余地などあろう筈がない。 その夜、を待ち受けているのは、只、恐怖と苦しみのみか、それとも ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (2006.5.17)
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